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L/C(Letter of Credit)、信用状決済のしくみとは?

海上輸送用コンテナの扉貿易実務・事務処理

過去の貿易実務を解説する記事では、Incoterms、ICC、FOBCIF、FIO、Berth TermETDETA などの用語、使い方などを説明してきた。

今回は基礎レベルから応用レベルへの入り口、より実務に則した知識、判断が求められる L/C = Letter of Credit = 信用状について、一緒にみていこう。

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L/C の前に、T/T(電子送金)決済のしくみを理解しましょう

貿易で用いられる他の代金決済(お金の支払い方法)としては T/T = Telegraphic Transfer = 電子送金(国際的な振り込み)がある。

しかし、T/Tの場合、どのタイミングでお金を払うのかが買主、売主ともに問題となる。

もし、買主が船積み前に代金を支払うと、一方的に買主が不利になる。お金を払っても、売主がきちんと商品を発送してくれない可能性があるからだ。

逆もまた同様だ。買主が船積み後に支払うと、今度は売主が代金回収の心配をせねばならない。商品が届いた後、いろいろな理由をつけて、買主が支払いを渋るかも知れないからだ。

Amazonで数百円のイヤホンを購入するケースのように、問題があれば代品を再送、あるいは返金してくれるような商品、金額ならさほど気にしなくともよい。

しかし、実際のビジネスは数百万円、数千万円の取引となるため、お互い、意思疎通をしながら、慎重に進める必要がある。国際的な取引となれば、そう頻繁に訪問して直談判するわけにもいかない。

そのようなお互いの心配を緩和するため、信用状が広く使われている。

なお、書類の形式や用語を知りたいのであれば、みずほ銀行様が「輸入信用状発行依頼」のオンライン入力マニュアルを公開してくれているので、こちらを参照するとわかりやすい。

ここにインプットした情報が相手(輸出者)に届くと考えておけば、おおむね間違いない。

1つのL/C(信用状)に、輸入国、輸出国、二つの銀行が関わっている

信用状は、買主と売主を結ぶ代金決済(お金の払い方)の一つだ。英文で売買契約書を作成する場合、Letter of Credit あるいは、長いので契約書の途中から略して 「 L/C 」と書く。

貿易実務上も、信用状、あるいは L/C と略して銀行、乙仲業者と会話することが多い。

まず、買主、売主はそれぞれ、自分の国に在る銀行を選ぶ。通常の取引銀行(メインバンク)が選ばれることもあれば、信用状取引を得意とする手数料の安い銀行が選ばれることもある。

買主が選んだ銀行を Issuing Bank = 発行銀行と呼ぶ。信用状を「発行」するので、「発行」銀行だ。

一方、売主が選んだ銀行を Advising Bank = 通知銀行と呼ぶ。信用状を受け取ったことを売主に「通知」するので「通知」銀行、と理解すると憶えやすいだろう。

たとえば、みずほ銀行様のこちらのページでは、自行(日本側)がAdvising Bankとなる事例を紹介している。

銀行が決まれば、次のステップとして、買主は「発行銀行」(自国の銀行)に信用状の開設(信用状を作って送ること)を申し込む。

信用状の送り先は、売主が指定した「通知銀行」(売主と同じ国にある銀行)となる。

「発行銀行」が信用状の発行を行うと、その情報は売主の国にある「通知銀行」に渡される。

その後、申し込み時に指定した条件(指定した期日前に発行されたB/L = 船荷証券、信用状で指示された品名などを記載したI/V = インボイス、仕入書、検査証、原産地証明などその他書類を銀行に提出すること、など)が売主に通知される。

売主は、それらの条件を全て満たせるよう、船積みの計画をすることになる。

ここまでの手続きが、あなたが今、手にしている「信用状」に集約されている。

信用状は、記載された条件を「形式的に」満たしておれば、信用状に書かれた金額を通知銀行経由で受け取ることができる。

この「形式的」というところがポイントで、反対に買主が「発行銀行」に通知した内容を売主が何らかの理由で満たせない時(船積みが指定期日より遅い、指定された書類が要求された形式を満たさない、そもそも信用状の要求を売主が絶対に満たせない矛盾がある、など)は、それだけで支払い拒絶の理由とされる。

これを「ディスクレパンシー、discrepancy = 不一致という英単語」、実務上はディスクレと呼ぶ。

ディスクレは売主としては絶対に避けたい事態なので、「通知銀行」や乙仲業者と相談しながら条件を満たせるようにあらゆる準備をしていく。

船積完了後も、信用状に基づくやりとりが続く

さて、信用状の条件を全て満たせるよう、船積みの準備ができたとする。

無事に船積みが行われると、船荷証券が船会社から発行され、Shipper = 輸出者(通常は売主)に船荷証券の原本が3通セットで郵送されてくる。

その3通の船荷証券原本と信用状が要求するその他の書類(仕入書、梱包明細、検査成績書、原産地証明など)をセットにして、「通知銀行」に提出する。

この書類の提出時期にも注意しなければならない。というのも、信用状に書かれた提出期限や有効期限とは関係なく、「船積みから21日以内」というルールがICC(国際商業会議所。INCOTERMSを考案し、管理している団体)によって決められているからだ。

