こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
ネット上のとある書き込み( SNS )で「通関実務検定」という表記を見かけました。
「通関実務検定」というテスト(試験)はないので、以下のいずれかの勘違いと思われます。
- 貿易実務検定(ぼうえきじつむけんてい)という民間の試験と勘違いしている
- 通関士試験の3科目目、「通関実務」と勘違いしている。
この二つは似た言葉なんですけれど、全然違う内容を指してましてね。
また、難易度も全然違います。
まあ、狭い世界のことなので、わかりにくいのも当然です。
ということで、1、2と順に解説していきましょう。
通関実務検定(?)と勘違いする理由、わかります|考えられる二つのケースとは?

「通関実務検定」というのは3つのワードでできています。
これらの内容を踏まえていきます。
- 通関:荷物の検査を受け、輸出入の許可を得て、税関を通過すること
- 貿易:外国と商業取引を行い、貨物・商品をやりとりすること
- 実務:実際の業務、職務、およびその内容
- 検定:資格を与えることの適否を検定するために行われる試験(民間主催が多い)
貿易実務検定は「海外との商取引を扱う実務に関する能力」をはかる試験のこと
貿易実務検定は「海外との商取引を扱う実務に関する能力」をはかる民間の試験です。
インボイスやパッキングリストを作成、送付する仕事を含む、貿易に関する手続きへの理解を証明できる資格となっています。
貿易実務検定C級が最も簡単でB級、A級となるにつれて難しくなりますが、ぼく自身はC級を取得しているのであればチームとして働くのに十分だろう、という意見です。
市販の教材で安価なものがあまりないのと、英語検定や TOEIC のように全国で実施される検定でないのとで、特に地方都市からの受験となると対策が難しいテストではあります。
会社が受験費用や旅費を補助してくれるならば、かなり挑戦へのハードルが下がるんですけどね。
貿易実務をふだんの仕事としている人であれば、C級は特別な勉強をせずとも合格できる可能性があります。
合格率が50%前後あるというだけで、気持ちは楽でしょう。
1回分で構わないので過去問を無料公開してくれたら、新入社員の研修に使わせてもらうんだけどな。
通関実務は通関士試験の3科目目にして「もっとも難しい科目」のこと
「通関実務」は3科目ある通関士試験の科目のうち、もっとも難しく、合否を分ける科目です。
そして、通関実務という科目名でありながら、条約や基本通達など最も細かく、しかも最新の法改正などに影響を受けやすい範囲も多く含んでいます。
「通関実務」科目の何が厳しいって、語群選択式(ごぐんせんたくしき)の問題が一問もないことなんですよ。
「語群選択式」問題は、昔は「穴埋め問題」などと呼ばれ、語句を手書きで書いていたのでそれなりに難問でした(若い頃に1度だけ受けています。会場はたしか明治学院大学、いや明治大学だったか……)。
しかし、マークシートテストへのリニューアル後(2006年10月の第40回)は15個ある選択肢の中から選ぶ方式になったのです。
しかも、15個の選択肢、といいながら、実際は「1年」「3年」「5年」のように実質「三択」(あるいは「許可」「届出」の二択など)となる問題がほとんどですから、草刈り場となっています。
午前中の2科目(通関業法、関税法)にある「ボーナス問題」のような得点源が、午後の「通関実務」にはないのです。
だから初めて本試験を受けてこの関門を突破するのは、なかなかにハードルが高い。
通関業者に勤めていて、普段から通関の実務に触れている人であっても、対策をしなければ三科目受験で通関士試験に合格するのはほぼ無理でしょう。
3科目受験者の実質的な合格率は10%を切ることもざらですから、じつに難儀です。
通関実務検定(?)と勘違いする理由、わかります|まとめ

ここまでの内容をまとめます。
特定のグループの中で使われる用語って、実は大切なものです。
「通関実務検定」だろうが「貿易実務検定」だろうが、ふだん貿易に関わらない方々であれば大した問題ではありません。
ただ、海外営業や海外調達などで貿易に関わっているなら、基本的な用語を使い分けることで社内、社外のコミュニケーションもスムーズに進みます。
乙仲(フォワーダー)との打ち合わせで「輸出の許可」を「輸出の承認」「輸出の届出(とどけで)」などを呼ぶ実務者はいないでしょうが、たとえばそんな表現ひとつでも言葉の選択に違和感があれば「おや?」となりますからね。
業界内で使われている単語、表現は同業者であればよく通じるので、意思疎通の質の改善に役立てていきましょう。



