【貿易】L/C(Letter of Credit)、信用状決済のしくみと本質とは?|T/T との比較

海上輸送用コンテナの扉貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。

信用状( L/C, Letter of Credit )がどんな仕組みなのか、その「本質」を知りたいですか?

L/C(信用状)とは、貿易における決済方法の一つで、銀行が発行する支払いの確約(書)を指します。

基本的に国内外「二つ」の銀行が関わることになるので、輸出、輸入ともにリスクを回避できる仕組み、とも説明されます。

ただ、信用状の本質は、もう少し別のところにあります。

基礎レベルから応用レベルへの入り口、より実務に則した知識と判断が求められる L/C = Letter of Credit = 信用状について、一緒にみていきましょう。

L/C(Letter of Credit)、信用状決済のしくみ、本質とは?|T/T との比較

コンテナヤード(ONE)

L/C の説明の前に、とても大切なことをお伝えします。

T/T( = Telegraphic Transfer ) をご存じですか?

まだ、あるいは自信がないのであれば、まずは T/T の特徴から理解しておきましょう。

貿易で用いられる他の代金決済(お金の支払い方法)として T/T (Telegraphic Transfer、電子送金)が広く使われています。

個人の買い物で言うところの「銀行振り込み」で、ビジネス上の会話の中では「送金」「ティーティー」と呼ばれます。

神高
神高

振り込みをする日(実行日)や通貨を決められるなど、個人の買い物よりも高度ですけれど、基本的には同じです。

しかし、T/Tの場合、どのタイミングでお金を払うのかが買主、売主ともに問題となります。

「前払い」か「後払い」か、の違いが重要です。

  • 前払い:食券を買って牛丼を食べる「松屋」は「前払い」
  • 後払い:食べた後で払う「吉野家」は「後払い」

牛丼なら、どちらでもあまり気にする必要はありません。

「食券を買ったのに、牛丼が出てこない」ということは(普通は)起こらないからです。

でも、牛丼を一杯食べるのと、コンテナ一杯の商品を売買するのとでは、事情がまったく違います。

なぜなら、買主(かいぬし、買う側)が船積み前に代金を支払うと、一方的に買主が不利になるからです。

買う側(買主)からみた「貿易のリスク」

買う側から「貿易」の本質を考えてみましょう。

貿易とは、売主(うりぬし、売る側)が海の向こう、遠く海外にいる「買い物」です。

ですから、お金を払っても、売主がきちんと商品を発送してくれない可能性があります。

「ごめん、ごめん。今、用意できました。すぐ送りますので」と言いながら、いつまで経っても何も送って来なければ、どうすれば良いのでしょう?

代金回収のために何度も訪問して協議したり、裁判を起こしたり、といった手続きが必要になります。

貿易を学ぶとき「第一にカントリーリスクが……」などと教科書や参考書に載っていますけれど、貿易実務にとって最も困るリスクは「お金を払ったのに、貨物が届かないこと」です。

普段は、気にすることはないですけどね。

ならば、後払いにすれば問題解決か、といえば、そうとも言えません。

売る側には売る側の事情があるからです。

売る側(売主)からみた「貿易のリスク」

買主が船積み後に代金を支払うと、何が起こるか。

今度は売主が代金回収の心配をせねばなりません。

商品が届いた後、いろいろな理由をつけて、買主が支払いを渋るかも知れませんからね。

「ごめん、ごめん。口座に銀行からの借入金が入ったら最優先で払うから」みたいなことを言って、ずっと払ってくれない、かも知れません。

Amazonで数百円のイヤホンを購入するケースのように、問題があれば代品を再送、あるいは返金してくれるような商品、金額ならさほど気にしなくともよいでしょう。

しかし、実際のビジネスは数百万円、数千万円の取引となるため、お互い、意思疎通をしながら、慎重に進める必要があります。

国際的な取引となれば、そう頻繁に訪問して直談判するわけにもいかないのです。

そのようなお互いの心配を緩和するため、銀行が仲介役を果たす信用状( L/C )が広く使われている、と理解してください。

ここに、L/C 決済の「本質」があります。

信用状( L/C )にかかわる用語は、銀行の説明がもっとも的確です

信用状に関わる書類の形式や用語を知りたいのであれば、まずは取引している銀行に問い合わせてみましょう。

外為(がいため、外国為替の略)を扱う大手の都市銀行は、ユーザー向けのマニュアルやプレゼン資料を用意してくれています。

たとえば、みずほ銀行ならば、「輸入信用状発行依頼」のオンライン入力マニュアルを公開してくれています。

「信用状を開設して、貨物を輸入する」までの手続きを説明してくれていますけれど、輸出の担当者であれば、これを逆に読めばよいのです。

輸出だけを扱う貿易実務の担当者は、届いた信用状( L/C )を読むことはあっても、それを準備した( application した)人のことまでイメージしにくいものです。

