こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
貿易実務で使う用語の中から、今回は「 LCL 」と「 FCL 」について。
これらは、コンテナ船による輸送でのみ使う用語で、それぞれ以下の関係があります。
- LCL = Less than Container Load = CFS 貨物 = 「コンテナに満載、ほどじゃない」
- FCL = Full Container Load = CY 貨物 = 「コンテナに満載」
L と F の対(ペア)を最初に意識してくださいね。
「 Container Load 」はコンテナ1個分、という意味です。
まずは、CFS と CY の意味から一緒に整理していきましょう。
- LCL と CFS貨物は同じ意味:小口貨物の混載を指します
- FCL と CY貨物は同じ意味:コンテナ1本を丸ごと借りることを指します
- LCL と CFS貨物は同じ意味:コンテナの一部を借りることを指します
- コンテナ輸送の基本用語 LCL = CFS 貨物、FCL = CY貨物
- コンテナサイズは20フィートと40フィートに大別されます
- 貨物の出し入れ:Vanning = バニング と Devanning = デバニング、デバン
- 特殊コンテナには、少し背の高いコンテナ(ハイキューブ)などがあります
- コンテナの広さ、高さの感覚と混載( LCL = CFS貨物)について
- まとめ: コンテナ船や港の規模は TEU = コンテナの数で表します
LCL と CFS貨物は同じ意味:小口貨物の混載を指します
あらためて、以下の用語が何の略語なのか、確認します。
- LCL: Less than Container Load (コンテナ1個分に足りない貨物)
- FCL: Full Container Load (コンテナ1個分の貨物)
LCL は「小口貨物の混載」、FCL は「コンテナ1個を丸ごと借りる」ことを意味しています。
「小口貨物の混載」ですから、LCL は、どこかで複数のお客さんの貨物を集めて、フォークリフトやクレーンなどでコンテナに詰める作業が必要になります。
その詰める作業を行うのが、CFS (Container Freight Station、読み方:シーエフエス)です。
だから、LCL のことを「 CFS貨物」、と呼ぶのです。
乙仲、フォワーダーと話すときは「 CFS貨物」の方が多いかも。
FCL と CY貨物は同じ意味:コンテナ1本を丸ごと借りることを指します
FCL と CY貨物は同じ意味。
FCL( Full Container Load )は、コンテナを「丸ごと一本借りる」ことを意味します。
工場なり市場なり、貨物を積むところまでコンテナを運び、梱包して扉を閉めれば、そのまま港まで運ぶことができます。
この「丸ごと借りたコンテナ」を置く、船が到着する場所(埠頭、バースと呼びます)のすぐそばの一時保管場所を CY (Container Yard、読み方:シーワイ)と呼びます。
だから、FCL を「 CY貨物(読み方:シーワイ貨物)」とも呼ぶのです。
LCL 同様、乙仲さん、フォワーダーは「 CY貨物」の方がしっくりくるかな。FCLって言ったら「ああ、CY貨物ね」と言い直されることもあります。
LCL と CFS貨物は同じ意味:コンテナの一部を借りることを指します
一方、LCL と CFS貨物は同じ意味。
「……、ほどじゃない」ってお笑いの「ぺこぱ」みたいですけど、元の英語がそうなのでお許しください。
時を戻そう。
LCLは Less than Container Load、つまり「コンテナ1個分に足りない貨物」でコンテナの一部を借りる運送契約を指します。
段ボール箱一つ、パレット一つのためにコンテナを丸々借りるのは無駄ですよね。
ですから、仲介業者がある程度の荷物を集めて一つのコンテナで複数のお客さん(荷主)にサービスを提供する仕事が成り立つのです。
この「荷物を集めて詰めなおす」場所を CFS( Container Freight Station、通称シーエフエス )と呼びます。
だから、LCL は「 CFS貨物(読み方:シーエフエス貨物)」でも業界内では通用します。
コンテナ輸送の基本用語 LCL = CFS 貨物、FCL = CY貨物
工場で商品や設備の輸出を担当しているチームであれば、日常的に LCL にするか FCL にするか、といった議論を行ってることでしょう
現代の貿易実務において、「コンテナ輸送」は基本中の基本です。
自動車の免許でいうところのオートマ。これを使いこなさなければ、貿易実務は仕事になりません。
