こんにちは。
貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
海外営業部門に属する若い後輩から「英文契約、特に NDA(秘密保持契約書)の基本を教えてください」とお願いされました。
売買契約書( Sales Contract、Purchase Contract )ならある程度、慣れてはいるものの、NDA となると実務経験が少ないので、適当なことを伝えるわけにもいきません。
機械製品や電子部品、あるいはそれほど大きくないプラントなどの貿易実務に長けた方が書いた英文契約書のテキストはないかな、と思って調べたら、ありました。
ということで、今回、学びなおしのために通読した一冊をご紹介します。
目次はこのような感じです。
第1章 契約書で特に頻繁に使われる専門用語と契約書の全体像
第2章 英文契約の基本的な型
第3章 売買契約書を読みこなす
第4章 秘密保持契約書を読みこなす
第5章 技術ライセンス契約を読みこなす
第6章 一般条項を読みこなす
第7章 契約書のチェック、修正、交渉、および紛争対応
この1冊で売買契約書についてもあらためて整理できましたし、それ以前の「英文契約の基本的な考え方」についてもコンパクトに学べる一冊です。
時間がない人は、せめて第1章と第2章だけでも眺めてみてほしい。
2018年11月14日発行と日が浅いからか、アマゾンのそれほど評価数は多くないですが、これから何年経っても、「名著」として貿易(輸出も輸入も)、海外営業、法務などで頑張っている人には評価される本だと思います。
読後に、お礼も兼ねて著者の本郷貴裕(ほんごうたかひろ)さんと、Facebook でやりとりしました。
テキスト内のコラムまで面白いので、感想をお伝えしたら、「実はそちらをメインで書きたいくらいで……」とのこと。
実際に出版社でも好評だったのでしょう、歴史上の人物のエピソードを独特の切り口で解説する「歴史が教えてくれる働き方・生き方」というビジネス書も書かれています。
2022年4月16日 追記)
さすがに Amazon でも高評価を得ていますね。
今日時点で 4.4/5.0(99件のレビュー) です。
BtoB の実用書で、ここまで好意的な反応を得られることは珍しいでしょう。
長年、貿易実務や海外営業に関わってきた自分から見ても、良い評判を得られる内容と思います。
特に「売る側(売主)」にとって、より深い理解が得られる内容です。
それから、この本をテキストとしたオンライン講座も始まりました。
≫【公式】本郷貴裕さんの英文契約書講座(無料おためしあり)はコチラ
無料トライアルとはいえ、まるでテキストを一緒に読んでくれているようで、おすすめです。
英文契約書の構成を本でも学べるの?|初心者にもオススメできる本郷貴裕さんの書籍と講座とは
もし、書店で立ち読みできるなら「第1章」「第2章」だけ読んでみてください。
amazon Kindle の「試し読み」であっても、最初の数ページを読めます。
- 第1章 契約書で特に頻繁に使われる専門用語と契約書の全体像
- 第2章 英文契約の基本的な型
第1章は「英文契約書」の特殊性、第2章は具体的な事例を交えた短い文や表現が解説されています。
特にこの第1章は「英文契約書」あるいはその手前の「英文見積書」や社内外の「打合せ記録類( MOU を含む)」を作成する際にも、とても参考になります。
というのも、「大手商社」や「大手メーカーの法務部門」などでなければ、英文契約のためだけにセミナーに通うことは少ないだろう、と思うからです。
特に、扱う製品が限られている中小企業や専門メーカーの場合、先輩たちの見様見真似(みようみまね)でもなんとかなるものだからです。
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そりゃ、契約よりも「商品」「製品」や「取引先」に関わる知識の方がだんぜん、大切ですからね。英文契約書なんて、後回しですよねぇ。
とはいえ、たとえば、
- なぜ、英文契約書では shall がたくさん使われているの?
- なぜ、can が使われるはずの場所で may が使われているの?
- 単数形の damage と複数形の damages の使われ方が違うようだけど、なぜ?
といったレベルの疑問さえも、特に意識せずに英文の見積書や契約書をやり取りしているのでは、やっぱり心もとないでしょう。
そして、このくらいの知識は、この本の第1章、第2章を読むだけで整理できるのです。
オンライン講座「ゼロからはじめる英文契約書講座」が始まりました|講師は本郷貴裕(ほんごうたかひろ)さん(著者ご本人)
テキストだけでなく、オンラインで学びたい人に朗報です。
「ゼロからはじめる英文契約書講座」が2022年4月から始まりました。
講師は、本郷貴裕(ほんごうたかひろ)さんご本人。
司法試験や弁理士試験など、各種講座を開講している「資格スクエア」という大手オンラインスクール内の講座として、です。
約25時間としっかりボリューム(学習量)があるので、自費で受講するにはちょっとお高め、かな。
でも、
「自己投資として本格的に英文契約書に取り組みたい」
「自分は向いているので、社内で英文契約の専門家になりたい」
という方は、「おためし無料講義」が用意されているので試してみましょう。
動画視聴中にメモ(レジュメ)が取れるので、特にパソコンで学ぶときには、自分の頭の整理をしながら受講できます。
スペルをチェックする機能が付いているので、自分でメモする時にも楽です。
それから、学習を始めるとランキング登録ができます。
近い境遇の人が継続できているのを見て、モチベーションにできます。
そして、「これなら続けられそうだ」と思えるなら、上司を通じて福利厚生の一環として勤務先にサポートをお願いしてみましょう。
「勉強した内容を同僚や後輩に教える、という形で還元するので、ぜひ投資と思って資金援助してください」
なんて熱く伝えたら、おそらく認めてもらえます(笑)。
とりあえず、無料レッスン(ぼくも受講しました)だけでも、試す価値は十分にあります。
- なぜ、英文契約書は難しいのか?
