こんにちは。
とあるメーカーで海外営業に関わって20年超の神高(かんだか)です。
もしかして、「クレジット買掛金(かいかけきん)」について調べていますか?
実は、ときどき参照している日商簿記3級の無料テキストに「クレジット売掛金(うりかけきん)」の項目があり、「じゃあ、クレジット買掛金もあるのかな?」と不思議に思って調査していました。
結論から言えば、「クレジット買掛金」という勘定科目(かんじょうかもく)は無さそうですね。
というか、使っても意味が無い。
というのも、クレジットを使って仕入をしたところで、本来の営業活動(注:本業で商品やサービスを売ったり買ったりすること)である限りは「買掛金」で全部、処理していくからです。
(注:文具や書籍、消耗品など、通常の売り物以外をクレジットで買うときは「未払金(みばらいきん)」勘定を使います)
たとえば、お総菜屋さんがクレジットカードを使って本業で出す食材を仕入れたら、こんな感じです。
|の左が借方(かりかた)、右が貸方(かしかた)です。
- 2022年5月12日: 仕入 14,000円|買掛金 14,000円
- 2022年6月10日: 買掛金 14,000円|普通預金 14,000円
同じお総菜屋さんが、特売品や Today’s Specials を書くための5千円のホワイトボード(黒板)もクレジットカードで買っていたら、こんな仕訳になります。
もちろん、ホワイトボードを何回も買って、それを生業(なりわい)として転売しているなら「仕入」勘定を使うべきですが、お総菜屋さんですから、普通はそんなことはしません。
ということで、備品(消耗品)には「買掛金」ではなく「未払金」を使うのが、大きな違いです。
- 2022年5月12日: 消耗品費 5,000円|未払金 5,000円
- 2022年6月10日: 未払金 5,000円|普通預金 5,000円
一方、これが「クレジット売掛金」となると、通常の商売(ビジネス)の話です。
売上を把握すると同時に、信販会社に払う手数料を考える必要が出てきます。
そこが、普段の生活や買い物では気づかない、面白いポイントでもあるんですよね。
クレジット買掛金(かいかけきん)とは?|簿記3級の仕訳に出てくるクレジット売掛金の逆?
なぜ「クレジット買掛金」は使われないのに、「クレジット売掛金」があるのか。
その理由は、「店側がクレジットカードを運営する信販会社( JCB や VISA など)に手数料を払っている」という点にあります。
私たちは、日々の生活の中でクレジットカードを何気なく使っています。
レストランや洋服店、デパートだけでなく、今では小さな総菜屋さん、コンビニや駅の売店(キオスク)でも利用できます。
でも、昔(1974年生まれのぼくが若かった頃)はそこまでクレカは一般的じゃなかった(笑)。
現金払いでお客さんが納得してくれるなら、店の代金はキャッシュ(現金)で受け取りたい。
というのも、クレジットカードを導入すると、お金を受けとる店側が「信販会社」に手数料を払わなければならないからです。
信販会社との契約で、販売店(ホテルや飲食店なども含む)は手数料を客に請求してはいけないことになっているそうでしてね……。
ちなみに、料率(手数料のパーセンテージ)は、店や業種によって違います。
簿記3級の試験問題では、2% とか 3% とか、そういった数字が使われていて、どうやら、実社会でも信用のある店舗、業界であれば、その程度の手数料率らしい。
では、「クレジット売掛金」の実際の仕訳がどんな感じが、見てみましょう。
クレジット売掛金の仕訳と会計処理|信販会社の手数料の扱い方
クレジット売掛金が簿記3級の問題として出されるときは、以下のような出題形式です。
商品 100,000 円をクレジットカード支払いで販売した。信販会社への手数料は販売代金の 2% であり、販売時に認識する。
この「販売時に認識する」というところが「クレジット売掛金」独特の処理に関わってきます。
とはいえ、まったく難しい話ではありません。
100,000 円の 2%、つまり 100,000 円 x 2% = 2,000 円の「支払手数料」を仕訳のときに入れ込めば良いのです。
販売時の仕訳は以下となります。
クレジット売掛金 98,000 円|売上 100,000 円
支払手数料 2,000 円
翌月、信販会社(クレジットカードの発行会社)から 98,000 円が普通口座に振り込まれたタイミングでの仕訳は以下となります。
普通預金 98,000 円|クレジット売掛金 98,000 円
この「支払手数料」は売る側、つまり「店側」からしか見えないんですよね。
お店でクレジットカードを使って払っている人は、この「手数料」の存在に気付かないような仕組みになっています。
最初に紹介した、ビジネスで仕入れを行う時でさえ、以下の通り、買う側からは手数料が見えないですからね。
- 2022年5月12日: 仕入 14,000円|買掛金 14,000円
- 2022年6月10日: 買掛金 14,000円|普通預金 14,000円
代理店にせよ、代金回収にせよ、誰かが仲介する、ということは「誰か」の手数料を負担する仕組みがある、ということです。
そして、クレジットカードの場合は、販売店が負担するスキームなのです。
クレジット買掛金(かいかけきん)とは?|サブスク(サブスクリプション)にも|まとめ
ここまでの内容をまとめておきます。
日商簿記3級、進化してますね。
ぼくが記憶するかぎり、初めて日商簿記3級を受けた約20年前は「クレジット売掛金」という勘定科目の出題はありませんでした。
しかし、クレジットを使った支払いが一般的になるにつれて、簿記の資格試験にも導入されたようです。
さらに時代は進み、街のスポーツクラブなどだけでなく、企業が行うオンライン商品やサービスにも月々定額支払い(いわゆるサブスク、サブスクリプション)が広まってきました。
それだけ、大企業でもクレジットカードによる支払いが一般的になっている時代です。
そこで、信販会社への手数料が必要な「クレジット売掛金」とその他の「売掛金」を区別するようになったのでしょうね。
日商簿記3級は、時代に合わせて必要な知識が得られるように変化してまして……。
従来の個人商店の帳簿のレベルを超えて、いまは企業会計中心の試験内容になりました。
2021年から日商簿記3級のオンライン受験も始まりましたから、難易度は上がっていますが、取り組みやすさもアップしています。
会社員、その他組織で働いている人、あるいは個人で青色申告をしている人にとって、簿記の資格は要注目です。
日商簿記3級の知識があれば、本業だけでなく、副業や定年退職後に自営業をする際の確定申告などで広く活用できますからね。
何か新しいことを学びたいけど、何から手を付けよう……、という悩みを持つ会社員には、働きながらの簿記3級へのチャレンジがおすすめです。