その意味では、この LCL 、 FCL 、 CFS 、 CY は、貿易実務に携わる人に限らず、倉庫や資材など、貨物を輸出入する担当者は FOB 、 CIF の次に知っておくべき貿易用語です。
なお、FCL を 「フルコン」、LCL を「混載(こんさい)」、と呼ぶ職場もあるので憶えておきましょう。
意味としては同じです。
さて、LCL、FCL の説明に続き、コンテナ輸送の実情についてお伝えしておきましょう。
コンテナサイズは20フィートと40フィートに大別されます
街を車でドライブしていると、ONE、EVERGREEN など、海運会社のロゴが描かれた海上輸送用コンテナに頻繁に出会うことがあります。
これらのコンテナ、長さが2種類しかないことにお気づきでしょうか。
短いタイプを「20フィートコンテナ」、長いタイプを「40フィートコンテナ」と呼びます。
この記事の最初の写真は長い方、つまり「40フィートコンテナ」です。
ご想像のとおり、コンテナの長さを表しています。
「20フィートコンテナ」は厳密には6.096メートルですが、約6メートルと憶えておいてかまいません。
「40フィートコンテナ」も同様に約12メートルと認識しておきましょう。
信号で停車したとき、コンテナを運ぶトレーラーの後ろについたら、扉が見えますよね。
運転中は危ないので、あまり細かく観察しないようにしてくださいね
コンテナ内に貨物を積み込むために、一般的なコンテナは6つある面のうちの一つ、トレーラーの後ろ側にくる面に扉が付いています。
コンテナの外側のサイズ(外寸<がいすん>)は、ISO(国際標準化機構)により1968年に定めらていて、20フィート、40フィートともに、幅2.438メートル、高さ2.591メートル。
この数字も憶える必要はなく「2メートルと少し」程度の認識で OK です。
というのも、貿易実務に関わる人は「箱の大きさ」よりも「箱にどう入れるか」を気にしなければならないからです。
貨物の出し入れ:Vanning = バニング と Devanning = デバニング、デバン
コンテナによる貿易実務に関わる中では、外側の寸法よりも内側の寸法が大切。
なぜなら、コンテナの間口を超えるサイズの荷物は、コンテナに入らないからです。
食品や家電製品などの貨物をまとめて輸出入する場合、このサイズ、厳密にはコンテナ内部の寸法(内寸<ないすん>)に収まるように、個々の梱包(こんぽう)を検討します。
しかし、この内寸、コンテナのメーカーや扉のデザイン(ちょうつがいの位置や形状など)によって微妙に異なります。
ギリギリを狙う時は、乙仲や船会社の代理店に確認し、さらに梱包業者と情報共有も必要になります。
とはいえ、寸法ギリギリを狙いフォークリフトでの出し入れもまともにできないような形で出荷するのも考えものです。
日本でのバニングは何とかできても輸入港に到着してからデバンするときに天井にぶつけられたり、と思わぬトラブルに巻き込まれます。
- コンテナに貨物を積み込む: Vanning(読み方:バニング、バンニング)
- コンテナから貨物を取り出す: Devanning(読み方:デバニング、デバンとも)
ギリギリのサイズを狙うのであれば、特殊コンテナを使うかどうかなど、乙仲業者を通じて船会社に確認しながら準備を進めましょう。
なお、輸出貨物を扱う梱包業者は港の近くに多数あり、プロフェッショナルです。
当然、輸出貨物の寸法、重量などの制限を考慮した梱包ができますから、乙仲同様、相談相手として適切です。
特殊コンテナには、少し背の高いコンテナ(ハイキューブ)などがあります
コンテナで運びたい貨物が多様化しているので、コンテナ自体の開発も進んでいます。
とりあえず、以下の5つを憶えておけば十分でしょう。
- ドライコンテナ(通常のコンテナ、20フィートと40フィートの二種類)
- ハイキューブコンテナ(背の高いドライコンテナ、幅と長さは同じ)
- リーファーコンテナ(冷凍貨物を運べる、丸ごと冷蔵庫のコンテナ)
- オープントップコンテナ(天井がないドライコンテナ)
- フラットラックコンテナ(天井だけでなく、横の壁もないドライコンテナ)
いわゆる「特殊コンテナ」と呼ばれるもので、いずれもサイズは通常の「ドライコンテナ」を基準に作られています。
コンテナ船や専用トレーラーで運べなくなると、意味がないですからね。
また、ぼく自身は取り扱った経験がないものの、油や薬品用にコンテナサイズに収まるように開発されたタンクコンテナも広く使われていると聞きます。
乙仲業者に相談すれば、貨物に合わせていろいろと提案してもらえます。
