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【貿易】ETA と ETD、貿易実務で便利な略語・用語の意味と使い方とは?

貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に従事して20数年、神高(かんだか)です。

職場の新入社員から「 ETD、ETA とは何ですか?」との質問をもらいました。

貿易実務に関わると、ETA、ETD、BT-BTFI+ST などの貿易用語(略語)が当たり前のように メール本文や見積書などに書かれます。

たとえば、BT-BT は Berth Term の略なんですけれど、正直、わかったつもりで使っているジャーゴン(業界用語)も多いんですよ。

だから、このサイト(ビジタブル)では、実務に則した用語解説をご紹介しています。

今回は、貿易実務で便利な専門用語「 ETD、ETA 」の「意味」だけでなく、「使い方」までくわしく解説します。

特に輸出を担当するなら、ETD、ETA は CUT(カット) とともに真っ先に知っておきたい用語ですからね。

以下のような方たちのお役に立てる内容を心がけました。

こんな人に読んで欲しい
  • 貿易事務、貿易実務にこれから関わる方
  • 営業部門、資材部門に配属される新入社員
  • ETD や ETAについて、職場の後輩に説明する方

さっそく、ETA と ETD の意味と「略す前の英語表現」を紹介します。

  • ETA = 意味:到着予定時期 = Estimated Time of Arrival( Arrival = アライバル、到着)
  • ETD = 意味:出発予定時期 = Estimated Time of Departure(Departure = デパーチュア、出発)
神高
神高

意味を覚えるとき、この「A と D のペア、対称性」に注目してください。

実際の貿易実務の中で役立つよう、以下の内容も紹介しますから、興味があるところだけでも読んで帰ってください。

ここから先は、以下の内容でお送りします。

  • ETD と ETA、貿易実務での具体的な使い方とは?【国内、海外の事例】
  • 相手に伝わりやすい「書き方」とは?(リンク:【英文メールのサンプル】
  • コンテナ輸送で注意すべき「トランシップ( tranship )」とは?

ETD や ETA のような略語をうまく使うと、コミュニケーションがとても楽になります。

仕事上の電子メールのやりとりさえ、楽しくなりますよ。

【貿易】ETA と ETD、貿易実務で便利な略語・用語の意味と使い方とは?

ガントリークレーン

ETA、ETD には、Estimated (エスティメイテッド)=「予測(予定)される」が含まれています。

それぞれ、以下の意味を表しています。

  • ETA = Estimated Time of Arrival( Arrival = 到着)【到着予定時期】
  • ETD = Estimated Time of Departure(Departure = 出発)【出発予定時期】

Arrival は Arrive(到着する) の名詞形、Departure は Depart(はずれる、出発する) の名詞形となっています。

英文でメールや書類に書くときは、次のような表現にします。

ETA Shanghai Port, China : 23/SEP/2018 (SUN)

※ 意味:上海港(中国) 到着予定 2018年9月23日(日)

神高
神高

この種の連絡では、日付の打ち間違い、年や月の勘違いを防ぐため、できるだけ曜日を入れるようにするといいですよ。

ETA、ETD のすぐ後ろに「場所(港や指定倉庫など)」、その次に「日付」を書きます。

ETD、ETA が使われている具体例 – 船舶のスケジュール管理

ETD、ETA の表現はもともと、船を運航するために使う用語なので、本船(ほんせん、貨物を積む船)の情報を共有するときに便利です。

たとえば、こちらの日本に出入りする船の運行情報をまとめている会社では、港を基準にして「 ETD 上海 」「 ETA 神戸 」などと情報を一覧表示してくれています。

↓↓ < 使用事例 > ↓↓

ちなみに、飛行機でも同じです。

海外旅行、海外出張するとき、国際空港の掲示板にも同じく、旅客機の「 ETA、 ETD 」が表示されているので、探してみましょう。

神高
神高

次に、E-MAIL などの本文中でどう書くか、具体的な事例で見ていきましょう。

ETD、ETA をメールや FAX で使うときの「書き方」

たとえば、CIF (=「出す側(売る側)」が積む船を選び、運賃や保険料も負担する条件)で産業用の電動機(モーター)3台を「神戸」から「シンガポール」まで輸出する契約を結んだとします。

自社、あるいは乙仲業者(=通関業者、フォワーダー)経由で日本側から船便を予約した後、「輸入者(買主)」に対して、以下のサンプルのような電子メールを打ちます。

本船(貨物を積む船)の情報を正しく「輸入者側」に伝えるのが目的です。

We have booked M/V “NYK ADONIS” (V.039W) as follows:

  • ETD KOBE, JAPAN: APR. 06, 2018
  • ETA SINGAPORE: APR. 16, 2018

for a shipment of three electric motors, PO No. 123-4567.

