こんにちは。
とあるメーカーで海外営業に関わって20年超の神高(かんだか)です。
働きながら通関士資格に合格しています。
通関士試験の試験内容について知りたいですか?
試験内容は税関のホームページで確認できます。
サイトのコンテンツ(内容)は徐々に充実してきていて、近年は過去問だけではなく、正答、配点まで公表してくれています。
もし、通関士試験に挑戦するのであれば、できるだけ早く、過去問を入手して試験内容と問題構成を意識することをオススメします。
というのも、難しい科目(具体的には「通関実務」)は得点しにくい試験内容になっているからです。
この差異は、通関士試験のキモ、コツといっても良いでしょう。
「通関業法(1科目目)」「関税法等(2科目目)」と同じ感覚で「通関実務(最終科目)」の問題に入ると、ケガをします。
通関士の試験内容ってなぜ……?|問題構成に隠された秘密とは

通関士試験は3科目で構成されています。
通関業法 | 50分 | 選択式・10問 択一式・10問 | 35点 10点 |
関税法等 | 100分 | 選択式・15問 択一式・15問 | 45点 15点 |
通関実務 | 120分 | 輸出申告・1問 輸入申告・1問 選択式・5問 択一式・5問 計算式・5問 | 20点(申告関係) 25点(その他) |
ただ、名称で混乱するのですが「選択式」には2種類あります。
通関士試験の問題構成~「選択式」の二つのパターンとは?
通関士試験の問題構成の中で「選択式」には二つのパターンがあります。
「穴埋め式」タイプと「正しいものを全て選べ」タイプです。
この二つの「選択式」は、「正しいものを選ぶ」ということ以外は全然違うスタイルとなっています。
通関士試験 「選択式」のパターン①|穴埋め式の問題
通関士試験で「選択式」と呼ばれる問題には2種類あり、最も簡単、かつ正答率も高いのが「穴埋め方式」の選択問題です。
過去問は税関のサイト、通関士ポータル(関税協会)なら無料で閲覧できますから、眺めてみてください。
「通関業法」「関税法等」の最初の5問(大問5つ)は穴埋め式になっているのがわかりますよね?
そして、設問の下に選択肢が①(まるいち)~⑮(まるじゅうご)あります。
だから「選択式」と呼ばれるわけですが、これらは実質、二択、三択、せいぜい四択くらいになっています。
というのも、入る可能性がある選択肢は限られるからです。
【通関業の相続について】被相続人の死亡後( ?? )、その承継について財務大臣に承認の申請をする
という記述なら、解答欄に入るのは、十中八九「日数」だろう、と予想できるでしょう。
そして、選択肢を見ると確かに「30日以内に」「60日以内に」「90日以内に」の3つが用意されています。
つまり、この中から正解を「選択」できればポイントがもらえ、合格に一歩、近づけるわけです。
このタイプの問題は大切な得点源ですから、目いっぱい、スコアを稼ぎましょう。
(ちなみに、正解は「60日以内」です)
通関士試験 「選択式」のパターン②|「正しいものを全て選べ」タイプの問題
通関士試験で「選択式」と呼ばれる問題の2パターン目は「正しいものを全て選べ」タイプです。
その記述の正しいもの はどれか。すべてを選び、その番号をマークしなさい。
このような指示が出たその下には5つの選択肢が並んでいます。
それぞれの記述が「正しい」か「誤っている」かを全て選ぶとポイントが得られます。
なんとなく、簡単そう。
そうですか?