コンテナの広さ、高さの感覚と混載( LCL = CFS貨物)について
コンテナの中には、一般的にパレット(PALLET、フォークリフト用の穴が開いた平台、palette と綴る絵具のパレットとは別の言葉)、スキッド(SKID、角棒で作った下支え。下駄とも)に載せられた製品、商品が積み込まれています。
間口2メートルの入口に奥行き6メートルですから、6畳間より少し広いくらい、学生向けワンルームマンション程度の広さがあります。
余談ながら、カラオケボックスは岡山発で、最初は中古コンテナを利用したそうですよ。だからビルの店舗でも「ボックス」と呼ばれるとか。
コンテナ船を運航する会社(船社<せんしゃ>と呼ばれます)は、20フィート、あるいは40フィートコンテナを1個、指定された港から港へ運ぶ料金を幾ら、という定価表(タリフ)を作って船舶代理店などに通知しています。
その情報に基づいて、代理店はコンテナの運賃を見積りし、ユーザーに連絡します。
ただ、お客さんのニーズも多種多彩です。工場で大量生産される製品ならまだしも、ワンルームマンションいっぱいのスペースまでは要らない、もったいない、という人もいらっしゃるでしょう。
そういうユーザーのために、コンテナのスペースを複数人で間借りする LCL = 混載(こんさい)サービスが用意されているのです。
LCL には、貨物を出し入れする設備が必要なので、船会社、港の設備や貨物の取扱量によっては LCL に対応できないケースもあります(乙仲業者に確認すれば、詳しく教えてもらえます)。
ちなみに、小口の貨物であれば、LCL と航空便でほとんど運賃に差が出ないケースもあります。
航空便の方が一般的に早く着きますし、紛失や取り違えも起きにくいので、相見積(あいみつもり)を取ってみるのも一案です。
まとめ: コンテナ船や港の規模は TEU = コンテナの数で表します
コンテナ船輸送について一通り、一緒に確認してきた内容を整理します。
最後に TEU = Twenty-foot Equivalent Unit、テウ、ティーイーユーについて説明しておきましょう。
TEU、つまり「20フィートコンテナ」はコンテナ船の大きさや港の規模を測る単位にもなっています。
たとえば、2,000 TEU(Twenty-foot Equivalent Unit、読み方:テウ、ティーイーユー)とあれば、そのコンテナ船は最大20フィートコンテナを2,000個、積むことができます。
現在、世の中には20,000 TEUを超える船があり、すでに何隻も就航(しゅうこう、船が仕事に就くこと)しています。
関西地区でいうと、神戸ならこういった巨大船も寄港できます。
ただ、大きな船になると、港の設備の都合や喫水(きっすい、海底までの水の深さ、ドラフトとも)に制限があるので、寄ることができる港は世界でも限定されます。
港別のコンテナ数の取り扱い量が国連から公表されているので、興味のある人はこちらをどうぞ。
第4章(77ページ以降)に港の取扱量ランキングその他が紹介されています。
アジアでは中国の「寧波舟山」が世界一、「上海」「シンガポール」と続きます。
そりゃ「寧波+舟山」とくっついたら巨大でしょう。湾と諸島ですからね。
諸島といっても瀬戸内海の島々とはわけが違う。
たとえばランキング5位の広州地区の港でも、近くに行けば、まるで地の果てまでガントリークレーンが並んでいるような状態です。
それほど、中国の港湾設備はいずれも巨大になりました。
またアフリカでも港の大型化、近代化が進んでおり、日本はもう取扱量でランキング上位に入ることはもうないでしょう。
青春を過ぎたようで寂しくはありますが、それは日本に中規模の港が点在しているからでもあります。
たとえば、韓国であれば釜山(プサン)に圧倒的な量の荷物が集められ、そこから国内外、他の港に配送されるのが基本的な流れです。
つまり、飛行機でいうインチョンと同じで、釜山港(特に新港)はハブ空港のような役目を果たしています。
おかげで国際的な競争力を保っていますが、その一方、韓国の釜山以外の港はいずれも規模が小さく不便であることは実務者ならば理解いただけるでしょう。
多くの街や港が内海ではなく外海に接しているので、日本とは単純に比べられませんが……。
日本の場合、災害が起きてトラックや鉄道による陸送が遮断されても、地方の港は国内輸送の拠点になり得ます。
せっかく多くのコストを投入して築いた財産です。
貿易実務に関わる我々もうまく活用したいものです。
最後に。
もし、あなたが貿易実務に関わって日が浅いなら、この記事だけでも読んで帰ってください。
将来、きっと役に立ちます。