  • M/V “ナントカ” は船名。 M/V = Motor Vessel (発動機船)に由来します。
  • V.039 は外航船(海外と行き来する船)のVoyage No. (ボヤージュナンバー)と呼ばれる数字で、何回目の航海かを表しています。同じ船が何度も SINGAPORE に寄るとしても Voyage No. を示すことで具体的な時期を特定できます。

買主側は、 ETD や ETA の情報を元に、売主に対して以下のような情報を返します。

「了解。このまま、船積み準備を進めてください」
「日程に余裕がないので、可能なら1週間程度、早い船にしてください」
「4月中旬以降 ETD の船を選んでリスケ(reschedule、予定の変更)してください」

どの程度の日数がかかるのか、どこから積むのか、などの情報がこのシンプルなメールで明確になっているため、関係者は簡単に情報共有できます。

もし、あなたがメール本文でベタ(改行なし、箇条書きなし)にスケジュールを書いているなら、次回の連絡でこの表現を試してみてはどうでしょうか。

「本文」と「箇条書き」の部分が明確になることで、最も重要な「日付や時間」がはっきりします。

貨物がいくつかあるなら、エクセルで作成した一覧表に「 ETD 」「 ETA 」と見出しを付けて、全体として管理すれば便利です。

神高
神高

ところで、この ETD と ETA、「日本国内の輸送」でも便利に使えるのをご存じですか?

ETD、ETA は輸出や輸入をともなう国内輸送でも便利に使えます

輸出を伴う日本国内の輸送では、工場や倉庫からの発送がいつで、貨物の到着がいつ、という情報を共有する必要があります。

そのとき、国内同士でも、この ETD や ETA を使うことがしばしばあります。

たとえば、メールや FAX で以下のように箇条書きで連絡すれば、輸出に関わる部署や取引先同士なので、理解が簡単になります。

一つの例をご紹介します。

  • ETD 弊社明石工場 2018年9月12日(金)3:00 PM
  • ETA 門司指定倉庫 2018年9月15日(月)8:00 AM
  • 車両番号 姫路44 さ34-XX、運転手○○、携帯電話 090-XXXX-XXXX

