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収入印紙を貼るか貼らないか~海外企業と売買契約、請負契約

握手・合意 貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。

貿易実務、あるいは海外営業の仕事に関わると、売買契約や請負契約(型式、型番がない製品の受注生産など)その他、販売代理店契約などを取り扱うことがあることでしょう。

海外との取引に、口約束は通常ありえず、契約書が欠かせないからです。

ですから、基本的に、一つ一つに「書きもの」が存在します。

契約を終えて一件落着、といきたいところですが、悩ましい問題も同時に起こってきます。

収入印紙をどうするか、です。

収入印紙を貼るか貼らないか~海外企業と売買契約、請負契約

裏書き署名、サイン

海外企業と売買契約、請負契約において、収入印紙を貼るか貼らないか、は重要だが取り上げにくい問題です。

いわゆる「見解の相違」が生じるような内容は軽々に取り扱いできないからです。

しかし、国税庁からの見解、判断が明確になっている事項もあります。

まずは、そこから整理していきましょう。

海外で作成された場合、いかなる書類も印紙は不要|ケース①

国税庁は「質疑応答事例」の中で、海外で作成される書類については、いかなる書類も印紙税は課されない、との見解を示しています。

たとえば、

  • 請負契約(第2号文書)
  • 手形(第3号文書)
  • 株券(第4号文書)
  • 自動更新を前提とした代理店契約(第7号文書)

なども含めた、海外で作成された書類の印紙税は無税となります。

ここで「作成」という言葉が一般的な書類を「作る」「印刷する」という意味ではないので問題となります。

しかし、それについても、同じサイト内で明確に説明してくれています。

株式、手形等、交付することを目的として作成される書類は、それが「交付」された時が「作成」された時。

その「作成」すなわち「交付」が行われた場所が海外であれば無税、国内であれば課税、とされています。

一方、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、「その意思の合致を証明する時」が「作成」された時です。

2者間の契約であれば2者目が署名押印(サイン)をして当事者全員がサインを終えた時を「作成」として扱います。

それが海外で行われていれば、日本の印紙税は無税、国内で行われていれば課税、とされるわけです。

したがい、課税文書(請負契約など)の双方の署名を調印式のような形で海外で行えば、「日本の」印紙税は無税となります。

しかし、韓国のように現地の印紙税制度がある国もあるため、そういうケースはどちらがどれだけ印紙税を負担するか、当事者間で決める必要があります。

また、契約形態によっては、郵便やクーリエ( courier )で課税文書(税金のかかる文書)をやりとりするケースもあることでしょう。

それらも、同様です。

先に日本側でサインしたものを送って、後から先方がサインをすれば、日本の印紙税は無税となります。

売買契約の場合、例外はあるものの、買主(お金を払う側)が、「 Contract 」「 Sales Contract 」「 L/I( Letter of Intent = 覚書 ) 」などの下書き( Draft )を作成し、内容を協議し、合意できるとなれば、買主側がサインした状態で売主に送ってきます。

(注:どのような契約であっても、書類を作成した側が何かと有利なので、売主より強い立場の買主側が作るのが一般的です。英文契約書の参考書、手引書の類でも、たいてい、買主が作成するよう推奨しています)

となると、後にサインするのは、売主である日本側です。

そして、サインをすれば、印紙税が発生します。

この順序を変えることができれば、印紙税は免れるわけです。

ただし……。

いずれにしても、相手があることですからね。

印紙税をケチるための交渉がうまくいかず、取引先との関係が悪化しては本末転倒です。

客先、取引先としっかりコミュニケーションし、対応されることをおすすめします。

なお、特に郵送、クーリエでサインしたケースは、後日、税務調査などでサインした時期と場所が不明確になる可能性があります。

だから、どちらが何年何月何日、どこで誰がサインをしたのか、はっきりわかるように署名の近くに記載しておくと、より確実です。

電子的に署名押印(サイン)された場合も印紙は不要|ケース②

何故、電子的に作成された書類(PDFなど)に印紙税が不要なのか。

今回、しっかりした説明をしようと国税庁のサイトなどを下調べしたものの、結局、よくわかりませんでした。

署名した請負契約書を電子メールで海外の顧客に送付して原本を日本で保管した場合に、印紙が要るのか要らないのか。

先ほどの契約書の「作成」した時、の原則に従えば、署名した時点で必要なのではないか? との疑問が残ります。

ただ、印刷しなければ印紙の貼り付けようがない。

それは、確かです。

取引先の国で、PDF上でサインされた契約書類が法的に通用するのであれば、双方合意のもと、PDF上でサインや押印を追加し、そのまま電子メールで返送すれば、これは間違いなく印紙税は発生しません。

