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【貿易】Break Bulk Cargo と保税蔵置場の活用の関係とは?

貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。

貿易で使う「ブレイクバルクカーゴ( Break Bulk Cargo )」という用語をご存じでしょうか?

通常であれば全くコンテナに載らない大きいサイズ、あるいは重量物を「ブレイクバルクカーゴ」と呼びます。

在来船の代替案となるかも知れないこの輸送方式、一緒に整理しておきましょう。

【貿易】break bulk cargo(ブレイクバルクカーゴ) と保税蔵置場の活用の関係とは?

通常、コンテナ船は約2mx2mx6m( 40フィートは約12m )のサイズの制限の中で輸送方法を考えています。

その制限よりも背の高い貨物であれば、

  • ハイキューブ(通常よりも背の高いコンテナ)
  • オープントップコンテナ(天井の無いコンテナ)

など「特殊コンテナ」の適用を検討するでしょう。

更に、幅x長手方向(長い方向)まで制限を超える貨物には、「フラットラックコンテナ(天井も壁もないコンテナ)」を検討するかも知れません。

神高
神高

幅を超える貨物、という意味でフラットラックの輸送を「オーバーワイド」と呼ぶこともあります

これらはあくまでも「コンテナサイズをどの程度、超えているか」を基準に考えています。

たとえば、8mx8mx4m、50t などという貨物は、重量、サイズともコンテナで扱えるサイズを大きく超えるので、通常は在来船(貨物船)を検討せざるを得ません。

しかし、コンテナ船の中には、コンテナに全く入らないサイズのブレイクバルクカーゴ( Break Bulk Cargo )を受け入れしてくれるところもあります。

「ブレイクバルク」は、フラットラックコンテナ(壁のない床だけのコンテナでサイズは20フィート、40フィートと同じ)をあらかじめ船内に数枚敷いておき、その上に重量貨物を置く、という輸送形態になっています。

20フィート、40フィートコンテナのスペース(上層部含めて)をその重量貨物に充てることを意味するので、通常のコンテナ数個分の運賃が必要になるのが通例です。

船会社の立場になって考えると、そりゃそうですよね。

また、航路によっては、検討できない場合もあります。

たとえば、神戸港から高雄港(台湾)に直接向かう船であれば、神戸積~高雄揚予定のブレイクバルクカーゴも、比較的、取り扱いしやすいでしょう。

途中に寄る港がないので扱いやすい。

逆に神戸港を出て、釜山や上海、基隆(キールン、台湾の北の港)に寄港する船であれば、ブレイクバルクを受けてくれるケースはまれでしょう。

そんな重量貨物を積んでいては、途中の港のコンテナ荷役ができないからです。

コンテナ船の内側(船倉<せんそう>と呼びます)には、コンテナを固定する「セルガイド」という鉄の枠が縦横に張られていて、これらの位置関係や強度などを考慮して、重量貨物をどこに積むのかが検討されます。

荷主(貨物を輸出する者)が考える必要はないものの、安全に輸送するために、乙仲業者、船舶代理店、荷役業者(ステベ)と十分な打合せを行ってください。

ブレークバルクは、本船クレーン(在来船は、船にクレーンが設置されていることもある)の有無を除き、在来船での輸送と変わりません。

ただし、以下のような点にはご注意してください。

  • クレーン荷役(にやく)の制限(ガントリークレーンで荷役する場合)
  • コンテナバースでの停泊時間の短さ
  • コンテナ船特有の滞在時間の短さ

むしろ、在来船よりもコンテナ船の方が定期運航にこだわるため、分単位の準備と荷役が必要となるケースもあります。

ブレイクバルクの貨物でコンテナの荷役が遅れるようでは、船会社もダメージが大きいですからね。

社内に保税蔵置場を取得することで得られるメリット|ブレイクバルクカーゴなら特に

ブレイクバルクカーゴは、特に大きい、あるいは重いものですから保管場所を選びます。

コンテナに前もって入れておけない貨物ですから、船に直接載せます。

となると、どこからどのようなタイミングで積み込むか、どこで通関を切るかを乙仲業者と調整しておかねば不安で仕方がありません。

しかも、クレーンの可動範囲の制限など、置ける場所(範囲)が限られるのが普通ですからね。

そんな時、自社内に自由に使える保税蔵置場(ほぜいぞうちじょう)があれば便利です。

保税蔵置場の許可を社内で取得する仕事をしたことがありますが、経験した限り、それほど難しい申請ではありません。

まず、倉庫内、工場内のレイアウトから、区分けしやすい場所を候補に選びます。

倉庫全体、工場全体を蔵置場として申請することも可能です。

ただ、面積によって税関に支払う月額の許可手数料が異なる上に、広すぎれば外国貨物、内国貨物の管理も煩雑になりますから、適当なサイズ(エリア)を選びましょう。

社内に保税蔵置場が設置できれば、運賃や荷役費用のコストダウンにつながる可能もあります。

なお、諸事情で蔵置上に貨物を置けない場合の救済措置があるので、ついでに見ておきましょう。

「他所蔵置(たしょぞうち)」という貿易用語をご存じでしょうか?