このメモにより、「ああ、週末をはさんで宵積み(注:よいづみ、と読む。宵(夜)越しの貨物、オーバーナイト)が月曜日の朝に届く」といった情報を簡単に共有できます。

受け取る倉庫側も貿易のプロなので、ETD や ETA を使うとイメージを共有しやすいのです。

この後、貨物を受け取る側から、

「了解。いつの船に積むんだい?」
「土曜日も貨物の受け取りはできるけどこのままでいいかい?」
「倉庫が手狭だから1週間延ばせないかな?」

といった返事がきて、海外同様、船積み準備のやりとりが続くことになります。

さて、最後に ETA、ETD とも関連する「積み替え」の問題をみておきましょう。

長距離の「コンテナ輸送」にありがちな「トランシップ(積み替え)」のことです。

貿易でコンテナ船の積替(トランシップ)がある時は、船積後も要注意

コンテナ船社はいろいろな戦略に基づいて、より早く、より安く、世界中の貨物を輸送するべく、努力しています。

その中に、transhipment(積み替え、トランシップメント、単にトランシップとも言う)という用語、考え方があります。

日本から欧州地区にコンテナを輸送するとしましょう。

そのとき、途中の港で一旦降ろして積み替えることをtranshipment( sを重ねて、transshipment と書くこともあります)と呼びます。

たとえば、コンテナ数が10,000個を超えるような大型船は、港の設備や貨物の取扱量の大小に応じて、寄港する港湾都市を選びます。

そして、欧州最大級の港、ロッテルダム(オランダ)には寄るけれども、アムステルダムには寄らない、ということが起こります。

この場合、ロッテルダムからアムステルダムまでの輸送を transhipment (トランシップメント)と呼びます。

この用語は、船だけでなく、陸送、空輸にも使えます。

神高
神高

ちなみに、この種の比較的短い距離を運ぶコンテナ船をフィーダー船と呼びます。

transhipment を伴う場合、各港に「いつ着いて」、「いつ再出荷される」のか、という情報はより大切になります。

というのも、輸入者(買主)は輸入通関の準備がその最後の輸送日程で変わるからです。

コンテナ船といえども、予定したスケジュール通りに到着できないこともあります。

だから、乗り継ぎする予定だった船に間に合わない、ということも起こりえます。

そんなとき、輸出する側がメールや FAX などに、このように箇条書きしておくと対応しやすくなります。

  • 1st Vessel: M/V “NYK ADONIS” ( ETD KOBE APR. 06, 2018 – ETA ROTTERDAM MAY 08, 2018, V.039W )
  • 2nd Vessel: M/V “ABCDE No. 5″( ETD ROTTERDAM MAY 12, 2018 – ETA AMSTERDAM MAY 14, 2018 )

こうしておけば、「電車の乗り継ぎ」のように、貨物の流れがわかりやすいですよね。

積み替え(トランシップ)がある時は特に気を付けて情報を最初から共有し、到着する時期が近づいたら本船のスケジュール(動静<どうせい>とも呼ばれます)が最終的にどうなるか、輸出者(売主)は輸入者(買主)と情報を共有していくべきです。

神高
神高

受け取った相手が上司や同僚に「情報を渡しやすく」「書き換えの要らない」シンプルな表現にしておくと、お互いに仕事を進めやすくなります。

そして、共通の目標、「スムーズな輸入」に向けて準備を進めていきます。

本当に怖い Demmurage の記事でも触れたように、こうしたやりとりが、売主、買主、双方の余計なリスク( Arrival Notice、アライバルノーティスの未着 )などを避けることにつながります。

貿易に関わるもの同士であれば、ETA、ETD という略語はストレートに意味が伝わりやすい。

これは、間違いありません。

うまく活用していけば、スケジュールの変化も含めて、簡単に情報共有できます。

ETB( Estimated Time of Berth ) を使う船舶代理店も、たまにいます

ETA (到着予定時期)の代わりに ETB を使う船舶代理店もたまにいます。

このとき、ETB は Estimated Time of Berth を表していて、バース(岸壁、Berth )に到着する時間を表しています。

Berth は荷物を受け渡しできる場所を表しているので、「より正確な時刻」ではあるのですが、ETA ほど有名じゃないので、ちょっと戸惑うんじゃないでしょうか。

Berth という単語自体は Berth Term(バースターム) などでおなじみではありますが・・・。

いずれにしても、ETB は船が港に到着する正確な日時を表している、と理解しておけば大丈夫です。

まとめ:略語を活かして、より良いコミュニケーションを

港とガントリークレーン

今回の内容と見出しをおさらいしておきます。

ETA、ETD とも、略す前の英語をイメージしておくと覚えやすくなります。

  • ETA = Estimated Time of Arrival( Arrival = 到着)【到着予定時期】
  • ETD = Estimated Time of Departure(Departure = 出発)【出発予定時期】

最後に、貿易実務のコミュニケーションについて、触れておきましょう。

当たり前過ぎて忘れてしまいがちですが、輸入者(買主)側の実務担当も、英語が母語とは限りません。

欧州、あるいはアジアとの貿易の場合、相手も企業に属する担当者であることが多いでしょう。

そして、われわれと同じように、英語や貿易の知識は学校や独習で身に着けた人々です。

誰もが、初めから専門家だったわけではありません。

したがい、メール本文に文章を長々と書いても、逆に誤解を生む可能性があります。

その意味では、INCOTERMS は当然ながら、ETA、ETDなどの略語も、正確な共通認識を持つ上で大きな助けになります。

英語でのやりとりをベースとしつつ、便利な言葉、表現、ツールを使っていきましょう。

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