新ブログ:TOEIC-630.NET とは?

インコタームズとは何なのか?|意味と使い方を現役の貿易実務者がお答えします

コンテナ船とタグボート 貿易実務・事務処理

インコタームズ( INCOTERMS )の意味と使い方を知りたいですか?

インコタームズは、国を越えた物流(モノを運ぶこと)の取り決め、約束を表す方法の一つです。

いろいろ細かいルールはあるものの、おおむね以下の内容をどちらがどこまで担当するかを定めています。

  • 運賃(うんちん、運ぶ費用)の負担
  • 保険をかけるかどうか
  • リスク負担(危険負担)

英語で INCOTERMS と書かれるのは、ルールを定める国際商業会議所( ICC: International Chamber of Commerce )の名前に由来しています。

さて、インコタームズで一番有名なのは 「 CIF 」と「 FOB 」です。この二つは、必ず覚えなければなりません。

ただ、これから貿易実務に関わるあなたには「 CIF 」と 「 CIP 」、「 FOB 」と 「 FCA 」の4つまでをまずは憶えて欲しい。

神高
神高

理由は CIP と FCA がは「コンテナや航空機での輸送では CIF や FOB に替えて使いましょう」と ICC が主張しているインコタームズだからです。

【貿易】INCOTERMS 2020(インコタームズ 2020)一覧【最新版】

2020年1月1日よりインコタームズ2020年版( INCOTERMS 2020 )が発効されました。

DAT が廃止されて、新設された DPU に統合されているのが大きな変更点です。

詳しい内容は別記事にまとめています。

インコタームズ( INCOTERMS )とは売主と買主の取り決めを表す略語です

インコタームズの一覧表を自由にダウンロードできるように、マイクロソフトのクラウドサービスに置いていますから自由にダウンロードして使ってください。

まずは、この表の中から以下の4つを憶えてください。

CIP と CIF は「商品を売る側(売主:うりぬし)」が運送途中の保険と目的地(荷揚地:にあげち)までの輸送量(運賃:うんちん)を負担する条件です。

イメージとしては、「運賃元払い+保険も付ける」条件ですね。

一方、FOB と FCA は「商品を買う側(買主:かいぬし)」が「商品を売る側(売主)」が指定する場所以降の運賃、保険(必要であれば)を負担する条件です。

イメージとしては、「運賃着払い+保険は買う人の選択次第」という条件です。

ただ、日常生活でも「運賃着払い」を受取人や運送者(佐川やクロネコヤマトなど)の了解なしに使えないですよね?

「うち、着払いできないんですよ」という運送業者は、たくさんあります。

FCA や FOB を使うには買主側の了解と輸送をする船会社(あるいは航空貨物の運送業者など)が必要です。

神高
神高

航空貨物の場合、何百万円もかけて運んだのに受取人が「運賃を払わない」とゴネると困るので、FCA で対応してくれないケースもあるんですよ。

だから、始めて売買契約を結んだときは CIP や CIF で契約するのが「普通」です。

「FOB、楽そうじゃん」と思うかも知れませんが、実はそんなことはありません。

FOB を使うには、買主(ものを輸入する会社や個人)に FOB に対応できるだけの信用力とノウハウが必要なのです。

買主側に輸送した経験や実績がないのに FCA や FOB で注文をもらうと、船会社や航空貨物の運送会社が対応しない、と表明してきて売主側が貨物を出荷できない、など大きな問題となる可能性があります。

次に、インコタームズの定期的な改訂(みなおし)についてお話します。

インコタームズ( INCOTERMS )は10年ごとに改訂されています

DHLの貨物専用機

貿易実務に関わっている人でもあまり気にしていないケースがあります。

インコタームズ( INCOTERMS )はおおむね10年ごとに改訂されています。

2020年版が最新ではあるものの、2010年版、2000年版もまだまだ広く使われています。

インコタームズ 2010の意味と使い方|2010年版

INCOTERMS 2010(インコタームズ 2010)の一覧と解説をこちらの記事でしています。

2000年版から2010年版に代わる時、DDU という条件が消されたものの、DDU は Delivery Duty Unpaid という言葉が DDP とのセットで憶えやすかったからでしょう、10年が過ぎた今でも広く使われています。

古いインコタームズを使っていても問題ありません

2020年以降に、たとえば「インコタームズ2010」を使って問題ないか、ですが、これは全然問題ありません。

実際に、古いインコタームズを使っている例をたくさん知っていますし、こまごまとした国際的な取引の場合、何年のバージョンを使うかを明示していないことさえあります。

いつの改訂版を使うのか、はっきりさせたいとき、見積書や契約書の中では、たとえば以下のような書き方をします。

FOB KOBE, JAPAN: JAPANESE YEN 10,000,000.- (INCOTERMS 2010)

お互いにこの内容で合意しておれば、極端な話、2000年版、あるいはそれ以前のルールでも問題はありません。

本当に詰めておかねばならない細かい取り決めは契約書の個々の記載内容で決まるので、金額を表示するところはこのくらいでも構わないのです。

INCOTERMS は法律のようなものではなく、「契約に関するお互いの合意」をつくっている基準だ、程度で認識しておいてください。

ルールを定めた ICC(国際商業会議所)が何かを保証してくれるわけではないので、その程度の感覚の方が安全です。

貿易実務・事務処理
応援、ありがとうございます!
フォローいただけると励みになります!
管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

フォローいただけると励みになります!
無料版の Slack で情報交換しませんか?
タイトルとURLをコピーしました