- 契約とは?
まで、PDF の資料とともに無料で受講できます。
英文契約書の知識で、英文の見積書や仕様書なども読みやすくなります
契約書の中身を確認して、客先、仕入先と交渉するための対案( counter-proposal )を作成するのは、法務部だったり、社外の法律事務所のケースもあるでしょう。
ただ、営業部門やあるいは一緒に動いている貿易実務の部門であっても、英文による契約書の作法に慣れておくことは、仕事の幅を広げるのに役に立ちます。
なぜなら、見積書、あるいはインターネットで提供されるサービスにしても、基本的な「契約書っぽい」英文に触れておけば、意味を理解しやすくなるからです。
英文契約書の作法、たとえば、
- shall は「義務」を表す
- may は「権利(可能であること)」を表す
- 複数形のdamages は損害賠償(額)を表す
を知ることで、客先に出す見積書の英文の意味も理解できるようになります。
これは、アフターサービスをしている部門、クレーム処理を担当している部門、あるいは設計や開発をしている部門でも同様です。
かなり小さい企業であっても、部品や半製品を海外から購入する、あるいは逆のケースはたくさんありますのでね。
でも、そこで使われている「英文のパターン」は、それほど多くはないのです。
英文契約書のサンプルは特に使われる「3つ」に絞って収録されています
「はじめてでも読みこなせる英文契約書 (Asuka culture) 本郷貴裕 (著)」のもう一つの特徴は、英文契約でもっとも多く使われる「3つの契約書」に絞って具体的な解説をしているところにあります。
その3つがこちら。
- 売買契約書
- 秘密保持契約書
- 技術ライセンス契約
これらと、共通して必要となる可能性がある「一般契約条項」に絞って、構成や具体的な英文(項目によっては数パターンの文例と解説あり)を載せているのです。
大企業であれば、法務部門があり、その中にある英文契約を専門とするチームも複数名で構成されていることでしょう。
しかし、中小企業の場合は、そこまでの資金、資源を投入できません。
兼務x兼務x兼務……で、場合によっては「営業」と「調達」までも兼務して、英文契約書の中身のチェックも必要に応じて外部の弁護士さんにお願いする、というケースもあることでしょう。
製造業や商社、特に限られた品目を扱う企業でもっとも使われるのがこれら3つであることを、著者の方はよくご存じなのです。
著者の「本郷貴裕(ほんごうたかひろ)」さんの経歴も興味深い
最後に、今回の内容をまとめておきましょう。
著者の本郷貴裕(ほんごうたかひろ)さんの経歴は、アマゾンで紹介されています。
- 一橋大学法学研究科修士課程修了。
- 株式会社東芝で企業法務として海外に発電所を建設するプロジェクト、国際仲裁案件、海外企業買収案件(M&A案件)等多数の海外案件に携わる。
これだけで「なんだ、法律の専門家じゃん、やっぱり本書も専門的で難しいんじゃ……」と心配しないでください。
公式のウェブサイトでは、その前の経歴も紹介されています。
- 宮城県仙台市出身 1979年生まれ
- 東北大学工学部機械知能系卒業
ぼくよりも5歳若く、大学の専攻も「工学」でいわゆる「理系」なんですよね。
おそらく、就職してから幅広い職種を経験されていると想像します。
また、著書の中で「英語が苦手で、TOEIC も社会人になった頃は400点代で……」といった趣旨のことが書かれています。
なるほど。
この本のわかりやすさ、構成のシンプルさにも合点がいきます。
それから、途中にある「コラム」も実務者のホンネを知ることができるので、仕事上のヒントにもなるでしょう。
あらゆる英文、そして解説している単語のレベルも、不慣れな人に適切なものです。


「一人で英文契約書を作成したり、校正したりする必要はないけれど、社内外の専門家と打ち合わせができるレベルになりたい」
という目標を持っているのであれば、この一冊を何度か読むだけで到達できると思います。
英文契約周辺の分野に取り組みたいと考えている、すべての方にオススメできる入門書です。
「いや、まだ費用はかけたくない!」ということであれば、「ゼロからはじめる英文契約書講座」の無料おためし(特に第01回の「契約とは?」)だけでも試してみてください。
貿易実務や海外営業に属している人であれば、日々の仕事で触れる「英文契約」の要点を理解できます。




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