こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
新入社員、あるいは転職でも新しい会社に入ったとき、専門用語に戸惑いませんでしたか?
ぼくも転職を経験して、専門用語に戸惑いました。慣れるまで、時間がかかるんですよね。
自動翻訳が発達してきた今も、そこまではうまく訳してくれないな、という事例を経験しましたので、一つ、ご紹介しましょう。
業界用語の翻訳の例 産業機械の分野で「検査」と言えば……
メーカーで貿易実務、海外営業に関わる立場から、今回、仕事の上で問題となった「業界用語」を一つ挙げげます。
「検査」。
辞書を引くと inspection, examination, test, audit, check などが候補となります。
最近、ますます賢くなっているGoogle翻訳も、これくらいの翻訳を返すようになっています。
- インプット:検査結果を連絡ください。
- アウトプット:Please report the test result.(2020年2月10日現在)
悪くないですね。十分、通じると思います。
しかし、この場合、産業機械やプラントなどを扱う企業であれば「 inspection 」あるいは、業種によっては「 FAT 」を用いるのが最も顧客と共通認識を持ちやすいでしょう。
FAT は 「 Factory Acceptance Testing 」の略語ですが、もともとの意味はあまり気にされていません。
契約書や仕様書、プレゼンテーションなどでも略語の「 FAT 」が用いられることもあります。
たとえば、こちらのSIEMENS の PR 動画。
FAT をナレーションでそのまま使っています。
日本でも検索すればいくつか見つけられます。
たとえば、横川電機株式会社様で使用例があります。
こういった業界の専門用語をジャーゴン( jargon )と呼びます。
jargon を人工知能はうまく使いこなせるのだろうか?
この疑問への答えは、「新入社員と同じじゃないかな」です。
機械翻訳(AI 翻訳)も人間が翻訳するときも仕組みは同じ
近年、大規模なサーバーを利用するAI翻訳サービスも広がってきました。
「 inspection 」「 FAT 」なら的確に「検査」と通じる業界に属する企業が、プレゼンやカタログを作ることになったとしましょう。
必要に応じて、ネイティブチェックも受けながら、少しずつ原稿を完成させていきます。
英語としては、正しい成果物ができあがるかも知れません。
しかし、その中で「検査」を「 audit 」や 「 check 」と表現すると、それぞれ製造業では別の意味に使う単語なので、情報を受け取る側は混乱します。
そして、脳内で「 inspection 」や「 FAT 」と変換して理解することになります。
せっかくの PR なのに、客先への「訴求効果」という意味では、大損害です。
こういった細かいレベルまで適切に翻訳できるようになるには、やはり置かれた環境向けの「チューニング」、つまり「学び」が必要です。
そして、それは、人間も同じです。
TOEIC 900点を超えるほどの英語運用能力、知識を持つ新入社員であっても、入社してしばらくは、そんな細かいことまでは配慮できません。
しかし、AI も人間も、業種、業界ごとのカタログやウェブサイト(同業者、競合他社含めて)、図面や取扱説明書などを優先的に読み込めば、近い将来、改善できるでしょう。
AI には機械学習が、人間には「学びと経験」が必要なのです。
【貿易】産業機械のメーカーで検査といえば?FATの意味と使い方|まとめ
今回の内容を簡単にまとめておきます。
FOB や CIF、ETD や ETA など海外営業や貿易実務の世界では、ありとあらゆる略語が使われています。
そして、それらをメールやメモの形で使うと、うまくコミュニケーションをとることができます。
それほど、高度な英語表現を使わずとも、です。
というか、あまり凝った英語表現は使うべきではないでしょうね。
機械翻訳よりも、自分の言葉でシンプルに伝えるパターンを用意できれば、仕事はスムーズに進みます。
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