こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
いまだに貿易実務における客先、取引先とのやりとり(いわゆるコレポン)は電子メール、FAXが多いのではないでしょうか?
となると、英語で何をどう書くか、伝えるか、というのは、非常に重要です。
というのも、日常的なやりとりは、顔もあわせたことがない「海外の貿易実務担当」とやり取りをして、時に数百万円から数億円という取引を行うからです。
しかし、英文作成はいつも悩ましい。
Google翻訳に日本語を入れてみても、しっくりきません。
ちきしょう、英文メールを書くときの「コツ」を知りたい。
そこで、ぼくの経験則から英文メールや FAX を書く上で注意したいポイントをご紹介します。
【虎の巻】貿易実務の電子メール、英文E-mailの構成とサンプルを公開|大切な3つのポイント
現役で海外営業や貿易実務に関わっている立場から、「虎の巻」とも呼べる3つのポイントに絞ってお伝えします。
貿易実務に限らず、エンジニアが客先の設計部門とやりとりするケースなどでも参考にしてください。
.jpeg)
シンプルだけど大切な3つのポイント。
これらだけでも、相手のレスポンスは大きく変わりますよ。
宛先の名前(Dear Mr. や Ms. ~)をしっかり書きましょう|ポイント①
英文レターの書き方の参考書などでは、「 Dear Sir, 」や 「 Dir Sirs or Madams, 」といった表現で始まる例文があります。
たしかに、ある程度の格式をもったサイン付きのレターでは、会社から公式に出された雰囲気を出せるので、こういった形式も有用な場合があります。
しかし、貿易実務はコミュニケーションが命です。
形式的なことは極力排除して正確に伝えたい。
ならば、しっかり相手の名前を書きましょう。
スパムメールがあふれる今、あなたのメール自体を開いてもらえない心配があるからです。
もし、相手の名前が中華系の方なら苗字だけで「Ms. Wang」などと書かず、「 Ms. H. S. Wang 」としっかり苗字以外の情報も書くことをおすすめします。
中華系に限らず、東南アジアでは Ms. Helen Kim などと、やりとりを楽にするための仕事上の通称を持つ人もいますから、あれば併せてうまく使いましょう。

しかし、カンダカさん、Mr. や Ms. の後は苗字なんじゃないの ?
たしかに。
会話では、一般的にMr. や Ms. の後は苗字が来ます。
しかし、ビジネスの世界では相手にきちんと伝わるかどうかが大切です。
実際、メーカーに勤めていると商社や現地サプライヤーなど、いろいろメールを受け取りますが、形式にこだわるメールはそれほど多くありません。
.jpeg)
もちろん、業界の作法というのがありますから一概に言えませんよ。
あくまで一般的な産業機械を扱うメーカーに勤める立場として、です。
取引先の中に同じ苗字の方がいるケース、たとえば Agency(エージェンシー、代理店) が同族(同じ苗字の人)で経営される場合など、わかりやすさのためには遠慮は要りません。
Mr. の後にはフルネームを続け、そのメッセージが誰宛てなのかを明確にしましょう。
そうすれば、メールの開封のスピードが上がりますし、誤って既読スルーされる可能性もぐっと下がります。
最近のスパムメールはそのあたりがわかってきていて、開封率を上げるため、宛名を書いてくるようになっています。
我々も、仕事上のメールがスパムメールと勘違いされるようではいけません。
慣れてくれば(特に米国の方)は、Hi, Kandaka-san, などといった感じでメールが入ってくるようになります。
そのあとは、徐々に格式は崩していけば良いでしょう。
(注:-san は日本企業と取引する企業間では、広く使われている便利な敬称( ? )です)
メールアドレス、電話番号など、自分の連絡先も最後にしっかり書く|ポイント②
メールの最後には、自分の連絡先(事務所の電話やFAX番号など)をしっかり書いておきましょう。
これは、相手に対する思いやりです。
貿易実務の担当者として、貨物を客先にスムーズに届けることを目的に仕事に取り組んでいる以上、少しでも相手(買主)の手間が省けるよう、工夫をするのです。
急に連絡を取る必要が生じてメールを検索した時、相手の連絡先の情報がないと少しガッカリですよね?
