ある職場の後輩から、「この在来船の見積書にある Hook to Hook って何ですか?」との質問を受けました。
たしかに、コンテナ船による輸送がメインだと目にすることがない用語。
在来船(ざいらいせん)は、不定期船(ふていきせん)、英語では Conventional Vessel (コンベンショナルベッセル)とも呼ばれるタイプの貨物船です。
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「コンテナ船(つまり、定期船、ライナー)」との対比で、「不定期船、トランパー」とも呼ばれるんですよね。
その運賃の見積書に「 Hook to Hook (HH、フックトゥーフック) 」と書かれていることがあります。
この HH、「 Berth Term (バースターム)」とほぼ同じ意味を表しています。
クレーンが装備された在来船で使われる「 Hook to Hook 」
在来船は「昔ながらのスタイルの船」ですから、船の中央に貨物を積む場所(船倉=せんそう)があります。
そして、その船倉を囲むように、いくつかのクレーン(本船ギア、とも呼ばれます)を持つ船があります。
先ほどの Hook to Hook(HH)は、こういった「本船ギア」を持つ船における「 Berth Term (バースターム)」、つまり「船が荷役を手配する条件」です。
Hook はクレーンの先のカギ(ワイヤーを引っかける曲がった)部分を指しますから、イメージしやすいですよね。
「Hook をかけられるところまで貨物を持ってきてくれば、あとは船側で対応しますよ」という条件です。
船にクレーンが装備されているので、「船側の都合が良いタイミング」で貨物を積む(荷役=にやくをする)ことができる、というわけです。
ですから、「クレーンを持つ在来船」は、コンテナ船のようなBerth Term (バースターム、BT-BT)でも対応できるのです。
クレーンの無い船が 「 Hook to Hook 」を提案できないわけ
「ほぼ Berth Term」で「ほぼ」と先にお伝えしたのは、「個別の事情」があるためです。
「クレーンを持たない」在来船も日本と中国、日本と韓国などの間では多数、行き来しています。
しかし、これらの船は、基本的に「 Hook to Hook = Berth Term、BT-BT」の見積を出すことができません。
想像してみてください。
あなたが、中国と日本を行き来する船の船長だとします。
その時、いままで行ったことがない港を仕向地(しむけち、目的地)とされたら、Berth Term を提示できるでしょうか?
もし、Berth Term を実現しようと思えば、荷揚げ(にあげ、荷物の目的地)する港のクレーン設備やルールを完全に理解しておかねばなりません。
しかし、港から港に貨物を運ぶ仕事を生業(なりわい)としている船には酷ですよね。
「Berth Term」 は荷役を船側が手配する条件ですから、クレーンを持たない船は陸側によほどしっかりした「協力者(関連会社や代理店など)」がいないと厳しすぎます。
仮にできたとしても、「競争力のある価格や条件」を提示してもらうことは期待できません。
だから、これらの船には Berth Term ではなく、「荷役を陸側が用意する条件」である FI-FO (フリーイン、フリーアウト)が使われるのです。
なお、貨物が特殊で専門のチームを荷主側(メーカーなど)が用意しないと積み下ろしできないケースなども FIO が用いられます。
在来船を使う時点で「重量物」「長さが12mを超える長尺のもの」「高さが2mを超える背の高いもの」など特殊な貨物ですから、荷主、船会社、乙仲とで十分に話し合いがなされます。
Free-In、Free-Out は FI-FO と略される「荷役は荷主(にぬし)手配」
Free-In、Free-Out は FI-FO あるいは FIO とも略される貿易用語の一つ。
Free は「荷役(にやく、貨物の積み下ろし)を船は手配しない」という意味です。
- FI-FO の FI (先の2文字)は「貨物を積む場所では Free-In である」という契約条件
- FI-FO の FO (後の2文字)は「貨物を降ろす場所では Fee-Outである」という契約条件
船が手配しない( free )なら、陸側(荷主)が手配するしかありません。
なお、日本から輸出するときが Free-In、現地(海外)の港が Free-Out ならば、FI-FO と書きます。
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ちなみに、両方の港ともバースタームなら BT – BT と書きます
これらは、INCOTERMS ( インコタームズ、FOB や CIF )とは関係がありませんし、ルールの中で説明もありません。
まとめ:大手船会社の在来船とセミライナー|輸送方法の検討
大手船会社(日本郵船系、商船三井系、川崎汽船系、イースタンカーライナーなど)が扱う「在来船」の多くは「クレーン」を装備した大型船となります。
たとえば、30トンクレーンが2基装備されていてあわせて50トン以上の貨物を扱える、といった状況(二つのクレーンを同時に使うことをタンデム、と呼びます)。
これらの船は、荷動きが多い地域間に関してはセミライナー(ときどき、定期船)という形態で運用がなされていることがあります。
ここでセミ、は「半分」とか「ときどき」という意味。
ライナーは「定期船」を意味します。
つまり、「コンテナ船のように決まった曜日に港に入ってくるほど正確ではないけれど、だいたい定期的に決まったエリアで船を回しています」というサービスです。
これらのサービスは「チャーター船(完全にオーダーメード)」と比べると大幅に低い運賃を提示してくれる可能性がありますから、コンテナに入らない貨物を運びたいときは
- セミライナーの在来船
- コンテナ船のブレイクバルク扱い
の二つをあたってみると、解決策を見つけやすいでしょう。
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