こんにちは。
通関士試験に3科目受験で合格している神高(かんだか)です。
通関士の試験を受けるにあたり、受験資格があるのかどうか、気になっていますか?
実は、通関士試験には「受験するための前提条件」が全くありません。
受験資格がないので、外国人でも受けられます。
根拠は、財務省が試験を周知する時に発表する「通関士試験受験案内」です。
通関士に受験資格は本当にないの?|外国人でも受けられるのか
令和元年(2019年)の試験日程が発表された時に財務省から出された「第53回通関士試験受験案内」には、このように書かれています。
国籍にも制限がない、ということで「外国人」も受験できるわけです。
ちなみに、輸出や輸入を許可する「税関(ぜいかん)」は財務省の中にある組織なので、財務省がこういった通関士試験に関するルールを決めています。
通関士試験に興味がある人は、まず「受験案内」に目を通しましょう。
通関士には受験資格がない分、合格のハードルもそれなりに高い
通関士には受験資格がないだけに、合格のハードルも低くないと感じます。
なぜなら、必要とされている通関士の人数に比べて、受験生がかなり多いからです。
そのため、合格率は2019年(令和元年)の第53回で以下のようになっています。
- 1科目受験者:61.9%(通関業法のみ)
- 2科目受験者:12.5%(通関業法と関税法) ※3科目受験者とたまたま同じ
- 3科目受験者:12.5%(通関実務まで全部)
12.5%ということは、ランダムに選んできた8人の中で1番の人が合格するのと同じレベルです。
10%を超えているとはいえ、なかなかの難易度ですよね。
ただ、これにもちょっとしたカラクリがあります。
通関士には受験資格がないために、当日、受験をあきらめる人も多い
2019年の第53回試験の中で、注目して欲しい数字があります。
それは、「願書提出者数」と「受験者数」の比率です。
「願書を提出した人のうち、何人が試験会場に現れたか」を計算してみます。
- 1科目受験者(通関業法のみ):160 / 177 = 90.3%
- 2科目受験者(通関業法と関税法):567 / 668 = 84.8%
- 3科目受験者:5,661 / 7,816 = 72.4%
つまり、3科目受験を申し込んだ人のうち、約28%の人は試験を受けずに辞退してしまうのです。
これには、ちゃんとした理由があります。
少ない受験科目で受けられるのは5年以上「通関業務に従事した」人だけ
「受験資格がない」と純粋に呼べるのは「3科目受験者」だけです。
なぜなら、2科目受験者、1科目受験者は以下の条件を満たす人だからです。
この〇〇には15年、または5年が入り、それぞれ、以下のように規定されています。
- 通算15年以上の従事者:2科目免除、つまり1科目受験で OK
- 通算5年以上の従事者:1科目免除、つまり2科目受験で OK
- 詳しくはこちら:【通関士試験】科目免除の条件|5年の実務経験だけで……
つまり、通関業者に勤める人は、通関士資格を取得すれば一般的に5千円から2万円程度の手当が会社から付きますから、それだけモチベーションが高い人々です。
ただし。
それだけではない「別の事情」もあります。
通関士試験は、3科目目の「通関実務」がダントツに難しい
通関業務未経験者、つまり受験資格の要らない「3科目受験者」が3時限目に受けなければならないのが「通関実務」です。
ただ、この「通関実務」は先の2科目「通関業法」「関税法、関税定率法他」と比べると、ダントツに難しい。
理由はいくつかあるものの、もっとも大きい要素は以下の二つです。
- 先の2科目の最初にある「選択式の穴埋め問題」がないので、点数を積み上げにくい
- 互いに関連した問題が試験の後半に出されるので、芋づる式に(ほぼ)全滅する危険がある
したがい、3科目目の準備が十分にできていない人は当日、試験会場に向かうのも「つらく」なってしまうのです。
通関士に受験資格は要らない、だから簡単ではない試験になっている
通関士にチャレンジするのに特に「受験資格」は要らない、とわかりました。
一方、「試験免除」を活用できない人にとって厳しい試験であることも事実なのです。
実際、3科目受験者において「3科目受験の合格者(708人)」を「願書を提出した人(7,816人)」で割ると、実に 9.1% ですからね。
これは、「当日、何らかの理由で受験をあきらめた人」まで含めた「本当の」合格率です。
ここまで詳しい受験者、合格者の内訳が発表されるのは、実は2019年が初めてです。
ただ、このような状況であることは、受験番号の並びからおおよそわかっていました。
- 詳しくはこちら:通関士試験の合格率の真実 受験番号と科目数の関係とは?
3科目受験者は、よほど合格率の高い年を除いて10%かもう少し低い合格率の中で戦っているのです。
逆にいえば、3科目をバランス良く勉強できている人も少ない
とはいえ、そこまで悲観する必要もありません。
見かけの合格率は低いものの、通関士試験は3科目あることから、最後の「通関実務」までしっかり準備ができている人も実はそれほど多くもないのです。
ぼくの1、2年目がそうでした。
1、2科目目は合格ラインに到達しているのに、3科目目がまったく届かない。
その段階で「あとは3科目目だけだ」と覚悟を決めて勉強ができるなら、合格は近いところにあります。
逆に、そこまで到達していないなら、もう少し時間がかかるでしょう。
試験勉強を続けていると、さまざまな不安があるとは思います。
思いますが、ぼく自身は「通関士試験」にはまだ将来性があると考えています。
モチベーションを維持するためにも、そこは信じておかないと、ね。
- モチベに悩んでいるなら:通関士試験に将来性はないの?|通関業者とそれ以外の職種の現実
また、効率的で価格も安い「動画で学べる通信講座」についても、別の記事にまとめています。