再度、メールを送り、返信がなければ名刺があれば名刺の電話番号に、なければ勤め先の代表番号に電話するしかありません。
相手の会社の代表電話しかわからなければ、どうしても取り次ぎまで時間がかかります。
もし、メールに連絡先が書かれていれば、そのやりとりの時間を、お互いに節約できます。
マイクロソフトの OUTLOOK など、メールを扱うソフト(メーラー)には一定の文字列をメールの最後に自動的に設定、挿入してくれる機能がありますから、ぜひ活用してください。
ぼくの場合は、以下のような形式を自動的に挿入します。
この後に日本語版の同じ内容を続けて、発信する直前に「使わないほう(英文なら日本語の連絡先)」を消すようにしています。
メールの最初と最後に、何をして欲しいか、はっきり書きましょう|ポイント③
仕事で送るメールであれば、単なる「季節のあいさつ( season’s greetings )」ではなく、何か目的があるはずです。
輸出を例に、考えてみましょう。
これらの他にも、
などなど、いくつかのパターンが考えられます。
これらに共通しているのは、「相手に何かをしてもらいたい」ということです。
であれば、「①相手にしてもらいたいこと」をまず書き、「②理由」を述べ、最後にもう一度「③して欲しいこと」を書くのが最もシンプルで意図が伝わりやすいフォーマットになります。
便宜上、番号を振って例文を考えてみましょう。
- 今回、船積スケジュールの調整をするためにメールを差し上げました。
- ○○号のスケジュールが遅れ、XX港に寄港しないことになったためです。
- 新しい船便の候補は以下の2つです。いずれか選択ください。確認のメールを待ちます。
といった具合です。
貿易実務のメール風にライティングしてみると、たとえば最初の例であれば、以下のようになります。
1に「してほしいこと」、2に「理由」、3に「してほしいこと(より具体的に)」の形式にしています。
今回紹介した例文が自然か、正確か、といった議論はあるでしょう。
一応、TOEIC は900点を超え、英検も1級まで持っていますが、留学経験者のようには英文を読み書きできませんし、いまだにドラマや映画の英語はチンプンカンプンです。
ただ、実際のビジネス(特に、企業間の取引、BtoB)の現場については、ある程度、わかっているつもりです。
「メーカー」や「商社」であれば(かなりの大手企業であっても)この程度の英語が広く使われており、十分に意思疎通はできます。
だから、英語を書くことに遠慮は無用です。臆さず、どんどん書きましょう。
……すみません、本題に戻って、もう一度。
- 今回、船積スケジュールの調整をするためにメールを差し上げました。
- ○○号のスケジュールが遅れ、XX港に寄港しないことになったためです。
- 新しい船便の候補は以下の2つです。いずれか選択ください。確認のメールを待ちます。
この2の「理由」が、各担当者の工夫のしどころです。
実務担当者同士の人間関係、あるいは依頼内容の難易度とお互いの立場を考慮しながらメッセージを送るとスムーズに話が進みます。
というのも、「貿易実務者」だけで「決められる」ことと「決められないこと」があるからです。
買主側の実務担当者の性格、社内調整能力、こちらからの依頼内容の難易度(たとえば、買主側で追加費用が発生する場合など)によって、こちらが得られる結果も変わります。
何でも「本当の事」を言えば良いというわけではありません。
「リアリティ」、そして「十分な理由の説明」が大切です。
ここでは「予定した船の抜港(ばっこう、当初の予定を変えて港に寄らないこと)」を理由に挙げています。
場合によっては嘘(というと語弊がありますが、盛った話、方便)を使いながら一所懸命、説明することで、説得力が増します。
たとえば、
- 「〇〇日から日本が長期休暇に入るから、フリータイムを〇〇日まで延ばしてください」
- 「〇〇ごろから倉庫の改修予定があるから、船積を1週間待ってください」
太字の部分を書いておくだけで、得られる結果は明らかに違います。
もちろん、嘘ばかり書いていると、自分でも何が本当かわからなくなるのでやめましょう。
精神も荒んできます。
ただ、「同じ情報」「正しい情報」でも伝え方で「回答(レスポンス)」に差が出ます。
というか、職場の若い人や外部から入ってくるメールの場合、そもそも「たしかな理由」があるのに「伝えていない」ケースも多いのです。
だから、一行でいいから、ひと手間かけて「理由」を書けば、リアクションに差が出ます。
そうすれば、「まあ、広島商店)Mr. Kandaka側の事情も仕方ない面があるから、今回は先方の要求通りでOKするかな」とアユタヤ商事の窓口)Ms. チナワットとその上司は判断してくれる、かも知れません。
.jpeg)
登場人物は架空ですよ、念のため
まとめ:貿易実務でも用途、目的にあった英語表現がある
今回の復習をしておきましょう。
料理はひと手間で美味しくなる、と言います。
コミュニケーションも同じです。
ましてや、海外の人が相手ですから……。
英文ビジネスレターの書き方、といった本は手元にいくつかあり、時々参照しています。
ただ、海外営業や海外調達ならまだしも、メーカーの貿易実務に使うには、ちょっと複雑な表現が多いように思います。
中には、Please を多用しないように、といったアドバイスがあったりするのがそうです。
しかし、貿易実務においては、Please は遠慮なく使ってかまいません。
まさに依頼していることがはっきりするわけで、むしろ使うべきです。
Please reply なのか Please accept なのか、はたまた Please return it with your signature なのか、相手もこのように書けばこちらの真意をくみ取ってくれます。
もちろん、目標を高く持ち、将来、仕事の幅を広げるために英文レターや英文メールのパターンを頭の中にストックしておくことは、非常に有益です。
新商品紹介のレターで Please を連発しておれば、どうしても稚拙な印象になってしまいます。
「この会社、大丈夫なのか? 」とお客様に心配されるかも知れません。
しかし、大々的に出すプレスリリース並みの高度な内容なら、なにも自分で書く必要もありません。
最後は専門の会社、ネイティブに任せてもいい。
その時に、打ち合わせができる程度に勉強しておけば十分でしょう。
日々の貿易実務は違います。
「正確な情報伝達」そして「相手に正しく対応してもらう」のが貿易実務で「英文を書く目的」なのです。
今回お伝えした3つ、是非、実際の仕事で試してみてください。
一つのフレーズで反応が変わってくることに驚かれると思いますよ。
.jpeg)
「こんな時にどう書こうかな」など疑問があれば「お問い合わせ」からどうぞ。
お答えできる内容やボリュームなら、お返事しますよ。