【貿易】本当に怖い Demurrage(デマレージ) その背景とは?

貿易実務・事務処理

貿易に関わる職場の後輩から「デマレージという貿易用語の意味は何ですか?」と聞かれました。

……フーム、臭いますね。少々、「危険」な香りがします。

 

デマレージとは、コンテナの延滞費用(えんたいひよう)です。

神高
神高

 英語ではdemurrage、延滞料、滞船料(たいせんりょう)も同じ英単語を使います。

 

配属、社内の異動などで、貿易実務を始めることになったとします。

ならば、基本的な書類の書き方や INCOTERMS などと同様、「コンテナ輸送における、最も大切な二つの概念」を早めに憶えましょう。

  • デマレージ( Demurrage )
  • フリータイム( Free Time )

 

今回は「デマレージ回避のための具体策」と「フリータイムの活用法」を解説します。

悪いことはいいません。

特に本邦(日本のこと)に貨物を「輸入」する担当者は要注意です。

 

神高
神高

「うまくやれば避けられたデマレージ」に悩む実務担当者を一人でも減らしたい。この「ビジタブル」を開設した時からの「願い」です。

実務経験の浅い人は、以下の情報をうまく役立ててください。

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デマレージ( 英語では demurrage )とは何か

「デマレージ」とは、「コンテナの延滞費用」です。

この費用は、商品の売買自体を無意味にしてしまうほど、高額になることがあります。

 

多くの船会社はこの罰金を常時、ホームページに掲載しています。

日本の大手コンテナ船主の一つ、ONE( Ocean Network Express )の例を一緒にみてみましょう。

(先にことわっておきます。この金額は一般的なレベルで、どの船会社も似たような条件と料金です)

 

フリータイムを超えると、1日当たりの単価(保管料)は2倍、4倍と跳ね上がることを、おわかりいただけるでしょうか?

最初の数日はまだしも、それを超えると累計で貨物の運賃をゆうに超えてきます。

ONE の例でも、20フィートのドライコンテナのデマレージは1日目から4日目まで1日あたり4000円。5日目から9日目まで8000円。10日目以降は16000円となっています。

また、特殊コンテナは、さらに2倍の金額が設定されていて、11日目以降は、実に1日32000円( 20 ft )/48000円( 40 ft )もの金額になります。

 

しかし、これらは船会社の立場からすれば、致し方ない内容であることは理解しておきましょう。

なぜなら、コンテナを倉庫代わりにされてしまうと、船会社はビジネスが成り立たないからです。

 

船会社としては、コンテナの回転率を上げて、できるだけ多くのお客様に使ってもらいたいと考えています。

ですから、コンテナに貨物が残って動かない状態は、極力さけたいのです。

 

このデマレージを含む一連の費用は、貨物を引き取るタイミングで払わなくてはいけません。

「すぐに自社の倉庫に運んでも場所を取るしな、ちょっとCY( Container Yard )に置いておくか」という甘い判断を許さない金額が、「デマレージ」では設定されています。

 

神高
神高

それでは、いったいなぜ、この「ペナルティ」も同然の「デマレージ」が日々の貿易実務の中で発生してしまうのでしょうか?

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デマレージ費用が発生してしまう理由は、主に2つ

デマレージは、以下のような場合に発生しがちです。

Arrival Notice = B/Lの記載内容に基づいて買主(輸入者)に送付される「納入案内」。今でも FAX が使われますが、今は E-mail で対応してくれる船会社もあります。

もし、B/Lが手元にあれば、あらためて眺めてみましょう。

貨物の「 Consignee(荷受人、にうけにん)」と「 Notify Party(着荷通知先)」の欄があります。

L/Cを使っていると、Consignee欄が「銀行の指図、TO ORDER 〇〇」という記載になります)

 

輸入に携わるのであれば、「 Arrival Notice 」「 Notify Party 」という名前と意味、使い方はしっかり覚えておきましょう。

 

Arrival Notice 」という貨物の到着予定を知らせる通知書は「 Notify Party 」に書かれた宛先(会社名、住所、部署名、担当者名、電話番号、FAX番号、E-mailなど)に届くようになっています。

この「 Notify Party 」欄の記載が間違っている、あるいはそこに適当な情報が書かれていると、書類が届かないか、あるいは、「迷子」になってしまいます。

 

「届かない」「遅い」のはわかるとして、「迷子」とはどういう意味か?