ここにインプットした情報が相手(輸出者)に届いているのだ、と理解しておけば、理解は深まります。

1つのL/C(信用状)に、輸入国、輸出国、二つの銀行が関わっている

コンテナヤード

ここからは、信用状( L/C )について解説します。

信用状とは、買主と売主を結ぶ代金決済(お金の払い方)の一つです。

英文で売買契約書を作成する場合、Letter of Credit あるいは、長いので契約書の途中から略して 「 L/C 」と書かれます。

貿易実務上も、信用状、あるいは L/C(エルシー) と略して銀行、乙仲業者と会話します。

神高
神高

「今回は、レターオブクレジットで……」と会話する人には、会ったことがありません。

まず、買主、売主はそれぞれ、自分の国に在る銀行を選びます。

通常の取引銀行(メインバンク)が選ばれることもあれば、信用状取引を得意とする手数料の安い銀行が選ばれることもあります。

買主が選んだ銀行を Issuing Bank = 発行銀行と呼びます。

信用状を「発行」するので、「発行」銀行なのです。

一方、売主が選んだ銀行を Advising Bank = 通知銀行と呼びます。

信用状を受け取ったことを売主に「通知」するので「通知」銀行、と理解すると憶えやすいでしょう。

たとえば、さきほどのみずほ銀行の説明では、自行(日本側)がAdvising Bankとなる事例を紹介しているわけです。

銀行が決まれば、次のステップとして、買主は「発行銀行」(自国の銀行)に信用状の開設(信用状を作って送ること)を申し込みます。

信用状の送り先は、売主が指定した「通知銀行」(売主と同じ国にある銀行)となります。

「発行銀行」が信用状の発行を行うと、その情報は売主の国にある「通知銀行」に渡されます。

その後、申し込み時に指定した条件(指定した期日前に発行されたB/L = 船荷証券、信用状で指示された品名などを記載したI/V = インボイス、仕入書、検査証、原産地証明などその他書類を銀行に提出すること、など)が売主に通知されます。

 

その情報をまとめたものが、「売主」の手元に届いた L/C に書かれている電報みたいな一連のレターです。

売主は、それらの条件を全て満たせるよう、船積みの計画をすることになります。

ここまでの手続きが、あなたが今、手にしている「信用状」に集約されています。

信用状のポイントは「書類取引の原則」と「ディスクレ」にあります

信用状は、記載された条件を「書類が」満たしておれば、信用状に書かれた金額を通知銀行経由で受け取ることができます。

この「書類が」というところがポイントで「書類取引の原則」などとも呼ばれます。

反対に買主が「発行銀行」に通知した内容を売主が何らかの理由で満たせない時(船積みが指定期日より遅い、指定された書類が要求された形式を満たさない、そもそも信用状の要求を売主が絶対に満たせない矛盾がある、など)は、それだけで支払い拒絶の理由とされます。

これを「ディスクレパンシー、discrepancy = 不一致という英単語」、実務上はディスクレと呼ばれます。

ディスクレは売主としては絶対に避けたい事態なので、「通知銀行」や乙仲業者と相談しながら条件を満たせるようにあらゆる準備をしていくことになります。

船積完了後も、信用状に基づくやりとりが続きます

さて、信用状の条件を全て満たせるよう、船積みの準備ができたとしましょう。

無事に船積みが行われると、船荷証券が船会社から発行され、Shipper = 輸出者(通常は売主)に船荷証券の原本が3通セットで郵送されてきます。

その3通の船荷証券原本と信用状が要求するその他の書類(仕入書、梱包明細、検査成績書、原産地証明など)をセットにして、「通知銀行」に提出します。

この書類の提出時期にも注意しなければなりません。

というのも、信用状に書かれた提出期限や有効期限とは関係なく、「船積みから21日以内」というルールがICC(国際商業会議所。INCOTERMSを考案し、管理している団体)によって決められているからです。

各種証明書、保証書、原産地証明書などは自社で作成する船積み書類と違い、外部の団体や組織に頼まねばなりません。

例えば、特定の検査機関の証明書などの場合、船積の都合に合わせて発行してくれるとは限らないのです。

依頼してから発行されるまでの期間を常に意識して、先回りして準備を進めておきましょう。

国内取引の約束手形と同様の「買い取り」「取り立て」のしくみ

無事に「発行銀行」が書類を受領し、ディスクレが無いと確認されると、支払い確約(しはらいかくやく、代金支払いの了承)が行われ、指定された売主の銀行口座に銀行の手数料を除いた金額が振り込まれます。

