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【貿易】UN缶による塗料、防錆剤の輸出、ルールと現実的な解決案

カタール航空 貿易実務・事務処理

こんにちは。

とあるメーカーに所属し、貿易実務に20年以上関わっている神高(かんだか)です。

メーカーで輸出の仕事に従事していると、塗料や防錆剤、潤滑油などを空輸したい時がありませんか?

しかし、ペイント類や化学薬品を専門に扱っているわけではない場合、「危険物」に分類される貨物の通関は戸惑うことが多いですよね。

ましてや、エアー(空輸)となると……。

ぼく自身、空輸の扱いが多いとは言えないものの、これまでの個人的な経験が誰かの役に立つかも知れないので、一緒に整理しておきましょう。

 

神高
神高

共同海損 ( general average )」とも関わってきますよね。

UN缶による塗料、防錆剤の輸出|本当に危険物の「輸出」が必要ですか?

製造業であれば、機械類、設備類に用いている塗料や防錆剤、潤滑油などを海外に輸出したいケースがあるでしょう。

ただ、その貨物が引火性の液体などの「危険物」に分類される場合、工場や倉庫にある資材をそのまま輸出できません。

日本国内で普通に売買されている防錆剤や潤滑油が「危険物」に該当するケースがあるので、特に「補修」「修理」などの急ぎの用件ならとまどってしまいます。

しかし、そんな時に急ぎの仕事だからと慌てて「空輸」しようとしてはいけません。

「空輸」、ましてや旅客機でのハンドキャリーは最もハードルが高く、結局、できない可能性が高いのです。

緊急対応の場合、まず最初に検討すべきは「現地調達」です。

問題が発生した時点で、塗料や防錆剤の仕入先、あるいはメーカーにすぐに連絡してみましょう。

運が良ければ、現地生産、あるいは現地で倉庫に保管されている可能性があります。

あるいは、現地調達できる他の代替製品、成分の近い商品などを紹介してくれるかも知れません。

社内のエンジニアと相談し、たとえば代替品でも使えるとなれば、当座の問題、混乱は収まります。

海上輸送(貨物船、コンテナ船)で輸出するときは、UN缶を用います

現在、「危険物」の国際輸送は、国際連合( United Nations, UN )が定めた「危険物輸送に関する勧告」(通称オレンジブック)に定められたルールに従っています。

 

神高
神高

もちろん、個々の国や地域のの法律、条例などもありますけどね。

 

ただ、化学薬品や塗料を専門に扱うのでなければ、詳しいルールまで事前に把握できるものではありません。

一般的な機械や雑貨などの貿易実務に従事しているなら、ひとまず、貨物がこれらのいずれかに該当するかどうかを気にかけておきましょう。

火薬類/高圧ガス/引火性液体類/可燃性物質類/酸化性物質類/毒物類 /放射性物質類/腐食性物質/その他の有害性物質

先ほどの塗料や防錆剤のケースであれば、おそらく「引火性液体類」が該当します。

では、これらをどうやって運ぶのか。

じつは、仮に輸出貨物が「危険物」であっても、PG(危険等級、容器等級)が PGII (レベル2、中程度の危険性)、 PGIII(レベル3、低い危険性)に該当するならば、一般的なコンテナ船などで運べる可能性があります。

PGII 、 PGIII に対応する容器は「 UN缶 (ユーエヌカン)」と呼ばれ、いまや「楽天」でも買えます。

なお、この容器の認証自体は、日本では一般社団法人日本舶用品検定協会(通称 HK )という組織が行っています。

旅客機では、原則「危険物」は運べないと考えるのが無難です

夜の成田空港

あなたが搭乗する飛行機に「引火性液体類」「可燃性物質類」が載せられていたら、心配で仕方ないでしょう。

スプレー缶やライターの詰め替え用のオイルなどを「機内持ち込み」できないことからもわかる通り、旅客機への危険物の積載は、原則、禁止されています。

では、貨物機はどうなっているのか。

ぼくはある時、「貨物専用機なら運べるけど、旅客機では運べない」という種類の貨物を運ぼうと航空フォワーダーと協議したものの、結局、船便に切り替えたことがあります。

「旅客がいない貨物機( DHL や FEDEX、各社航空会社が運航するものなど)ならば運べる」と分類される品物でも、そもそも現代の「国際航空貨物」の多くは旅客機での混載を前提に輸送ネットワークが築かれています。

したがい、「旅客機には載せられない」となると、ルートも便数も大幅に限られてしまい、「空輸」なのに「コンテナ船」の方が早く着く、ということは普通に起こり得ます。

 

神高
神高

特にアジア界隈だとそう感じますね。コンテナ船の方が早いケースがあります。

 

UN缶を作るメーカーのウェブサイトに「世界の船舶・航空・陸上の全ての輸送で通用します」などと記載があっても、安心してはいけません。

実際には乙仲(フォワーダー)や航空会社などと検討してみないことには、運べるかどうかわからない、と認識しておくべきです。

まとめ:空輸は時間がある時に検討しておくと安心、かも知れません

ここまでの内容をおさらいしておきましょう。

「危険物」の輸送は貿易実務の中でも専門的な分野で、分類なども相当、専門的な知識を必要とします。

したがい、輸出するなら、適宜、塗料メーカーや乙仲と相談しながら準備を進めましょう。

さもないと、土壇場で輸出を止められてしまう可能性もあります。

工場内で広く使われている溶剤、資材であれば、普段、時間がある時に、輸出できるかどうか、乙仲、メーカーと調査しておくと良いでしょう。

少なくとも、化学物質等安全データシート(Material Safety Data Sheet: MSDS)は製造業者から取り寄せておきたいところです。

そういった準備をしておけば、いざという時に、慌てなくて済む、かも知れません。

 

神高
神高

空輸が必要な事件は、突然起きるもの。

しかも、あまりハッピーなケースも多いでしょうからね。

なお、危険物ではない通常の貨物の空輸については、こちらを参照ください。

貿易実務・事務処理
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管理人の自己紹介
この記事を書いた人
Tohma Kandaka

神高 十真(かんだか とおま)
1974年生まれ
地方企業(メーカー)の海外営業職
貿易実務、英語などを一緒に学ぶビジタブル|busitable の中の人
通関士試験合格(3科目)、英検1級、TOEIC 900点-(計測中)、日商簿記2級、知財技能士2級など

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