輸出貿易管理令別表第1の英語版はどこに?|外国為替法

貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。

日本から貨物を輸出するとき、税関の「輸出許可」以外に経済産業省など「その他の省庁」の「許可」を得なければ、輸出できない貨物があります。

輸出規制は「動物の保護(ワシントン条約など)」「環境保護(モントリオール議定書など)」や「安全保障(国の安全を守ること)」など、しくみは様々です。

それらの中で特に「安全保障」に関係する「許可が必要な」貨物は、「リスト規制」と呼ばれ、「輸出貿易管理令別表第1」という表(一覧)にまとめられています。

 

もしご存じなければ、こちらをご覧ください。10分ほどのビデオ、JETRO 謹製です。

安全保障貿易管理 ‐輸出品・技術の軍事転用を防げ!‐

 

あなたは経済産業省の許可を取得しての輸出、経験はおありですか?ぼくは、経験ないんですよ。

とはいえ、メーカーの実務担当者ですから、非該当証明を作成したり、リスト規制の記載内容を眺めたりすることもあります。

 

リスト規制は「武器」そのものから始まって、「武器の製造や開発に使えそうな素材、原材料や装置」が並んでいます。

注:この規制は、いわゆる「ホワイト国(ほわいとこく)」であるかどうかで許可が不要になることはありません。「リストに該当するかどうか(入っているかどうか)」で判断します。

この表、製造業、あるいは機器を輸出する商社であれば、自分たちが取り扱う商品についての「非該当証明(ひがいとうしょうめい)」発行、といった手続きや書類などで常識的な範囲なのですが、時々、海外の顧客や問い合わせ先にこの内容を伝えたい時があります。

ただ、いくら探しても「リスト規制」の「英語版(公式)」が見つかりません。

こちらのエクセルファイルの英語版があれば助かるのですがね。

「リスト規制の内容そのもの」を英文で書きたいときがありますから、対策をご紹介します。

輸出貿易管理令別表第1の「元ネタ」は「海外との合意事項」

輸出貿易管理令別表第1を見ていただければわかるとおり、非常に専門的な内容や表現を含んでいます。

このリストは日本独自でゼロから作られたわけではなく、ワッセナーアレンジメントなど国際的な枠組みが元ネタ。

具体的には、以下のような対応関係があります。

  • 第1項:ワッセナーアレンジメント、武器輸出三原則 他
  • 第2項:NSG(原子力供給国会合)
  • 第3項:AG(オーストラリアグループ)
  • 第4項:MTCR(ミサイル関連貨物技術輸出規制)
  • 以降、ワッセナーアレンジメント

ただ、英文の記述を確認したいだけなら「 EU 規制」と呼ばれる「 Export Control 」は多くの品目で表現が一致しているので、英文表記を考える上で参考になります。

たとえば、こちらの EU 公式サイトの記載をながめてみてください。

http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2018/october/tradoc_157453.pdf

リスト規制によく似た表現、構成になっているでしょう?

せっかくおこしいただいたので、一つの具体例をご紹介します。

輸出貿易管理令別表第1と「EU 規制」の対比事例【日本語】

コンテナ船

圧力計測器を輸出しようと考えているとします。

そのとき、「きわめて精度の高い圧力計測器」は、武器(特にミサイルなどの大量破壊兵器)をつくるのに使われてしまう、あるいは「転用(本来の使い方以外で性能を出す)」されてしまう心配が(おそらく)ありますから、規制の対象になっています。

注)「圧力計」も「大量破壊兵器」も、まったくの専門外なので、あくまで推定です。

輸出貿易管理令別表第1の第一条四十五には、このように書かれています。

  • ロ 一〇ギガパスカルを超える圧力を測定することができる圧力測定器
  • ハ 一〇ギガパスカルを超える圧力を測定することができる水晶圧電型圧力センサを用いた圧力変換器

どのようなものかわかりませんが、「ギガパスカル」という数値から推定すると、おそらく(ロ)は一般的な家庭や工場で使用されるレベルをはるかに超える圧力を測定できる装置のはずです。

たとえば、家庭用の圧力鍋はどうでしょうか?

高圧(日本最高クラスの圧力)、とうたっていて、「144kpa(キロパスカル)」ですからね。

神高
神高

キロ→メガ→ギガ、と上がるごとに、x 1,000 ですから、「ギガ」は「キロ」の100万倍です

そして、(ハ)は、その機能が付いた「圧力変換機」を「圧力測定器」として使わせない(転用させない、dual-use 防止)ために、この文言を入れている、と推定されます。

輸出貿易管理令別表第1と「EU 規制」の対比事例【英語】

もし、EU 規制をもとにしているなら、「圧力測定器」「圧力変換機」の英語、あるいは「 10 GPa 」などのキーワードで、先ほどの EU 発行の PDF 内を検索すれば、該当する表現が見つかるはずです。

実際に、やってみましょう。

http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2018/october/tradoc_157453.pdf

※ 「 Ctrl 」ボタンを押しながら「 f 」キーを押すと、検索窓が出ます。

「 10 GPa 」のキーワードで、すぐに見つかりました(61ページ)。

  • 6A226 Pressure sensors, as follows:
  • a. Shock pressure gauges capable of measuring pressures greater than 10 GPa, including gauges
    made with manganin, ytterbium, and polyvinylidene fluoride (PVDF) / polyvinyl difluoride (PVF2);
  • b. Quartz pressure transducers for pressures greater than 10 GPa.