「他所蔵置(たしょぞうち)」という用語は、貿易実務に日々従事していても、ドライコンテナでの輸出が主であれば、なかなか接することがありません。

他所蔵置とは、「保税蔵置場ではない」場所に通関を切る予定の貨物を置くことを指します。

重量貨物や非常に量の多い貨物をときどき扱う方にはメリットがあります。

思い当たることがあるメーカー、商社にお勤めの方は、一度検討されてはいかがでしょうか。

この特殊ルールは、メインの「関税法」ではなく、実運用の目安を定めている「関税法基本通達」の中に記述があります。

用語を分解すると、「他所」というのは「本来、保税地域と定められた地域ではない場所」を指しています。

また「蔵置」は「保税地に貨物を置くこと」です。

つまり「他所蔵置」とは「保税地ではない場所」に特別に「貨物を置くこと」の許可を得て、輸出申告、輸入申告を行うことを指しています。

「税関長が保税地域以外の場所に置くことが真にやむを得ないと認めた貨物」との記載が基本通達にあることから、主旨はあきらかでしょう。

他所蔵置が認められるケースは6種類|ブレイクバルク必須の重量物なら対象になるかも

基本通達では、「税関長の許可を受けて保税地域以外の場所に置くことができる外国貨物」について、以下の説明があります。

  1. 巨大重量物であつて、保税地域にこれを置く設備がないもの
  2. 大量貨物であつて、保税地域に置くことが困難なもの
  3. 保税地域との交通が著しく不便な地域において陸揚げ(取卸し)し、又
    は積み込まれる貨物
  4. 腐敗変質し、又は他の貨物を汚損するおそれがある貨物
  5. 貴重品、危険物又は生鮮食料品のような蔵置保管に特殊な施設又は管理
    を要する貨物であつて、それらの蔵置保管に適した保税地域がないもの
  6. その他貨物の性格、保税地域の設置状況等から、税関長が保税地域以外
    の場所に置くことが真にやむを得ないと認めた貨物

1と2は、CY(コンテナヤード)などの指定蔵置場(バース、船が停泊する場所に隣接するエリア)の能力(収容できるサイズや重量)によって認められるケースがあります。

港湾設備が損傷したり、他の貨物の荷役に支障が出たりするようではいけないからです。

3、4、5は、貨物特有の事情が考慮されています。

価値が著しく下がるようなケースにまで蔵置を求めるのは酷、と判断するケースが想定されているのでしょう。

6は、一応、但し書きとして用意してあるものの、基本的には許可をしない、と読めます。

いずれの場合も、もし「他所蔵置許可」を繰り返し、何度も申請するのであれば、それは事業として必要な措置なので、社内、あるいは管理しやすいパートナー企業などと保税蔵置場を設置するべきでしょう。

保税蔵置場の取得は乙仲業者にもメリットあり

ここまでの内容をまとめます。

多少の勉強や準備は必要ながら、保税蔵置場の申請はそれほど難しい事務手続きではありません。

また、取得に際し、乙仲業者に相談するのもアリでしょう。

というのも、他所蔵置の許可申請を繰り返すのは、乙仲業者にとっても相当な負担だからです。

なお、社内に「保税蔵置場」を持つために、特に「通関士」やその他有資格者を置く必要はありません。

もちろん、通関士資格を持つ、あるいは勉強したことがある人は「蔵置」や「保税運送」などの用語や法律の知識があるので、社内に持った「保税蔵置場」の管理には向いています。

とはいえ、保税蔵置場を設置する条件とはされていません。

資格には関係なく、貨物の搬入、搬出をきちんと管理できる仕組みと体制があればよい、とされています。

メーカーや商社であれば、日常的に行っていることの延長であり、対応可能でしょう。

保税蔵置場の許可申請の流れは、こちらの解説を見つけました。

さすが JETRO のサイト、きれいにまとめてくれています。

ちなみに、保税蔵置場の許可申請は法人の名義で行えるので、貿易実務をしていく中で「社内にあった方が便利だな」あるいは「コストが下がるかも」と思えるのであれば、上司に相談してみましょう。

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