こんにちは。
とあるメーカーで20年以上、貿易実務を担当している神高(かんだか)です。
職場の仲間から「コンテナのカットって何ですか?」との質問をもらいました。
コンテナ輸送の貿易実務に携わるようになると、ほぼ毎日、コンテナ搬入のCut-Off、カット日を意識せざるを得ません。
実は貿易実務の担当者だけでなく、物流や製造部門で出荷を担当する人も、このルールを知っておけば役に立ちます。
ということで、今回は「 Cut-off、カット日」と、コンテナカットに影響を与える「24時間ルール」について一緒にみていきましょう。
ETD、ETA と CUT は関連がありますから、疑問があれば、あわせてご覧ください。
今回の記事を読んでもらえば、以下の内容をご理解いただけます。
- コンテナのCut-Off(カット日)と24時間ルールの関係
- 24時間ルールの原則と例外(欧州から米国、中国まで)
- 日本にもある24時間ルール(輸出がメインだと気付きにくい)
貨物の搬出日に一番詳しいのは、実際に商品・製品を準備・梱包するチームですからね。日程、コストの面で余裕が生まれるかも知れませんよ。
【貿易】コンテナのCut-Off(カット日)と24時間ルールとは?
コンテナ船は定時運行(計画通りに入港、出港すること)をとても重視しています。
旅客飛行機の定時運行同様、顧客(荷主)獲得には運航スケジュールの安定が欠かせないからです。
その目的を達成するため、コンテナ船を運航する船会社は、Berth Term (スケジュール管理を徹底するため、荷役料込みで海上運賃を見積る条件)で貨物のスケジュールを船側からコントロールしています。
そして、「 CY (= FCL)へのコンテナ搬入」と「 CFS (= LCL、コンテナに混載、相乗りさせてもらう作業場所)への貨物搬入」に締め切りを「船会社が」設定しています。
- CY = Container Yard (バース【船が入る場所】のすぐそば)= FCL (Full Container Load) を置くところ
- CFS = Container Freight Station (港に近い倉庫や作業場)= LCL (Less than Container Load、小口貨物)を置くところ
「これらの場所に貨物を搬入(持ちこむ)締め切り」を、海外では「 Cut-Off 」、日本では「カット日」(それぞれ、CY カット、CFS カットとも)と呼んでいます。
Cut-Offの運用は厳格です。
1日でも過ぎれば、予定とは違う、遅い便に積まざるを得ません。
日本では、「原則として」CYカットは営業日基準(土日その他の休みを)で「本船入港日の前日」、CFSカットは「本船入港日の前々日」に設定されています。
ETD(出港日)ではなく、ETA(入港日)を基準に設定しているのは、おそらく港に入る前に積み荷の量を確定させたいからでしょう。
輸出通関手続きの観点からしても、ビジネスの面から見ても、ある程度の締め切り(秩序)は必要です。
「え!? 今日、船が港に居るなら、すぐに積んでください」というわけにはいかんのです。
具体例:https://www.kambara-kisen.co.jp/files/liner/cy_cfs.pdf?_=200519102135
また、CY と CFS で+1日の違いが生じるのは、CFSで貨物を混載する作業時間がその理由です。
ちなみに、CFS で混載されたコンテナは CY に一旦搬入されるため、CFS で混載が終わった後、何らかの事故や不具合で CY カットに間に合わなければ結局、予定の本船に積むことはできません。
早めに乙仲業者の倉庫に貨物を搬入できる場合は心配無用です。
乙仲業者は、よほどのことがない限り、うっかり「カット日」を見落としたりしません。
しかし、積みたい船の出航日と貨物の準備完了(Cargo Ready、カーゴレディとも呼ばれます)のタイミングがきわどい時は、貿易実務の担当者は荷主の立場として、時々刻々の管理が必要となります。
なぜなら、貨物(メーカーなら製品、商品など)の準備が間に合うかどうかは、荷主の実務担当者が一番よくわかっているのですから。
メーカーで貿易実務に従事することになれば、製造部門や物流部門とカット日を意識して日々の仕事に取り組むことになります。
ちなみに、航空貨物は「カット日」ではなく「カット時間」が設定されます。
おおむね、飛行機が出発する2時間前、あるいは3時間前と考えてください、とフォワーダーから聞いています。
コストがかかる分、海上輸送とは別次元です。
24時間ルールは前日、前々日が「原則」、例外は北米、欧州、中国向け