辞書を調べると、「Quartz = 水晶」「 transducer = 圧力変換機」なので、これで間違いないでしょう。

細かいところは、適宜、英文を修正してください。

この文言が必要な人は、おそらく業界の人ですから。

2019年8月5日追記:ホワイト国表記に関する経済産業省のプレスリリース

2019年8月2日付のプレスリリースが経済産業省から発表されました。

  • 輸出貿易管理令別表第3の国から大韓民国を削除するための政令改正
  • 輸出管理上の国別カテゴリーを「グループA」から「グループD]とすること
  • フッ化ポリイミド・レジスト・フッ化水素に限らず、厳正に対処すること

などが触れられています。これにより、「ホワイト国」の名称は使われなくなりました。

2019年8月2日追記:「非ホワイト国」は「グループB~D」へ

日本経済新聞で、以下の内容が報道されました。

「これまでは輸出管理制度において優遇措置が得られる「ホワイト国」と、その他の「非ホワイト国」の2つの名称を用いてきたが、今回「ホワイト国」を「グループA」に名称変更し、「非ホワイト国」は「グループB~D」の3つのカテゴリーに分ける。韓国は今回の政令改正で、グループAからグループBに変更となる。」

ということは、韓国を含むほとんどの国は「グループB」と「グループC」で運用される、ということになりそうです。

「グループC」の国のイメージがつかみにくいですけれど、Cの国は「安全保障上の」懸念が高まればCとDと行ったり来たりすることになるのでしょう。

2019年7月28日追記:韓国への輸出が規制される3つの貨物について

最近、韓国と日本の間で政治問題化されている「輸出が規制される」と報じられている貨物は、以下の3つです。

  • フッ化ポリイミド( Fluorinated polyimide ) 5-17 「ふっ化ポリイミド又は……」
  • レジスト( Resist materials ) 7-19 「レジスト」
  • フッ化水素( Hydrogen fluoride ) 3-1 「軍用の化学製剤の原料となる……」

※ ここで、「 5-17 」は「別表第一の第5項(17)」を表しています。

以下で参照する「 EU 規制( PDF )」にも記載があります。興味があれば、検索してみてください。

結局、今回の騒動があるにせよないにせよ、シンプルにまとめると、原則は以下です。

  1. スペック(仕様=科学的な組成など)が該当するものであれば「リスト規制」が適用される。
  2. スペック上は該当しないと「明らか」でも、「用途やエンドユーザーが不明確であり、大量破壊兵器に使われる可能性がある」と判断されれば「キャッチオール規制」が適用される。

今回、韓国が「ホワイト国」から除外されれば、2の部分が「厳格」に運用されることになります。

とはいえ、その「厳格さ」も他の東南アジア諸国なみになるだけのはずですが……。

注)関わっている業界が全く違いますから、化学物質の該否判定はよくわかっていません。あくまで推測です。

まとめ:顧客や問い合わせ先への返信に有用

ここまでの内容をまとめます。

いずれも専門性が高い分野なので、あくまで事例としてお読みください。

顧客や問い合わせ先への返信に使えるレベルの英文を作る際にはお役に立てる内容でしょう。

もし、ぼくが「輸出貿易管理令のリスト規制に該当するから……」を英文を書くとすれば……

Please note that the following items are under the “list-control” of the Japanese government export control system.

この下にリストを箇条書きしておけば、相手に「許可なく輸出できない」事情までは、わかってくれます。

あとは、あなたが扱う商品やサービスに応じて、「代替品を提案する」「経済産業省に問い合わせる」「用途や照会してきた相手をさらに調べた上で、取引をお断りする」などといった動きになるでしょう。

さて。

メーカーや商社に勤めていると、その「機器」や「使い方」、「検査項目」「図面」などの英語表現には慣れていきます。

しかし、関連する法令その他、少し日常の業務から外れたとたんに、使える言葉や表現が極端に減ってしまい、中学生程度の英文も書けなくなってしまったり。

神高
神高

白状しますけど、ぼく自身、そんな経験をよくします

英検や TOEIC なんて資格も、それぞれの分野の専門用語と組み合わせてこそ、生きます。

「車輪の再発明」などというフレーズを持ち出すまでもなく、使えるものは迷わず使いましょう。

ゼロから書く必要はありません。

その素直さが、結局は「学び」につながります。

管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年9月生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

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