こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に就いて20年超の神高(かんだか)です。
貿易事務の仕事に関連してコンテナ船について調べていたところ、「コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった マルク・レビンソン(著)」という本に行き着きました。
あまりに厚いので電子書籍で購入しましたが、会社の同僚や仕事仲間とまわし読みしたりするなら、本として購入するのもアリでしょう。
マルコム・マクリーンというアメリカの実業家(元々、トラックの運転手さんだったそうですが)がコンテナとコンテナ船輸送を実現させ、世界の物流を変えるまでの物語です。
ストーリーは、1956年のニュージャージー州ニューアーク港から58個のアルミ製の「箱」が送り出されるところから始まります。
なかなかに衝撃的というか、面白い作品になってましてね。
物流に関わる人だけでなく、2ちゃんねる開設者の「ひろゆき」さんや岡田斗司夫(おかだとしお)さんが採りあげているだけでなく、あのビル・ゲイツさんも本の帯を書かれているという(笑)。
この本の感想は最後に少し触れることにして、先に「コンテナ船の大型化」について、少し触れていきましょう。
コンテナ船のニュースやその背景にある事実をまとめてみました。
世界最大のコンテナ船は何か?|日本と韓国で建造される巨大なコンテナ船のルーツとは?
2017年3月28日、MOL(商船三井)が世界最大のコンテナ船についてプレスリリースをしました。
Yahoo! や Google で「コンテナ船 最大」と検索すると、おそらくこの「 MOL TRIUMPH(MOLトライアンフ号) 」に関するニュースが優先的に表示されるはずです。
ただ、このニュース(プレスリリース、会社発表)は2017年ですから、その後に建造された船については別に調べなければなりません。
しかし……。
海外には親切なボランティアがいらっしゃるんですね。 Wikipedia に必要としていたデータがありました。
このサイトの「 Maximum TEU 」の横にある「▼」を押してみてください。
Wikipedia が把握している最大の船を表示してくれます。
2020年1月3日(調査時点)、世界最大の船は 23,756 TEU の「 MSC GULSUN 」となっています。
- TEU は「 Twenty-foot Equivalent Unit 」は20フィートコンテナに換算した積める量を表します。
この情報は、 MSC のプレスリリースとも合致しています。
2019年8月19日付で「世界最大( the world largest container ship)」と報道していますよね。
世界最大のコンテナ船は、韓国のサムスン重工業で建造されている
この世界最大と思われる「 MSC GULSUN 」を建造したのは韓国のサムスン重工業。
英語名、Samsung Heavy Industries。
そうです、GALAXY スマホのサムスン(三星)財閥の会社です。
ちなみに、MSC は Mediterranean Shipping Company(メディタレニアン・シッピング・カンパニー)、スイスのジュネーブを拠点とする世界第二位のコンテナ船運航会社です。
なお、世界第一位のコンテナ船運航会社は、デンマークの MAERSK (マースク)です。
MSC は日本にもたくさん寄港しています。黄色いコンテナでおなじみですよね。
一方、日本で建造された最大のコンテナ船については、こちらの記事をどうぞ。
世界最大のコンテナ船は、残念ながらあまり多くは日本に寄港できない
先ほどのMSC のコンテナはこんな外観をしています。これを 23,756 個積める船が 23,756 TEU です。
ただ、巨大な船は大きいだけに港の水深(すいしん、ドラフトとも言います)が必要とされます。
底が浅い港だと、ちょっとした変化で船が海底にぶつかってしまうかも知れませんからね。
しかも、その深さがしっかり船の長さの分だけ用意されなければなりません。
「だいたい水深18mだけど、途中で10mの場所もある」なんて場所は、そのままでは港として使えません。
船が入って、留まって、出るまで、しっかり水深を確保しなくてはなりません。
こちらの記事にも書きました通り、日本の港は中国その他の港湾に負けていて、船の大型化とともに取り扱いシェアを奪われてきました。
詳しくはこちら:フィーダーコンテナとは?|北米、欧州航路を使うなら知っておきたい
もちろん、日本政府もそれはわかっていて、これから港湾の整備が進められていきます。
横浜は元々、神戸と並んで水深に恵まれた「天然の良港」ですから、優先的に拡張工事が行われます。
中国の造船所、港湾設備も大型コンテナ船に対応している
船が巨大になれば、荷役作業(にやく、にえき)の時間も問題になります。
コンテナ船は「降ろす」作業と「乗せる」作業を短時間に平行して行わなければなりませんからね。
その点、中国の港は後発だからか割り切っていて、最初からロボット化、自動化を進めています。
とある Youtube のニュースメディアが中国の3大港湾について紹介しています。
いずれも人影がほぼありません。
特にコンテナを CY ( Container Yard、コンテナを保管する場所)から船側(せんそく、船の横)まで運ぶ車両は完全にロボット化されていて、まるでおもちゃのレゴやプラレールのようです。
「人間の仕事がなくなる」なんて議論もあるのでしょうが、港自体も競争ですから、自動化しなければ結局、荷物は集まらなくなってしまうでしょう。
横浜港の拡張には IoT(モノのインターネット)や各種書類の電子化も含まれているそうですから、その成功のモデルケースが日本全国に広がることを期待しましょう。
【衝撃】コンテナ物語(THE BOX)の中身がすごい!|大型化するコンテナ船~まとめ
ここまでの内容をまとめておきましょう。
1956年のアメリカから始まった物流の新技術がアジアやヨーロッパに広がり、結果としてコンテナを輸送する船会社(コンテナ船主)の大手はヨーロッパとアジアに集約されようとしています。
黎明期に活躍したプレーヤーや国が入れ替わっていくのは、まるで我々が目にしてきた IT 業界の栄枯盛衰を見るようです。
今のところは買収を重ねた欧州の上位3社(マースク、MSC、CMA CGM)が強いですが、それに続くのは中国の COSCO(コスコ)、こちらも OOCL や CHINA SHIPPING を吸収することで勢いを増してきました。
さらに中国の船会社は船に投資するだけでなく、コンテナターミナルの整備や拡充、IoT を使った自動化にも多額の投資を続けていますから、中国の海運会社が台頭してくるのは時間の問題でしょう。
2017年、中国コスコ・グループは、ギリシアのピレウス港湾公社の過半数の株式を取得したあと、順調にコンテナ取扱量を増やし、さらには欧州からの投資さえ呼び込むようになっています。
「コンテナ物語」に出てきた世界の変革を現代の我々は目撃できないものの、それとはケタ違いの時代の変化を目の当たりにするかも知れません。
その意味では、日系のコンテナ船社 ONE ( Ocean Network Express ) の発展を応援したいですね。