最初の項目で検討した、外国で作成した契約書かどうかをどう証明するか(たとえば署名者のパスポートの出入国履歴など)で悩むより、電子データならタイムスタンプなども残るので、より確実です。

こうして作成したPDFを印刷したもの、これもまた国税庁の見解で「単なる写し(コピー)は課税対象とならない」と示されています。

仮にコピーが課税文書になるのであれば、海外営業や貿易実務は煩雑すぎて仕事にならないでしょう。

たとえば、銀行と L/C (信用状)の中身を協議するために、関係者に契約書のコピーを渡すたびに印紙税が発生することになります。

さすがにそれは、現実的ではありません。

印刷物での保管が必要であれば、完成版のPDFを作成した日付、場所、取引先に送信したメールなどと一緒に記載してファイルに綴じておきましょう。

そこまでできておれば、見解の相違が生じる余地はないでしょう。

ただし、もしそのコピーに契約の当事者同士が直筆でサインをすれば、これは課税文書となります。

双方が署名押印するなど一定の条件、形式が整っておれば、第2号文書、すなわち印紙税の対象となるからです。

「単なるコピー」でも、あるいは「スーパーのチラシの裏に手書きで殴り書きした合意メモ」でさえも、形式次第で課税文書となり得るのです。

ADOBE ACROBAT READER があれば、サイン、押印は無料で追加可能|無料の電子署名

電子化を選択

ADOBE 社は、PDF閲覧ソフトとして ADOBE ACROBAT READER DC を無償で配布しています。

(注:ADOBE が PDF を開発した会社、総元締め。PDF 普及のため、無償閲覧ソフトを配布してきました)

ぼくのように1990年代、2000年代から ACROBAT を使っている世代は、「 PDFの編集には、有料版の ACROBAT が要るんでしょ? READER だけでは編集や署名の追加はできないから 」と考えがちです。

実際、ぼくも、最近までそう思っていました。

しかし、最新版の ACROBAT READER DC は「スタンプ」という機能で署名や印鑑(社印など)をPDFファイルに追加し、保存することもできます。

手元に ACROBAT READER DC があれば、「ツール」→「スタンプ」と選択して試してみてください。

このスタンプには、自分で作成したデータをインポート(挿入して使える状態にすること)できます。

アルファチャンネルという補助データを持つ PNG ファイル形式で自社の印鑑、サインなどが用意できるなら、あらかじめ PDF に書かれた署名欄の上に PNG 形式のサイン(署名)を追加し、さらにPNG 形式の社印(角印など)をも追加できます。

それぞれ透過(下の画像データが見える状態)になるので、まるで机の上で実際にサイン ~ 押印したような PDF ファイルをパソコン上で作成することができます。

アルファチャンネルを含む画像データを扱うなら、Photoshop が便利でしょう。

あるいは、有志が作成した GIMP(ギンプ)というフリーソフトもあり、こちらも商用利用できます。

GIMP 自体の改造、再配布にはソースコードを公開すること、という条件( GPL というフリーソフトを作成する方々の団体のルール )が適用されます。

ただ、作ったデータを使うこと自体には、何の制限もなく、誰もが無償で使用できます。

むしろ、自社で作成したデータ(画像)は、著作権法、不正競争防止法で作成者に帰属するので保護されます。

もちろん、今の時代、無償ソフトでも会社のパソコンに勝手にインストールできないでしょうから、使用前に個人のパソコンで試してから、会社のシステム管理者に相談してみることをおすすめします。

電子署名には社内ルールと取引先の理解が大切|まとめ

今回のおさらいをしておきましょう。

電子署名は便利なツールではあるものの、悪用されないよう、決裁者や実務者のルールを社内で明確にしておくことが非常に重要です。

また、一般的には、お客様、取引先の了承があってこそ、成立します。

何事も、顧客第一( Customer First )であるべきで、手前勝手ではいけません。

社内でサインや押印が悪用されては、印紙代を節約した意味がないし、印紙ごときで客先とモメるようでは本末転倒です。

印紙税をケチってお客様、取引先との関係が悪化するのも、情けない話ですからね。

取引する相手側の国の法律や商習慣をお互いに尊重できれば、契約そのものもうまく運ぶことでしょう。

そんなの、所詮はきれいごとに過ぎないんじゃないですか? 理想論ですよ

なるほど。わからなくはない。わからなくはないけれど……。

理想論とわかっていながら、やはり、そこを目指すべきだと、ぼくは思います。

どんなビジネスも、契約してから、いろいろとあります。

契約する前に、あらゆる「可能性」を排除するのは、実務上は簡単ではないですからね。

その前の協議、コミュニケーションが重要だ、とあらためてぼく自身、言い聞かせています。

 

神高
神高

この記事を読んでいただいた、あなた様の新規契約が、意義あるものになることを祈っています。

貿易実務・事務処理
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管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

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