たとえば、工場が通関を手配するにもかかわらず、本社の住所や代表電話番号が「 Notify Party 」に書かれているために、関係のない総務部門や海外営業部門に届いて書類が放置される、といったことはありがちです。

 

これは、「 Notify Party 」を 安易に「 SAME AS CONSIGNEE(受荷主と同じ、同上)」にした場合に起きます。

神高
神高

貿易実務の参考書内でさえ、そう書かれている場合がありますけど……。

せっかく「使える」機能なのに、もったいない。

法人であれば、 CONSIGNEE 欄には「正式な会社名」「本社の住所」「代表電話番号」「代表 FAX 番号」「代表 E-mail アドレス」が書かれます。

「代表 FAX 番号」が書かれていれば、当然、船会社(=日本の船舶代理店)はそこにアライバルノーティスを送ります。

 

ただ、おそらくその番号で書類が届くのは本社の「総務部」や「管理部」と呼ばれる部署です。

FAX が届いたその部署が気づいてくれれば、まだ被害は最小限で終わります。

しかし、貿易に関わっていない部署は、その書類の重要性がわからない、かも知れません。

単なる「到着通知」(直訳すれば、その通りです)と考えて、数日、放置されてしまう可能性もあります。

 

神高
神高

この事態を避けるために、「 Notify Party 」の欄をうまく活用しましょう、というのが、ぼくからの「提言」です。

 

再び ONE( Ocean Network Express )のサイトから紹介します。

 

事前登録すれば、E-mail でのアライバルノーティス送付に対応してくれます。

たとえば、繰り返し行う輸入の仕事であれば、前もって乙仲業者を連絡先に追加することもできます。

 

少なくとも、e-mail を「 Notify Party 」に記載することは、本日発行分の B/L からでもできます。

メールアドレスを貿易実務を行うチームの共通アドレスにしておけば、かなり「見落とし」を減らせるでしょう。

つまり、デマレージ発生のリスクを減らせる、というわけです。

 

神高
神高

それでは、次にフリータイムの説明に移りましょう。

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フリータイム( 英語では Free Time )とは何か

あらためて、コンテナは船会社からの借り物であって、荷物を輸出港から輸入港に運ぶために一時的に借用している、という認識を持ちましょう。

ですから、運送の仕事を終えたら、コンテナは船会社等に速やか(すみやか)に返却しなければなりません。

「速やかさ」には船会社やコンテナの種類ごとに違いがあり、「引き取りまでに放置することを許される日数」がフリータイムです。

神高
神高

和製英語のように聞こえますが、海外でも通用する立派な専門用語です。

英文では Free time と書きます。

 

特殊コンテナでない20フィート、40フィートのドライコンテナであれば、通常、1週間程度のフリータイムが設定されます。

ただし、船会社によって、またコンテナの種類によってフリータイムはまちまちなので、貿易実務に慣れるまでは、その都度、やりとりする船舶代理店、乙仲業者に確認し、フリータイムがいつまであるかを把握しておいた方が安全です。

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フリータイムの期間は「あらかじめ」延ばすことができます。

フリータイムの期間は交渉であらかじめ延ばすことができます。

交渉相手は、日本国内にある「船会社」あるいは「船舶代理店」です。

 

あなたが「輸出」をする立場であれば、あらかじめ、乙仲業者から事情を話して「船を予約(ブッキング)する時」に交渉してもらいます。

逆に「輸入」をする立場であれば、先方(輸出する側、仕入先など)に船積前に「フリータイムの延長」をお願いしておくと話がスムーズに進みます。

 

いずれも「あらかじめ」というところが、非常に大切です。

フリータイムが切れそうな時にお願いしても、船会社は真剣に取り合ってくれないからです。

ベストのタイミングは、「船をブッキング(予約)する時」です。

 

