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FOBでも日本側の保険を掛けるなら「FOB保険」を活用

貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に20年以上関わっている神高(かんだか)です。

CIF 契約で輸出する際には、倉庫や工場から貨物が出されてから仕向地(しむけち、輸出先の港)に到着するまで保険が掛かるので、ひとまず無保険になる心配はありません。

しかし、FOB 契約FCA 契約CFR 契約の時は気を付けておかねばなりません。

というのも、保険を掛けるのは「輸入側」だからです。

輸入者、輸出者ともに意識しておらず、知らぬ間に無保険になる箇所(ゾーン)が発生してしまうかも知れません。

そんな時に使えるのが「FOB保険」というサービスですが、通関士など資格試験でもあまり取り上げられることのない事項なので、一緒にみておきましょう。

FOBでも日本側の保険を掛けるなら「FOB保険」を活用

CIF 契約ならば、客先に向けて保険証券を入手しなければならないので、保険を忘れることはないでしょう。

INCOTERMS(インコタームズ) のルールからすれば、当然ですよね。

売主(Seller、Shipper)、買主(Buyer、Consignee)のいずれが貨物保険を手配するかは、売買契約書を締結するときの取引条件(Trade Terms)によって決まります。

たとえば、契約書や INVOICE への記載は、

CIF Shanghai Port, China ( INCOTERMS 2010): USD 100,000.-

といった具合です。(この時、目的地は港になります)

最新版の INCOTERMS 2020では、輸出契約の取引条件が FOB、CFR または CIF の場合、リスク負担(英語では Risk )の移転は、いずれも、同じく「貨物が船上に置かれたとき」と決められています。

従い、CIF 前提でかける保険であれば、そのポイントを超えて買主に貨物が到着するまで(注:保険商品によって、どこまで何がカバーされるかは変わります)保険がかかるので問題ないわけです。

しかし、FOB の場合には、倉庫や工場から「貨物が船上に置かれた時」までが、うっかり無保険になってしまう可能性があります。

「FOB 保険」はそのために用意された「保険商品」です。

FOB保険は、日本からFOB条件で輸出する時に使える保険

FOB保険は「輸出FOB保険保険」とも呼ばれる保険の仕組みです。

各社同様の保険商品はある中で、双日インシュアランス株式会社の説明がわかりやすかったので紹介しておきましょう。

先ほども説明したとおり、日本から輸出する際、CIF なら保険を掛ける(付保 – ふほ、とも呼びます)ことを忘れる可能性は低いですよね。

しかし、FOB、CFR (非公式なら C&F )の時、特に単発の輸出の時は気を付けねばなりません。

この保険をかけておけば、FOB 契約でも工場、倉庫から本船積込みまでの危険をカバーできます。

保管中のトラブルにも対応できるので、高価な商品、製品であれば、活用を検討すべきです。

保険の仕組み、契約内容は CIF の保険と同様

長崎の夜景

条件自体は、CIF で用いる保険と似ていて、「オールリスク」「特定危険担保」などから選べます。

負担できるコストや用途にあわせて各商品の中身を確認してみましょう。

工場や倉庫と港までの輸送手段や商品、製品の特長によって変わってきます。

また、頻繁に、あるいは繰り返し輸送が行われる場合には、長期契約で対応できるか、保険会社に確認してみましょう。

都度、スポットで契約するケースと期間建てで契約するケースがあるのは、国内輸送をカバーする各種保険商品とも似ています。

ただし、FOB保険は、名前こそ貿易に使う保険のようですが、実際は国内の運送に使われている損害保険(運送保険)と似た条件となっています。

ですから、同じ「オールリスク」という用語を用いたとしても、CIF で用いる海上保険とは細かいところが違っていて、たとえば地震は FOB 保険の対象から外れます。

そのあたりは、保険屋さんによく話を聞いてみないとわかりません。

まとめ:わからないことは保険屋さんの営業担当に聞きましょう

ここまでの内容をまとめておきます。

保険会社にも営業部門があるので、わからないことがあれば遠慮なく質問しましょう。

当然ながら、損保の営業マンは INCOTERMS の「実際の」運用にも詳しいので、無駄のない提案をしてくれます。

さらに正確を期すなら、買主側、グループ会社であればコンサイニー側がどのような保険を掛けるかについても検討、再確認しておくとより安心でしょう。

この種の保険の料率(掛け金)は貨物の損傷のしやすさや輸送形態によってかなり変わります。

もちろん、それは保険屋さんから見ても同じで、事故が起こりやすい貨物、航路、あるいは船が古い、新しい、といった事情でも保険の料率を見直してきます。

2、3社、相見積(あいみつもり、金額や条件の比較のための見積)を取っておくとコスト削減にもつながります。

貨物の種類や輸送ルート、従来からの保険の使用頻度によっても変わってくるので、契約が期間建てであっても、再検討を依頼すれば契約前に交渉することもできます。

事故やトラブルが非常に少ない、と自認している貨物であれば、再検討してもらえる可能性は十分にあります。

最後に。

もし、あなたが貿易実務に関わって日が浅く、勉強しているのであれば、この記事だけは読んで帰ってください。

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管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

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