こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
職場の後輩から「 DDU の意味や使い方を教えて欲しい」と頼まれました。
ほー、DDU ね。
現在、INCOTERMS は 2020年版のインコタームズ2020です。
これまでの10年サイクルに従って、2020年1月にINCOTERMS 2020 が発効となりました。
しかし、INCONTERMS 2010 さえも十分普及しているとは言えません。
DDU が INCOTERMS 2010 で廃止された(当然、2020年版にもない)ことは、意外と知られていないからです。
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かく言うぼくも、2010年版発効後、しばらくしてから気が付きました。
もちろん、INCOTERMS 2000 とうたえば、今でも契約書や船積書類で使って大丈夫です。
質問をくれた同僚には「インボイスには、念のため INCOTERMS 2020 DDU と書いておこう」と提案しました。
そんな DDU と DDP のペアについて、一緒に整理しておきましょう。
DAT/DAP/DDPの3つに統合されたインコタームズ2010年版の「D」グループ
INCOTERMS 2000年版にあったDDU( Delivered Duty Unpaid )がDAPに統合されたのは、日々、実務に関わる者でも見落としやすい変更点です。
いまだに、INCOTERMS 2000 の注記なく、インボイス( I/V )にDDU の記載が見られるくらいですから。
DDU は、20年経っても、いまだにバリバリの現役プレーヤーなんですよ。
- DDU = Delivered Duty Unpaid(関税抜き持込渡し)
- DDP = Delivered Duty Paid(関税込持込渡し)
DDU と DDP、つまり U と P から条件をイメージし易いため、広く普及したのでしょう。
たとえば、UPS (注: DHL や FEDEX のような運送業者でヤマト運輸のパートナーでもあります)のサイトから、実例をみてみましょう。
クーリエサービスは、基本 DAP( DDU) か DDP になっています
書類やパンフレット、雑貨や工具などを海外の拠点や客先に送る仕事に従事する方は、FEDEX や DHL、UPS といったクーリエサービス( Courier Service )を使っていることでしょう。
日本の宅配便と同じように、送り状(Cargo Receiptとも呼ばれます)に、受取側の住所、担当者名、電話番号、輸出金額等を書けば、目的地まで届けることができます。
国内のクロネコヤマトや佐川急便と違うのは、取引金額を書くことくらい。
使う時にあまり意識しないものの、その契約は INCOTERMS 2010 の DAP(関税等負担なし)、またはDDP(関税等負担あり)のいずれかとなっているはずです。
国際的なネット通販など、クーリエサービスは書類や小さい貨物を早く届けることで各社競争しているため、一旦関税を立て替えて、輸出者に請求する、という対応までしています。
これが DDP に該当するのです。
なお、例外はありますが、クーリエサービスは基本、航空貨物( air-freight )です。
DDP を海上輸送の貨物で使うのはレアなケース【要注意】
一般的な海上輸送貨物では、広く使われているとは言えません。
コンテナによる一貫輸送ができるなら、あるいは、とも思いますけれど、それでもクーリエとは違う。
クーリエサービスは日々、大量の貨物を航空貨物で取り扱います。
これは、比較的、軽量な貨物や書類だからさばけているのです。
輸出者側から、輸入国の事情を詳しく把握するのは、複合一貫輸送(インターモーダル輸送、とも呼ばれます)が発達してきた現代においても容易ではありません。
ある程度の重さがあれば、容易ではありません。
フォークリフトやクレーン、専用の荷役設備が必要な製品、商品を輸出する場合、以下のようなことを考慮します。
- CIFまでの費用(海上輸送の運賃と保険)
- 輸入港での荷揚げチャージ
- 指定場所までの輸入国内の国内輸送
- DDP ならば関税や VAT(付加価値税)
これらすべてを把握しておかねば、輸出者はコストの算定ができません。
しかも、海外のハンドリング(取り扱い)ですからね。
現地の業者同士よりも割高に決まっています。
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後から何を言い出すか分からない「海外の」一見(いちげん)さんに、特価で安いプライスを提示する人はいませんよね?
だから、逆に輸入者は「高い買い物」をさせられている可能性もあるんです。
コミコミだから安い、なんてわけがない。
売る方だって商売です。
DAP や DDP の適用には乙仲業者、損害保険も交えての慎重な検討をしましょう。
ちなみに、「 DDU / DDP 」は「 door-to-door Paid / Unpaid 」の略と勘違いしやすいのですが、正しくは「 Delivered Duty ○○、最後まで運ぶけど関税その他は×× 」という意味です。
インコタームズの超有名人: FOB、CIFが FCA、CIP の普及を妨げています
DDU と DDP と同じようなことが長年続いているのが、FOB と CIF、そしてその周辺です。
FCA や CIP の知名度は FOB や CIFに遠く及ばないため、コンテナ船による輸送でも、いまだにFOBやCIF が使われています。
乙仲業者に勤める知人に聞いてみたところ、コンテナ船の取引の半分以上、あるいはもっと高い割合で FOB 、 CIF表記( ICC 推奨の FCA 、 CIP ではなく)ではないか、とのこと。
世代交代にはもう少し時間がかかりそうです。
INCOTERMSは2000年版から2010年版になる時に大幅な改定が行われ、特に D グループは記憶するのが難しくなりました。
ぼくもいまだに必要に応じてICCのサイトを確認し、JETROの解説なども参照しているくらいです。
20年経っても、いまだに混同することがあるのです。
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微妙に違うのが、憶えにくいですよね
インコタームズは使用頻度に応じて憶えていきましょう|使うものからで大丈夫
ここまでの内容をまとめておきます。
インコタームズの変更、10年毎とはいえ複雑ですよね。
DAT が消えて、DPU なんて新参者も登場しますし。
でも、貿易実務の上では自分の仕事で使う以外の INCOTERMS はあわてて覚える必要はありません。
使用頻度に応じて、整理していきましょう。
最後に。
もし、あなたが新たにコンテナ輸送に関わることになったのなら、是非、この記事だけは読んでおいて欲しい。
起こらないほうが望ましい。
でも知っておけば回避できたのに、ということがないとも限りませんので。