よく考えてみてください。
「穴埋め式」なら二択~から一つの正解を選べば「ポイント」がもらえました。
目隠しして正解を選ぶ確率は 1/2 から 1/4 です。
しかし、この「選択式(正しいものをすべて選べタイプ)」は同じ「選択式」でもポイントをもらうまでの道のりが長い。
ポイントゲット(得点)までの枝分かれを全て考えれば、2の5乗( 1/2 x 1/2 x 1/2 x 1/2 x 1/2 )、つまり32ある選択肢の中からたった一つの正解を選ぶ問題です。
そりゃ「穴埋め式」よりも正解率が悪くなるはずです。
選択式の「一つ一つの選択肢が優しかったとしても、得点につながりにくいのですから。
選択式よりもやっかいな「択一式」|やっかいなのは「ない場合はゼロをマーク」
通関士試験の「択一式(たくいつしき)」は「選択式」よりもさらに厄介です。
というのも、ゼロをマーク、というケースがあるからです。
問題文の中では、5つの選択肢とともに、以下のような出題がなされます。
正しいもの はどれか。一つを選び、その番号をマークしなさい。なお、正しい記述がない場合には、「0」 をマークしなさい。
誤っているものはどれか。一つを選び、その番号をマークしなさい。なお、誤っている記述がない場合には、「0」 をマークしなさい。
「正しいもの」「誤っているもの」いずれも、一見「5つの選択肢から一つを選ぶ」問題のように思えます。
正解を選ぶ確率は「1/5」。
しかし、実際は違うんですよ。
全て「正しい」あるいは「誤っている」という「0」のケースまであり得るのですから、5つの選択肢全てについて正しいか、正しくないかを判定しなければなりません。
見かけ上は6択ですが、実際に正解にたどり着くルートは 2の5乗、つまり「32通り」となります。
しかも、文章を読んでいるうちに「あれ?今、正しい選択肢を探していたんだっけ?正しくない記述を見つけるんだっけ?」と頭が混乱しがちです。
いかにも正しそうな「文体」で書かれた文章に対して、「誤りだ!」と判定するのは至難の業ですからね。
また、そう判定した選択肢の数字に「〇」なんて付けたら、頭の中で「〇」「×」を混同します。
だから、ぼくは試験本番で正しいと判断した選択肢には「C」を、誤っていると判断した選択肢には「W」を書くようにしていました。
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それぞれ、Correct(コレクト、正しい)と Wrong(ロング、誤り)の頭文字です。
少しでも冷静さ、客観的にみる姿勢を保つためです。
そして、最後まで正誤を判定した後、最初の問題文の「正しい」「誤っている」を再確認して、マークしました。
この方法、他であまり聞いたことがないので、「C&W カンダカ・メソッド」とでも名付けましょうか(笑)。
候補の番号に「〇」を付けるのではなく、選択肢一つ一つの正誤問題と考えると、より冷静に対処できます。
理にかなっているな、と思えるなら、あなたも C と W による整理を模擬試験などで試してみてください。
まあ、最後に2つの選択肢が残って「エイヤー」で選ぶこともよくありましたけどね。
かなり勉強をしたつもりでも、「二つまでは絞れる、でもその先は……」ということは、選択式②、択一とも、よくあります。
でも、二択まで行けたら、その問題は「正答率50%」です。
通関実務の選択式、択一式は「鬼の住処」|点を取るなら「申告」と「計算式」
3科目目の「通関実務」は、さらに輪をかけて難しい科目、試験内容です。
ですから、「通関業法」「関税法・関税定率法等」で得点できるようになったからといって、決して油断してはいけません。
特に条約や基本通達まで問われるケースがある「通関実務」の「選択式②」と「択一」には鬼が住んでいます。
ちょっとやそっとの経験値では、得点させてくれる問題構成ではありません。
だから、個人的には「通関実務(3科目目)」は「輸出申告」「輸入申告」「計算式」で得点しないと合格の望みはないだろう、と考えています。
穴埋めの「選択式」が通関実務では1問も出されないのですから、やむを得ません。
得点を底上げするなら、「輸出申告」「輸入申告」「計算式」です。
この3つの分野は、過去の本試験や公開模試(日本関税協会や TAC など)を繰り返し解けば、パターンをつかみやすい。
特に「計算式」は意外と出題パターンが少ないので、通関士試験の準備を始めてすぐの時期から取り組む価値があります。
たとえば、2020年の「計算式」でも定番の更正に関する問題が出されています。
関税法第 7 条の16の規定に基づき更正されることとなった。当該 更正により結果として過納金となる関税額を計算し、その額をマークしなさい。
しかも、「計算式」の配点は2点ですからね。(択一式は1点)
数字、計算というだけで苦手意識がある方もいらっしゃるかも知れませんが、逃げるのはもったいないですよ。
通関士の試験内容ってどんな感じ?|問題構成に隠された秘密とは|まとめ

ここまでの内容をまとめておきしょう。
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あらゆる資格試験で言えることですが、試験内容、問題構成は勉強を始めて早い時期に知っておくべきです。
最初は、本試験の問題が解けなくて構いません。
というか、いくら賢くても、準備なしで満足に解けるわけがありません。
通関士試験は国家資格に関するペーパーテストであり、出題者側(税関)が
- 「少なくとも、この試験を突破するレベルの人が通関業者で窓口をして欲しい」
- 「3科目受験者なら、合格率10%、せいぜい20%となる難易度にしよう」
と練って用意した試験です。
ですから、たとえ関連する業界にいたり、貿易を仕事にしていても、通関の実務に関わっていない限り、初学者はわけがわからなくて当然です。
勉強を始めるにあたって、過去問の意味が分からなくても、悲観することはありません。
近年、税関は通関士試験の正解と各問題の配点を公表するようになりましたから、税関の公式サイトで確認しておきましょう。
どんなに高額なスクール、通信教育を選んだとしても、本試験、特に過去問と向き合わなければ、合格は厳しいですからね。