こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
職場の若い同僚から「赤黒処理(あかくろしょり)って何ですか?」と質問されました。
財務部門との会話の中で出てきたとのこと。
赤黒処理とは、売上(うりあげ)や仕入(しいれ)の会計データを変更する時に使う簿記に関する用語の一つです。
あまり、教科書やテキストには出ないかも知れませんが、オフィスの日常会話で出てきます。
たとえば、「120万円で売り上げた商品の金額を110万円に変更するため、赤黒処理をする」といった使い方になります。
ただ、言葉として記憶できても、赤、黒だけで意味までは分かりませんよね。
- 赤伝(赤伝票)
- 黒伝(黒伝票)
- 赤黒処理
なぜ、赤や黒という表現をするのか。
せっかくの機会なので、場面によっては「赤伝票(赤伝)」「黒伝票(黒伝)」とも呼ばれる赤黒処理について説明しましょう。
赤黒処理(あかくろしょり)とは?|製造業や商社での赤伝、黒伝の会計処理の事例
赤黒処理の仕組みを理解したいのであれば、日商簿記3級の一部、特に売上や仕入の仕訳(しわけ)を知っておくと良いでしょう。
仕訳とは、簿記3級で習うのは複式簿記と呼ばれる基礎的な手法です。
特に、売上や仕入の基礎的な仕訳は簿記3級の学習範囲の中でも最も重要であり、営業や資材に関わる会社員であれば日々の仕事でも役立ちます。
ここでは、先ほど挙げた例(120万円で売り上げて110万円に訂正するケース)を順に見ていきます。
120万円の商品を掛(かけ)で販売した時(代金は掛とする)
120万円の商品を掛(かけ)で販売した時の仕訳(しわけ)は以下のようになります。
借方(かりかた)を左側、貸方(かしかた)を右側に一行で表しています。
(借方)売掛金 120万円 (貸方)売上 120万円
売掛金は一般的な会社同士の取引で行われている行為で、個人でいえば「ツケ」のこと。
月末で締めて(集計して9翌月に請求するとか、そういった仕組みで回っている「代金を後から回収できる権利」を掛(かけ)と呼びます。
買う方の立場なら買掛金(かいかけきん)ですね
つまり、この時点では「売上があがり、後から120万円を受けとれる状態」が帳簿に残っていることになります。
120万円の売り上げを110万円に修正する必要が生じた時
商社やメーカーで働いていると、120万円で売り上げた会計処理を110万円に変更する必要が生じるケースがあります。
たとえば、「お客さんと一旦、120万円で合意していたものの、クレームが付いて10万円の値引きをする」なんてことは、製造業や商社に勤めておれば時に起こりますよね。
あるいは、自社で負担するはずだった何らかの費用を客先に持ってもらったので売上金額で調整するケースなども該当します。
そのような時に、赤黒処理を使って売上金額を修正します。
(借方)売上 120万円 (貸方)売掛金 120万円 【赤伝処理:キャンセル】
(借方)売掛金 110万円 (貸方) 売上 110万円 【黒伝処理:再入力】
この2行を合わせて「赤黒処理」と呼びます。
1行目の「赤伝処理」は、ちょうど最初に120万円で売り上げたのと逆の仕訳になっています。
それも当然で「赤色伝票」というのは、簿記でいうところの「逆仕訳(ぎゃくしわけ)」「反対仕訳(はんたいしわけ)」と呼ばれるキャンセル手続きになっているからです。
赤だから「キャンセル」、黒だから「正しく入れなおす」ことを指す。
この二つの処理が済めば、借方には110万円の売掛金が残り、貸方にも110万円の売り上げが計上された状態ができあがります。
赤黒処理の赤伝票と黒伝票とは何か
では、赤黒処理の赤伝票、黒伝票とは何か、ということですが、これは「簿記・会計の業界用語」と理解しておいてください。
訂正=赤(あか)というシンプルなイメージです。
黒伝(黒伝票)というのは、赤の逆なので意味としては「通常処理」となります。
ただ、黒伝処理、というとき、その原因となる「赤伝処理」があるから、そう呼ぶわけですけどね。
通常の仕訳を、わざわざ黒伝処理とは呼びません。
英語で「赤黒処理」を何と呼ぶのか|貿易実務におけるデビット・クレジット(デビクレ)
英語で「赤黒処理」を何と呼ぶのか、どう伝えるのか調べてみたのですが、よくわかりませんでした。
というのも、red や black を使っても、習慣や文化が違えば通じるわけがないからです。
基本的には、各会社、各個別ケースで対応するしかありません。
とはいえ、海外の取引先と共有できる一般的な原理もあります。
たとえば、簿記、会計における借方、貸方は英語でそれぞれ debit(デビット)、credit(クレジット)と呼びます。
(借方)Debit /(貸方)Credit
一方、貿易実務では、請求書(インボイス)のことを debit note(デビットノート) と呼ぶこともあります。
その二つの事実を知っているのであれば、仮に営業の立場なら「請求金額を減らす訂正書類は credit note (クレジットノート)だな」といった具合に想起(イメージ)できるわけです。
憶えにくい専門用語であっても、ちょっとした覚え方の工夫で記憶しやすくなります。
赤黒処理の教科書的な説明、解説
ここまでの内容を、別の言い方(教科書的な表現)でまとめてみると……。
会計処理における「赤黒処理」とは、誤った会計入力を訂正するための方法の一つです。
この処理は、誤って記録された取引を単に削除するのではなく、誤りを正確に訂正し、会計記録の透明性と追跡可能性を保持することを目的としています。
具体的には、「赤字」で誤りを示し、「黒字」で正しい記録を示すことにより、誤りが訂正されたことを明確にします。
この方法は、元の誤った取引を無効にし、その後に正しい取引を記録することによって行われます。
赤黒処理のステップは以下の通りです。
- 誤りの識別:まず、誤って記録された取引を特定します。
- 赤字での記録:誤った取引を「赤字」で会計帳簿に記入します。これは、誤った取引を無効にするためのもので、実際には取引の金額を逆の勘定科目に記入することを意味します。
- 黒字での訂正記録:次に、正しい取引内容を「黒字」で記録します。これにより、最初の誤りが正確に訂正されます。
この赤黒処理を用いることで、会計記録の正確性を保ちつつ、誤りがいつ、どのようにして訂正されたかを明確に示すことができます。
これは、監査の際に会計処理の透明性を確保する上で非常に重要です。
赤黒処理(あかくろしょり)とは?|製造業や商社での赤伝、黒伝の事例|まとめ
ここまでの内容をまとめます。
赤黒処理が簿記の基礎的な仕訳のキャンセル処理(逆仕訳)になっているとわかれば、さまざまな例外的な処理にも対応できます。
金額を増やす場合も想像できますし、支払い方法が変更になった場合、なども、原理としては同じです。
キャンセルして、正しい処理を入れる。
それだけ。
すべての取引を赤黒処理で残しておけば、簡単に訂正前の履歴を追うことができます。
さて。
この記事を書いていて、「簿記の基礎って大事だな」とあらためて感じました。
日々の経済活動をシンプルにすると、簿記3級程度のカラクリの中に納まってしまいますからね。
営業職の職場の後輩、特に若い世代には、「経理や財務部門の仕事はしないにしても、日商簿記3級は取っておいた方が楽だよ」と話をしています。
ここで説明したような基本的な内容でも、日々の仕事の原理に対して理解が深まりますからね。
何か新しいことを勉強したいけど何から手をつけようか、という状態なら、簿記3級から取り組んでみると良いと思います。
日商簿記3級のテキストを無料でもらう方法を別記事で紹介しています。
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