この前の段階で、「通知銀行」は売主に対し、信用状を取り立てにするか、買い取りにするかの判断を求めることもあります。

国内の取引で「約束手形」を扱ったことがある方であれば、おわかりいただけるでしょう。

まったく、同じ意味の「取立」「買取」です。

通知銀行が「買い取った」場合、すぐに信用状に書かれた契約金額が売主の口座に振り込まれます。

その後、実際に買主から代金を回収するまでにかかった期間に応じた手数料(割引料、わりびきりょう)に相当する金額が後から売主に請求されることになります。

「買取」は手数料を支払う分、現金化が早く、すなわち資金繰りが楽になるメリットがあります。

一方、「取立」にすると、実際に「発行銀行」が支払い確約をするまで、振り込みを待つことになります。

期間は、関わる銀行や地域、信用状の条件などによってまちまちですが、銀行間のやりとりが全て終わらねばならないため、通常は1日~2日というわけにはいかず、数週間はかかると考えておく必要があるでしょう。

信用状を受け取ったら、すぐに中身を確認しましょう

「輸出」で信用状に関わっている方に、お伝えします。

信用状を受け取ったら、やっと届いた……などと安心して、書類を寝かせてはいけません。

封書なら、すぐに封筒を開けましょう。

PDFで届くなら、印刷するなどして中身のチェックをしましょう。

買主はさまざまな条件を、信用状( L/C )の中で細かく定めることができます。

そのため、意図的にせよ、意図的でないにせよ、はじめから両立しない条件を記載されてしまうことがあります。

でも、たとえ「売買契約書」と細かい部分で相違していても、その信用状は有効なのです(信用状独立の原則、とも呼ばれます)。

  • 新しい船積期限でお互い、合意したにも関わらず、古い期限のまま L/C を開いてきた
  • 新しい金額でお互い、合意したにも関わらず、古い金額のまま L/C を開いてきた
  • 追加で書類を提出することでお互い合意したにも関わらず、添付書類に反映されていない
  • 分納( partial shipment )を了承していたのに、not allowed で L/C を発行している

数え上げれば、キリがありません。

この IT の時代、発行銀行の段階で気づいてよ、とも思いますが、そういう仕組みなのだから仕方ありません。

もう何年も前のことですが、ぼくは L/C 番号が表紙と本文で異なるケースさえ、経験したことさえあります。

また、船積み期限など、あらゆる期限が現実的に守れるかどうかにも注意する必要があります。

大切なことなので、もう一度言います。

信用状を通知銀行から郵送で受け取ったら、すぐに封筒を開けて矛盾がないか、対応可能かどうか、確認をするべきです。

ここで時間をロスしていては、準備できるものもできなくなります。

日本側で対応できることは対応し、必要に応じて、買主に信用状の改訂(書き換え再発行、アメンド = amend と呼ばれます)を求めていきます。

この「L/C を受領してすぐ」の時期を大切にし、対処していけば、ディスクレを回避でき、結果としてスムーズな代金回収につながります。

信用状取引の理解は、貿易実務の最初の目標|まとめ

ここまでの内容をまとめておきましょう。

 

信用状の中身を確認しながら、船積みから代金回収までを主体的に完遂できるなら、メーカーや特定の種類の貨物を扱う商社であれば「貿易実務ができる人」のスタートラインに立ったといえます。

広く長く使える、普遍的な知識( portable skills )になります。

たとえば、海外営業や海外調達の部門に所属し、客先、取引先と交渉するようになっても役立ちますし、扱う商品、製品が変わっても、基本的に同じなので応用が利きます。

貿易実務や海外営業、海外調達に関わるなら、信用状の原則を知っておく価値はあります。

信用状は、知れば知るほど、なかなかよくできた仕組みでしてね。

数十億円もの鉄鉱石をブラジルから日本に輸入する、といったケースにも用いられています。

背後にあるICCのルール(信用状統一規則と呼ばれる)は実務である程度、経験を積まねば理解できない内容なので、仕事をしながら学んでいく、学びながら仕事を進めていく、という姿勢で良いでしょう。

ぼくも長年、貿易実務に従事しているものの、さすがにルール変更や細かい規定まで全ては把握できていなません。

2007年にUCP 600という信用状に関する新しい規定が導入された時も、銀行に質問したり、ネットを参照したりして確認した記憶があります。

実務者は「ルールの専門家」ではなく「貿易実務の専門家」なのですから、それで良いのです。

少しずつ学んでおいて、必要に応じて、銀行やフォワーダー、専門家に質問し、問題解決できるなら。

管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年9月生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

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