こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
職場の若い同僚から、「英文の見積書どうやって作成しているんですか?」との質問を受けました
たしかに、全く同じお客さまから全く同じ商品の引き合い(見積の依頼)を受けたのなら、前回と同じもの使えば問題ないでしょう。
おそらく、金額や納期を変えれば良いだけのことです。
しかし、
- 新しいお客さま(取引先)
- 新しい商品(製品、サービスなど)
- 新しい支払い条件
など、新規に英語で見積書を作成しなければならない場面はあります。
とはいえ、英文(外国語)ですからね。
長年、仕事を続けながら、少しずつ英語を勉強してきましたが、それでもなお何のリファレンス(参考の文書や本など)を見ずに契約書の英文を書けるほどのレベルには達していません
そこで英文契約書を作成するときの手順、順番についてぼくなりのアイデアをお伝えします。
メーカーや商社で、特に一定の範囲の商品や製品サービスを扱っている人であれば、参考になる内容だと思います。
英文見積書の作り方とは?|サンプルを探すことから始めたい

条件の同じ、あるいは似た英文見積書がないか、過去の履歴から調べる|その1
条件の同じ、あるいは似た英文見積書がないか、過去の履歴から調べる、というのが、まずは最初の選択肢になります。
というのも、英語版に限らず、仕事で書類を作成する時の王道、それは先輩方の似たような案件から文章を持ってくることだからです。
何十年とあまりに古いものだと使えないでしょうが、数年前のものであれば先達が辞書や文献、参考書をにらみながら作成されたものですから十分、役に立つ部分があるはずです。
しかも、貿易だって商取引ですから、その業界で常識的なこと、あるいは暗黙の了解といった条件があれば、見積書にも反映されています。
- この種の商品は、工場渡し( EXW )が当たり前
- この型式の製品は、特定の検査(受検、FAT)を受けるのが当たり前
- この地域は、支払条件に前金をお願いするのが当たり前
このような細かいことは、その業界でしばらく働かないとわからないことです。
そして、先輩たちが作ってくれた見積書には、過去の交渉を経て決められた条件が反映されていることでしょう。
ゼロから文例集を引用したような形式ではないはずです。
英語表現が正しい、不自然、なんてことより、その種のバックグラウンドがしっかりしてる過去の見積書(同じ、あるいは似た種類の案件)を探してみることをすすめします。
職場、あるいは出先の同僚に似た関係の見積書を作成していないか、たずねる|その2
二つ目の方法は、職場、あるいは出先(でさき、支店や海外拠点)の同僚に類似の案件で問い合わせが来てないか、たずねることです
極端な話、全く同じ案件について、すでに見積書を提示している可能性すらあります。
ぼくが勤める職場もそうですが、いくら小さな企業といえども、隣の人がやってる作業全部を把握はできません。
ましてや、出先の営業所あるいは海外の支店、工場などが同じ引き合いに対応してる可能性もあります。
今の時代、問い合わせを受けていそうな人にメール一つ送れば確認できる時代なのですから、お客様からの引き合いに引用して、「このような問い合わせを受けていませんか?」と関係者にメッセージで問うてみましょう。
実際、これでぼくは何度が救われ、厚かましく同僚が作った見積書をそのまま使わせてもらいました。
もし仮に、同じ会社から同じ案件に対して違う条件(特に金額)が異なる見積書が出たら、大変です。
高くても、安くても、かなり面倒なことになります。
調達・資材部門にお願いし、海外の似たようなメーカーの見積書を見せてもらう|その3
調達・資材部門にお願いし、海外の似たようなメーカーの見積書を見せてもらう。
これが3つ目のアイデアです。
どんな業界でも海外サプライヤー(メーカー、供給者)がいます。
- 自動車部品
- 機械部品
- 化学薬品
- 衣類 などなど、キリがない
どんな業界でも、基本的には海外メーカーは当たり前ですが英文で見積書を提示してくれます。
韓国のメーカーだからといって、ハングル(韓国語)で書かれた見積書を送ってはきませんし、中国のメーカーでも同様に中国語で QUOTATION を送ってきたりはしません。
キチンと英文の見積書を送ってくれます。
だから、社内の調達や資材(購買とも呼ばれる買い物をする部門)に、同じ業界で近い製品を扱っているメーカーの書類を見せてもらうのです。
大企業、あるいは業界で知名度のあるメーカーや商社であればなお良し、かなり参考になるでしょう。
当たり前ですが、個々の業界で使われている個別の契約書に関しては、インターネットで探しても当然、検索に出てきませんからね。
もちろん、欧州(一般的に、ドイツは英文の見積書がうまい)やアメリカ、イギリスの企業と取引があるなら、参考になるでしょう。
ここからは、あくまで個人的な経験で恐縮ですが……。
20数年前、中国企業と取引するとき、送られてくる英文契約書の素案(ドラフト、 draft )は他の国や地域と比べると未熟なものでした。
そのままでは使えないので、売主である自分側から提案することも何度か経験しました。
しかし、今はまったく違います。
おそらく、他の業界でも同じでしょう。
キチンと専門家の意見を取り入れた、バランスの良い立派なドラフトが送られてきます。
とはいえ、準拠法や仲裁は買主に有利な内容ではありますけどね。
英文見積書の作り方とは?|サンプルを探すことから始めたい|まとめ

ここまでの内容まとめます。
英文見積書といっても、結局は「契約するとき、どこまでなら受け入れられるか」の表明です。
ですから、「英文契約書の書き方」といったシンプルな本を一冊読んでみれば、英文見書の作り方、考え方も見えてくるでしょう。
売買契約書のフォーマットは、商品が違ってもかなり似通っているはずなので、各項目とも応用が利きます。
インコタームズ( INCOTERMS )、支払条件、保証など基本的なことから、フォースマジュール(不可抗力)、仲裁など一般契約条項に含まれることもある条件まで、見積書と契約書で取り扱いがまったく違う、ということはありません。
とはいえ、ですよ。
極端な話、TOEIC で800点、900点、取るような人であっても、英文契約書における shall と may の使い分けさえ、意識して学ばなければ身に付きません。
今のお気に入り教材は、本郷貴裕(ほんごうたかひろ)先生の解説書「はじめてでも読みこなせる英文契約書」です。
仕事中にテキスト(参考書)をじっくり読めるほど優雅な立場の方は限られているでしょうから(笑)、土日に時間を取って、あるいは有給休暇を取ってでも、英文契約書に関する本を一冊、通読されるされることをおすすめします。
先生とは、 Facebook で少しやり取りしたこともありましてね。
何というか、とても興味深い方です。
東芝出身、プラントやインフラ設備輸出での経験を活かした英文契約書の専門家でありながら、歴史上の偉人のエピソードとか、そういったことを本当は本で書きたかった、とおっしゃっていました。
たしかに、メインの解説も素晴らしいですが、途中にあるコラムも読みごたえがあります。
オンラインで構わないので、一度、お話ししていたいものです。




