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【悩】船の遅延によるデマレージ(demurrage)とディテンション(detention)とは何か|負担と交渉

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。

職場の同僚から、デマレージとは何ですか、と相談を受けて、以下のジェトロの解説記事を紹介しました。

コンテナのデマレージとディテンション・チャージとの違い:日本 | 貿易・投資相談Q&A - 国・地域別に見る

非常に的を得た詳しい解説ですが、新しくこの仕事を始めた人には難しいんじゃないかな、という箇所もあります。

ということで、少し解説を加えながら、ぼくなりの解説をしていきます。

船の遅延によるデマレージ(demurrage)とディテンション(detention)とは何か

輸入と輸出の世界における非常に重要なトピック、すなわちコンテナの「デマレージ」と「ディテンション」についてあらためて。

しばしば混同されますし、自分もどっちがどっちかわからなくなることもあるのですが、実際には大きな違いがあります。

フリータイム(Free-time):無料の船積み猶予期間

まず、フリータイムから始めましょう。

これは、本船から陸揚げされたコンテナがコンテナヤード(CY、港の公共のコンテナ置き場)に留置される一定の「無料保管期間」、または、CYからコンテナを引き取り、コンテナ保管場(Van Pool)へ返却されるまでの「無料貸出期間」を指します。

この期間は、利用する航路や船会社によって異なります。

例えば、通常のドライコンテナの場合、フリータイムは6日間と設定されていることが多いです。

が、船積前に船会社と協議しておくことで、延ばせる場合があります。

乙仲業者(フォワーダー)を介しているなら、船会社と直接、交渉する必要はありません。

乙仲業者の担当者に、お願いすれば代わりに交渉してもらえます。

その際、何か理由を挙げておく方が実現の可能性も高い。

たとえば、現地の祝日がある、とか、自社の倉庫がメンテナンス中で、とか、そういったレベルでも効果的です。

ポイントは「輸出者」が「船積前」に船会社と交渉する、ということ。

輸入者側が交渉してもたいてい無理ですし、船積後も船会社はなかなか取り合ってくれません。

残念ですが、そもそも特例をお願いしているので仕方がありません。

デマレージ(Demurrage):超過保管料

さて、フリータイムが過ぎた後、コンテナがまだCYに留置されている場合、デマレージ(Demurrage)が課されます。

これは「超過保管料」と呼ばれ、滞留期間に応じて料金が累進的に増加します。

累進的、というのは、倍々ゲームのように増えていく、ということ。

たとえば、ある船会社の場合、フリータイムが過ぎた初日から4日目までには一日当たり3,000円(20フィートコンテナの場合)が課され、5日目から9日目では6,000円、10日目以降は12,000円となります。

土日祝日も料金の計算に含まれます。

また、この金額はフラットラックやオープントップなどの特殊コンテナでは2倍、3倍に跳ね上がります。

流通しているコンテナの数が少ないから、船会社も慎重なんですよね。

ちょっと対応が遅れるだけで数百万円になったとしても、全然おかしくありません。

貨物が日本に届いていたのに気づいていなかったとしたら……。

相当、怖いことになります。

ディテンション(Detention):返却延滞料

一方、ディテンション(Detention)は、「返却延滞料」として知られており、フリータイムを超えた後、コンテナがCYから納入先に運ばれ、その後コンテナ保管場に返却されるまでの期間に課されます。

これもやはり、滞留期間が長くなるほど料金が増加します。

たとえば、ある船会社の一例ですが、フリータイムが過ぎた初日から5日目までには一日当たり800円(20フィートコンテナの場合)が課され、6日目以降は1,600円になります。

こちらも土日祝日が料金計算に含まれます。

こちらは、貨物の到着に気づいていない、というより、何らかの事情でコンテナから荷物をすぐに降ろせないときに起きます。

常識的な範囲で倉庫代わりにするのは構わんけど、あまりに長いと料金をいただきますよ、といった感じです。

だから、デマレージほとには怖くありませんし、ダメージも小さい。

怖いのは「貨物の到着に気づかず、デマレージが発生すること」です。

まとめ:船の遅延によるデマレージ(demurrage)とディテンション(detention)とは何か

ここまでの内容をまとめておきます。

以上の内容からわかるように、コンテナ輸送におけるデマレージは「輸入者」側のリスクであり問題です。

というのも、基本的に輸入者が費用を負担せねばなりませんし、金額の交渉をするのも輸入者だからです。

貨物を引き取る手続きをするのは、輸入者側ですからね。

しかしながら、輸出者もこの知識を持っておかねばなりません。

なぜなら、船積書類の遅れやそもそもの船便の連絡未達などで発生してしまう可能性があるからです。

あまりにひどい落ち度があれば、輸入者側も輸出者に対してクレームを入れる、再発防止に改善を求める、などの対応をするのは当然です。

一般的に、輸出よりも輸入のほうが手間がかかります。

メーカーの貿易実務担当は、どうしても輸出に目が行きがちですが、輸入側への配慮も大切だ、ということをこの記事を書きながらあらためて感じました。

最後に。

デマレージをどう避けるか、という記事を体験談を交えて書いています。

興味のある方は、併せてどうぞ。

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