こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
先日、貿易事務の仕事をしている外部の方から電子メールで「信用状 ( Letter of Credit )で要求される書類って、多すぎませんか?」との質問をいただきました。
……詳しい商品などは知らずとも、なんとなく想像はつきます。
船荷証券( B/L、3枚一組)や為替手形( B/E、2枚一組)の連想から、インボイスやパッキングリストも2枚、3枚、あるいはそれ以上、銀行提出書類として要求しているんじゃないかな、と。
ただ、これは「なぜ、為替手形が2枚セットになっているのか」の理由がわかれば、業務を合理化できる可能性があります。
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L/C による決済を先に経験すると、逆にわかりにくいかも知れませんね。
為替手形が2枚あるのはなぜ?|L/C(信用状)で書類が多すぎるケース
為替手形( B/E, Bill of Exchange )が2枚セットである理由、それは「組手形(くみてがた)」だからです。
組手形とは、書類の紛失や遅れに対応するために、発送時期や経路を別々に郵便などで送るしくみです。
この時、二通の為替手形は同じ内容で作成され、同じ効力を持っています。
そして、2通ある B/E のうち、一枚が先に使われると、もう一枚は無効になります。
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為替手形の2通目には、「1枚目が使われたら無効」と但し書きがあります。
最近はプリンターで2通続けて印刷できるようになっていますけれど、若いころはタイプライターにカーボン紙を挟んで2通の B/E ( Bill of Exchange、為替手形)を作っていました。
銀行に詳細を問いただして確認したことはないものの、この仕組みはずっと変わりませんから、日本側の銀行は為替手形を2回に分けて海外に発送しているのでしょうね。
つまり、Bill of Exchange が2通あるのには理由があります。
船荷証券( B/L )が3枚セットなのはなぜ?|昔からの商習慣で……
同じく、船荷証券( B/L )も3枚セットで発行されます。
信用状( L/C )を使った決済では、ベネサート方式の場合を除き、3枚とも銀行に提出しますよね?
でも、昔々(今でも、ありますけれど)、L/C を使わずに代金決済をするときは、途中の紛失や盗難に備えるために原則として B/L(船荷証券)は1枚ずつ、郵送していたのです。
紛失が起きにくく、様々な方法で代金決済や貨物の所有者の確認ができる現在、電子 B/L ( e-B/L )にチャレンジしている企業もあるにはあるようです。
少なくともぼくは、経験したことがないですけどね。
船荷証券も3通セットで発行されるのが世界共通の商習慣ですから、これは従うしかありません。
でも、その他の書類は「特に理由がなければ」1通で構いませんし、場合によっては L/C で要求される書類から除外すれば良いのです。
信用状( L/C )で要求される書類の数や種類を決めているのは輸入側の担当者
きわめて当然のことを、あえて言います。
L/C (信用状)で銀行に提出する書類を決めているのは「輸入する企業や団体の担当者」です。
発行銀行ではありません。
そして、そのもとになっているのは、多くの場合、「売買契約書(ばいばいけいやくしょ)」なんですよね。
だから、「売買契約書」の中身をシンプルにすれば、銀行に提出する書類もシンプルになります。
当然ながら、書類が多ければそれだけ記載ミスをする確率が増えますし、結局、最後はディスクレ( discrepancy )につながりかねません。
ディスクレ回避のために何度もアメンド(改訂)するのは……|まとめ
今回の内容を簡単にまとめておきましょう。
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ディスクレ回避のためにアメンドが続けば、それこそ「ああ面倒」なことに……。
実は、これが言いたかっただけなんです、今回。
……冗談です。
いわゆる「海外営業」や「海外調達」の担当者は、貿易事務( L/C ベースでたくさんの書類を扱う仕事)についてあまり詳しくないケースもあります。
ですから、特に理由なく船積書類を何通も要求されるなら、営業部門や資材・調達部門と相談しながら「売買契約書」を一度、簡略化できないか「業務の棚卸(たなおろし)」をしましょう。
特に、「買主(かいぬし)」側が必要枚数の理由を把握しておらず、なんとなく「余裕をもって」書類を要求しているだけなら、業務を合理化できる可能性があります。
電子化できる検査証、証明書、各種の保証レターの類を「過去の習慣」でわざわざ印刷物にして、必要枚数を用意し、さらに表書き(レター)を作ってサインも付けて、なんて手間をかけても無駄ですからね。
提出書類の種類自体を減らしてもらえるなら、さらなる改善につながるかも知れません。
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とはいえ、個人と同じで、(商)習慣を変えるのは、なかなか難しいんですけどね。
次のあなたの仕事が、首尾よく終えられますように。
本日は最後までお読みくださり、ありがとうございました。




