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【貿易】Certificate of origin と特定原産地証明書の違いとは

貿易実務・事務処理

こんにちは。

とある製造業で貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。

メーカーや商社で貿易実務に関与していると、取引先から「原産地証明 ( certificate of origin )」を送って欲しい、と頼まれる場面があります。

ぼくの場合、通常の取引先が中国、韓国などだからか、一部の L/C 決済を除いて、あまり使わない原産地証明。

久々に地元の商工会議所にわざわざ出向いて取得し、取引先に送付すると客先から「コレジャナイ」との回答を受けとりました。

いやいや、「 certificate of origin 」が欲しい、とメールには書いていたではないか、と思いつつ、返信します。

Please send us a copy of the document you need for our reference… などとやり取りが続き、ようやく相手の意図が判明しました。

もしかして、あなたも同じ経験をされているかも知れません。

コレジャナイ、が起きる時、たいていの取引先は「特定原産地証明」を求めています。

あなたが貴重な時間を無駄にしないように、今回は「特定原産地証明」についてみておきましょう。

FTA (自由貿易協定)や EPA(経済連携協定)に用いる Form X

特定原産地証明書は、FTA (自由貿易協定)や EPA (経済連携協定)を結んだ特定の国との貿易に用いられる certificate of origin (原産地証明)です。

基本的には二国間で個別に締結されます。

従い、個別の合意に基づいてルールは異なるので、それぞれ必要に応じて調べなければなりません。

日本との貿易取引でいうと、古いところでは、インド、インドネシア、オーストラリア、シンガポール、スイス、タイ、チリ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ペルー、マレーシア、メキシコ、モンゴルが対象となっています。

ふだん、ぼくのように米国や中国、韓国など貿易額上位の国への輸出を主な業務としている場合、この仕組みには触れることは少なく、不慣れになりがちではないかと想像します。

(もちろん、同じ製造業でも、業界によります)

もし、今回の取引先がこのリストの中にあるなら、関税その他を負けてもらうために「特定原産地証明書」を求めているのではないか、と気を利かせてあげましょう。

それぞれの国との取り決めに従い、書類の様式には Form JTEPA(タイ用)、Form D(アセアン用) などの名前が付けられています。

「特定原産地証明書」発行は日本商工会議所がオンラインで対応

最初のエピソードで紹介した、通常の「原産地証明」は各地域の商工会議所で行えます。

しかし、この「特定原産地証明」は日本商工会議所が一手に引き受けていて、専用の公式ウェブサイトも用意されています。

地方の商工会議所では対応できない。

しかも、オンラインシステムが必須です。

FAXしかない事業者(今どき、珍しいとは思いますが)は、インターネットに接続できる環境を用意する必要があります。

登録完了までかなり時間がかかることには注意しておいてください。

ウェブサイトによると、判断までに2営業日必要、とのことなので、未登録の事業者であれば、HSコードの確認云々とあるものの、まずは「企業登録」を急いだほうが良いでしょう。

なお、通常の「原産地証明」同様、原則は船積までに申請することとなっているものの、船積後も一定期間、さかのぼって申請することも可能とのこと。

ただ、取引先のことを考えると、当然ながら、輸入国に到着してしまう前に書類を渡したいところでしょう。

輸入地のフリータイムは限られるので、毎日、督促の連絡が入ることになります。

チリやペルーならある程度、時間を稼げるとしても、アセアン諸国の場合は2営業日でも遅れるとキツいかも。

中国とアセアン諸国の自由貿易協定 ACFTA などもある

日本で作った製品や商品を特定の国に輸出する、あるいはその逆、というケース以外にも、中国で作った製品をアセアン諸国に輸出する、あるいはその逆の場合に適用できる FTA ( ACFTA )という仕組みもあります。

この場合は、Form E という様式が用いられます。

例えば、自社の部品工場がある中国から、タイで組み立てを行う顧客に輸出を行う場合には適用できる可能性があります。

ただ、この種の FTA や EPA は日本とのそれよりも情報収集が難しく、日本語のドキュメントが用意されているとも限りません。

大きなメリットを受けられる可能性がある一方で、適用条件も相当複雑になってきています。

たとえば、現地調達率のカウント方法など、自動車産業や家電その他の大企業間の取引では、社内にこれらの専門部隊を用意しなければならないほど複雑化しています。

中小企業や小規模の専門商社であれば、とてもそこまで対応できないし、おしなべて取引額が小さいため、金銭的なメリットも限られます。

取引先に他取引の事例を送ってもらうなり、現実的な対応を利害関係者と相談する方が話は早いでしょう。

まとめ:【貿易】Certificate of origin と特定原産地証明書の違いとは

日々のお仕事、おつかれさまです。

「特定原産地証明」取得がオンライン化されているのはありがたいことです。

しかし、初回登録から審査結果の通知までで2営業日というのは、このコンテナ輸送が発達した今、いかにも厳しいですね。

たとえば、国税庁が発行する法人番号を活用するなどして、登録の迅速化が進むことを望みたいものです。

また、紙ベースの通常の原産地証明も、もっと簡易的な発行方法も選べるようになって欲しいなと。

提出するインボイス(仕入書)へのサインが「事前」に登録されたものであること、なんて要件がありますけれど……。

最後に。

もし、あなたが貿易実務に関わって日が浅いなら、この記事だけは読んで帰ってください。

悪いことはいいません。

貿易に関わるなら、早く知っておいた方が良いと思うので。

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管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

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