こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に就いて20年超の神高(かんだか)です。
昔々、大手企業のM倉庫(M=財閥系)から担当者が遊びに、ではなく打ち合わせに来ていた時のこと。
「うちみたいな会社、フォワーダーって呼ばれるんですかね?」と聞いてきたので、「世間ではそういう認識じゃない?」と返しました。
メーカーや商社からみれば、「○○倉庫」「□□ロジスティクス」なんて名前が付いていたら、フォワーダーと認識するでしょう。
通関業者であり、輸出入の前後にある輸送、保管まで対応してくれる会社。
とはいえ、はっきりしない用語でもあります。
たしかに「フォワーダー」って定義がフワッとしていて、なんとなくカッコイイ英語表現です。
流行りの3PL(サードパーティーロジスティクス、荷主に代わって運送全体を取り仕切ること)とかやってそうだな、なんて。
空輸もやるし、コンテナ輸送ももちろん。在来船だって可能。
そんな感じ。
勝手なイメージですけど。
今回は、その「フォワーダー」について、一緒に確認しておきましょう。
貿易実務で英文メールの中に「 a forwarder 」と書いても、通じると思いますか?
答え:フォワーダーを英語で書くときは a freight forwarder だと通じやすい
まず、フォワーダーという言葉は、そのまま英語で通じるのか。
いきなり答えですが、英文メールや FAX の中であれば、「 a freight forwarder 」と書くほうが通じやすいです。
とはいえ、文脈によっては、単に「 a forwarder 」でも十分に通じます
この時、freight (フレート)は 「貨物」という意味で使われています。
一方、forward (フォワード)は、「転送」「回送」「横持ち」といった意味で使われています。
つまり、「荷物を受け取って、運送業者に渡す」+「人」、が forward + er というわけです。
Please have a contact with the following freight forwarder.
ABC Logistics Co., Ltd. — 住所などの詳細
「下記のフォワーダーに連絡してみてください」って具合。
さて、それでは、フォワーダーのお仕事って、どんな内容なのでしょう。
フォワーダーは、「船や飛行機を運航する会社の代理店」の仕事もします
フォワーダーというとき、基本的には輸出や輸入を伴う貨物を扱える業者を意味しています。
いわゆる「乙仲(おつなか」「通関業者(つうかんぎょうしゃ)」と同じように使われる場面も多々あります。
ですから、荷物を送りたい人や受け取りたい人・法人(荷主)の輸出入を手伝うだけではなく、船や飛行機を運航する会社をサポートする仕事もしています。
実際、通関業の許可を持って国際物流に関わる企業・乙仲(□□運輸、□□回漕店、□□倉庫など)の中には、船側、飛行機側の荷役(にやく、にえき、貨物の積み下ろしや短距離の輸送など)をまるごと請け負うところもあります。
最初にお話しした財閥系の〇〇倉庫も、いろいろな運送業者を仲介し、国際的な物流に関われるので、じゅうぶんに「フォワーダー」としての立場を確立しています。
ただ、財閥系の倉庫会社は歴史的に不動産収入がものすごいですから、「不動産デベロッパー」としての側面もあります。
複数の収入源がある企業って、うらやましいですね。
フォワーダーの日本語訳は、いずれも長いので定まっていません|フォワーダー、または乙仲(おつなか)
フォワーダーを一言で言い換える日本語訳はないものか、とあらためて探してみたものの、しっくりくるものがありませんでした。
- 海上貨物取扱業者(かいじょうかもつとりあつかいぎょうしゃ)
- 航空貨物取扱業者(こうくうかもつとりあつかいぎょうしゃ)
- 貨物利用運送事業者(かもつりよううんようぎょうしゃ)
などの記述があるのですが、これらを使って呼ぶことはまれでしょう。
いずれも、非常に長いですからね。
したがい、貿易実務に関わる人の間では、そのままカタカナで「フォワーダー」、あるいは「乙仲(おつなか)」を使っていると想像します。
ちなみに、乙仲は乙種仲立業(おつしゅなかだちぎょう)に由来するらしいですよ
定期船の仲介が「乙種」、不定期船の仲介が「甲種」だったんですって。焼酎みたい
船にしても飛行機にしてもスペース(貨物を積める場所)が広いですから、輸出を希望する人(売主、荷主など)を探すのも一苦労です。
船倉(せんそう)がカラッポ、スカスカの状態で船や飛行機を運航すると大損害ですから、その荷物集めや梱包(混載作業 = LCL )をフォワーダーが手伝っているのです。
もし世の中にフォワーダーが存在しなかったら、個人や法人は船や飛行機と直接交渉はできないでしょうから、法外な高コストになるでしょう。
その意味では「混載」こそ「シェアリングエコノミー」の古典的な形だと言えます。
代理人のいない世界、想像するだけで「非効率」ですね。
まとめ:forward は「電子メールの転送」の意味でも使われています
簡単に復習しておきましょう。
英単語としての「 forward 」はいくつかの顔があります。
まず、forward は前置詞になれます。その時の意味は、サッカーのフォワードと同じく「前方」。
Move forward! = 前に進め! といったイメージ、使い方ですね。
そして、コンピューター・通信の世界では、「電子メールの転送」がまさしく「 forward 」です。
転送されたメールの件名には「 Fwd: 」が追加されたのを見たことがありますよね?
これらの状況を関連付けておけば、より理解しやすいでしょう
2022年2月26日追記:
そうそう。
お別れの前に、面白い個人サイトを一つ、ご紹介しておきます。
実際にフォワーダーにお勤めの方が最新のニュースを解説する「みんなのロジスティックス」です。
新しいニュース記事が中心ですので、貿易に関わる方はぜひ、お立ちよりください。