各種証明書、保証書、原産地証明書などは自社で作成する船積み書類と違い、外部の団体や組織に頼まねばならない。

例えば、特定の検査機関の証明書などの場合、船積の都合に合わせて発行してくれるとは限らない。

依頼してから発行されるまでの期間を常に意識して、先回りして準備を進めておきたい。

国内取引の約束手形と同様の「買い取り」「取り立て」のしくみ

無事に「発行銀行」が書類を受領し、ディスクレが無いと確認すると、支払い確約(しはらいかくやく、代金支払いの了承)が行われ、指定された売主の銀行口座に銀行の手数料を除いた金額が振り込まれる。

この前の段階で、「通知銀行」は売主に対し、信用状を取り立てにするか、買い取りにするかの判断を求める。

国内の取引で「約束手形」を扱ったことがある方であれば理解は容易、まったく同じ意味だ。

通知銀行が買い取った場合、すぐに信用状に書かれた契約金額が売主の口座に振り込まれる。その後、実際に買主から代金を回収するまでにかかった期間に応じた手数料(割引料、わりびきりょう)に相当する金額が後から売主に請求される。

手数料を支払う分、現金化が早く、すなわち資金繰りが楽になるメリットがある。

一方、取り立てにすると、実際に「発行銀行」が支払い確約をするまで、振り込みを待つことになる。期間は、関わる銀行や地域、信用状の条件などによってまちまちだが、銀行間のやりとりが全て終わらねばならないため、通常は1日~2日というわけにはいかず、数週間はかかると考えておく必要がある。

信用状を受け取ったらすぐに中身を確認しよう

話を最初に戻そう。

信用状を受け取ったら、やっと届いた……などと安心して、書類を寝かせてはいけない。

封書なら、すぐに封筒を開けよう。PDFで届くなら、印刷するなどして中身のチェックをしよう。

買主はさまざまな条件を、信用状の中で細かく定めることができる。

そのため、意図的にせよ、意図的でないにせよ、はじめから両立しない条件を記載されてしまうことがある。

たとえば「船荷証券を3通を銀行に持ち込み、1通をクーリエで買主に直送せよ」など。

船荷証券は3通しか発行されないので、枚数が足りない。

この IT の時代、発行銀行の段階で気づいてよ、とも思うが、そういう仕組みなのだから仕方ない。もう何年も前だが、ぼくは L/C 番号が表紙と本文で異なるケースを経験したことさえある。

また、船積み期限など、あらゆる期限が現実的に守れるかどうかにも注意する必要がある。

大切なことなので、もう一度言う。

信用状を通知銀行から郵送で受け取ったら、すぐに封筒を開けて矛盾がないか、対応可能かどうか、確認をするべきだ。ここで時間をロスしていては、準備できるものもできなくなる。日本側で対応できることは対応し、必要に応じて、買主に信用状の改訂(書き換え再発行、アメンド = amend と呼ばれる)を求めていく。

この時期を大切にし、対処していけば、ディスクレを回避でき、結果としてスムーズな代金回収につながる。

まとめ:信用状取引の理解は、貿易実務の最初の目標

信用状の中身を確認しながら、船積みから代金回収までを主体的に完遂できるなら、メーカーや特定の種類の貨物を扱う商社であれば「貿易実務ができる人」のスタートラインに立ったといえるだろう。

広く長く使える、普遍的な知識を身につけたことになる。

この知識は、例えば海外営業や海外調達の部門に所属し、客先、取引先と交渉するようになっても役立つ上、扱う商品、製品が変わっても、基本的に同じなので応用が利く。

信用状は、知れば知るほど、なかなかよくできた仕組みで、何十億円もの鉄鉱石をブラジルから日本に輸入する、といったケースにも用いられる。

背後にあるICCのルール(信用状統一規則と呼ばれる)は実務である程度、経験を積まねば理解できない内容なので、仕事をしながら学んでいく、学びながら仕事を進めていく、という姿勢で良いと思う。

ぼくも長年、貿易実務に従事しているものの、さすがにルール変更や細かい規定まで全ては把握できていない。

たとえば、2007年にUCP 600という新しい規定が導入された時は、銀行に質問したり、ネットを参照したりして確認した記憶がある。

ネットその他の情報をもとにアップデートしていけば、この世界で生きていける。

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