ビジネス上の交渉は「妥当な(それらしい)理由」を伝えると、相手も真剣に考えてくれます。

たとえば、次回、船をブッキングする時に、妥当かつリアリティのある理由を事前に伝え、交渉してみましょう。

「日本が長期で休みに入るので、休み明け+αのフリータイムが欲しい」
「自社の倉庫の大規模改修で数日の猶予が欲しい」

 

一度、比較的、時間的な余裕があるときに経験しておくと、いざという時に役立ちます。

特殊コンテナ(特殊バン)はそもそも流通量が少ないので難しいケースもありますが、一般のドライコンテナであればフリータイムの事前延長を聞き入れてもらえる可能性は十分にあります。

 

神高
神高

最後に、デマレージ、フリータイムに限った話ではない、貿易実務の心構えについてお話しします。

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貿易実務は、ルーチンの決まりきった仕事ではない

「貿易実務」という言葉からは何となくルーチンの事務処理のような響きがあります。

しかし、実際は日々、いろいろな問題、課題が表に出てくるものです。

デマレージだって、その一つ。

あるいは、そこまで深刻でないにしても、変化に富んでいます。

貿易実務に従事すると、貿易実務に関わる自社のチームや出荷業務を担当する製造、物流と呼ばれる部署の面々、乙仲業者(フォワーダー、通関業者、名称はまちまち。たいてい、倉庫業、運送業など、色々兼ねている)、保険会社や船舶代理店と一緒に課題に取り組むことになります。

デマレージは主に輸入の際に問題ですが、逆に輸出の場合もいろいろな予定外のことが起こります。

たとえば、ある商品を輸出したいのに、予定した船に積めない、というケースをいくつか考えてみます。

  • 積もうと予定していた船の予約が諸事情で遅れ、船のスペースが無くなり積めない
  • 最短の船に積もうと思い調べてみると、梱包業者さんの資材の準備が間に合わない
  • 予定していた船が台風で遅れて抜港(ばっこう、予定の港に寄らないこと)した

 

こういう時、どうするのが正解かは、ケースバイケースで決まりはありません。

客先の了解を得て、全体的に予定を遅らせるのが正解の時もあれば、別の港に陸送(りくそう、トラックなど陸路での輸送)してでも船積みを完遂する方が良い場合もあります。

あるいは、飛行機で送ることを考えなければならないケースも出てくるでしょう。

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自分が「輸出者」でも「輸入者」の立場で想像してみよう

自分が「輸出者」のときは、どうしても気がまわりにくい「デマレージ」と「フリータイム」。

しかし、最初に説明したとおり、日本(輸出者)側が不正確な情報を「 Notify Party 」に書いたばかりに、輸入港でデマレージが発生する危険は常にあります。

 

結果、客先からクレームとともにデマレージ費用の負担・分担の要求が入ってくるかも知れません。

あくまでぼくの経験からくる想像なのですが、大企業の物流部門の方でも、輸出と輸入を同じように経験されている方は少ないのではないでしょうか。

 

輸出の仕事がメインになると、原則はわかっていても、どうしても輸入の時に起きそうな問題や危険への予知能力が鈍ってしまうものです。

  1. 「 Notify Party 」の個々の情報を正確に記載する
  2. 客先や仕入先と一緒にB/L DRAFT(下書き)の内容を確認する

 

いずれも貿易実務のイロハのイです。

しかし、慣れた頃に落とし穴にハマらないとも限りません。

ぼく自身、この記事を書きながら、気持ちを引き締めているところです。

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まとめ:デマレージ費用の負担者は誰なのか?

もういちど、整理しておきます。

 

なお、一番最初の「職場の後輩」の件ですが、実際に「デマレージ」が発生したわけではなく、電子メールのやり取りの中で輸入者側(欧州のとある国)から「デマレージを避けたいので、フリータイムをあらかじめ最大に延ばしておいてください」との要請が入ったために質問してきたことがわかりました。

神高
神高

イヤな予感が外れて良かった……。

 

貿易実務では「多数の案件が平行して」進んでいるので、シンプルかつ誰でも運用が可能な「うっかり」の起きにくい仕組みが必要です。

もちろん、ぼくも含めてそれが難しいのですが……。

最後に。

今回の記事に関連して「デマレージの負担者は誰なのか ?」という記事も書いています。

興味のある方は、あわせてどうぞ。

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