先ほど、「原則として」CYカットは本船入港日の前日、と説明しました。
原則があるということは、例外もあります。
24時間ルールが適用されるケースが、その一つです。
北米、欧州、中国向けの輸出貨物を扱うのであれば、注意が必要です。
カット日が2日間繰り上がって、本船入港日の3日前が CY カットとなるからです。(CFSカットは、さらに+1日短くなります)
原因は米国、EU、中国が導入している通称「24時間ルール」。
これはテロ対策の一種で、船荷目録(マニフェスト)を貨物を船に積み込む24時間前までに提出しなければならない、という決まりです。
米国が2002年12月に導入し、徐々に広まってきました。
この船荷目録(マニフェスト)の提出義務は、我々荷主ではなく、船会社にあります。
罰金その他の規定まであるため、船会社はペナルティを課されないよう、リストを時間内に作成、提出します。
その作業に一定の時間が必要なので、「24時間ルール適用地域向けは3日前にCY搬入を」、と全ての顧客に求めているわけです。
現在、船積み書類を先に提出するなどの工夫で、コンテナのCYカットを2日前、あるいは他の向け先同様に前日に変えられないか、政府で議論されている、との報道もあります。
IoT(Internet of Things、モノのインターネット。センサーによる位置情報取得など) を活用していけば、改善の方向に向かうだろうとは思います。
2020年のコロナ禍(ころなか)で、あらゆる貿易に関わる仕事も在宅勤務も間違いなく広まっていきますからね。
荷主に提出を求められるデータの内容も、今後は変わってくるかも知れません。
ユーザー(輸出者、輸入者)と海運会社、税関などの関係官庁、いずれも無理なく対応できる仕組みができ、ひいては日本の競争力強化につながることを願っています。
もちろん、ユーザーの立場で何かできることがあれば、取り組んでいきたいですよね。
貿易実務に携わるからには、そのような将来的なルール変更にも気を付けておきましょう。
ところで、日本にも24時間ルールがあるのをご存じですか?
日本にも24時間ルールあり、輸入の際は取引先に配慮を
輸出の仕事だけに従事していると気づきませんが、実は日本にも24時間ルールが存在します。
米国他と同様、貨物を日本向けの本船に積む24時間前までに船荷目録(マニフェスト)の提出が必要となっています。
ただし、たとえば関西、中四国地区の港で考えると、釜山なら約2日、上海でも1週間程度で到着する距離なので、例外措置が認められています。
具体的には、韓国、中国などの近隣国は「本船に積む」ではなく、「本船出港」24時間前、と条件が少し緩和されています。
輸出の仕事をメインに従事していると、どうしても輸入の感覚をつかみにくいものです。
かくいうぼくも、輸出がメインなので、輸入に関してはどうしても手が遅くなります。
そのため、たまに処理する輸入の仕事で、輸出者(海外の仕入れ先や関連会社など)の作成する書類の体裁や本船情報連絡のタイミングなどに、いろいろとストレスを抱えることになります。
「船便が変わるなら早めに言ってほしかったな」「船積み書類は本社の代表に発送せずに工場に直接送って欲しかったな」「もっと詳しい P/L にして欲しかったな」などなど。
しかし、それもお互い様です。
自分も輸出の仕事で意図せず、同じようなことをしているかも知れません。
電子メール、電話など、日常的なコミュニケーションは必須です。
売主、買主の立場を超えて協力できる関係を築きたいものですね。
まとめ:コンテナ船社からの情報発信にも注意したい
簡単におさらいしておきましょう。
個別の地域の特殊なルールは、24時間ルールに限らず、他にもあります。
また、テロ対策などで一定期間だけ特別対応をすることもあります。
乙仲業者はそういった情報に詳しいので、怪しいと思ったら、すぐに頼ってください。
また、現在はインターネットで各船会社もスケジュールの変更や注意してほしいことを個別に発信しています。
たとえば、アジア地区に多数、配船しているこちらのコンテナ会社(WAN HAI LINES)は港ごとのカット日やCYオープン(CYにコンテナを置ける初日、1週間から10日程度が一般的)を開示してくれています。
検索すればわかること、って今の時代、多いですよね。
公開情報をうまく使って、乙仲業者と協力していけば、保管費用や輸送費用を無理なく削減できるでしょう。
最後に。
あなたが、輸入に関わるようになって日が浅いのなら、この記事だけは読んで帰ってください。
一人でも「本来は避けられたデマレージ」で悩む人を減らしたいんです。