こんにちは。
とあるメーカーで貿易実務に関わって20年超の神高(かんだか)です。
「輸入通関の流れ」を調べていますか?
ぼくは海外営業を仕事にしているので、輸出はなじみがありますが、輸入には慣れていない。
「輸入通関」と「輸出通関」では感覚が違うんですよね。
そこで、自分の備忘メモもかねて「輸入通関の流れ」やその関連知識をまとめてみることにしました。
新入社員、新しく貿易関係に異動してきた人にはお役に立てるのではないでしょうか。
骨組みの部分はジェトロその他の情報をもとにしているので、その点は安心してください。
輸入通関の流れを簡単に解説|輸入に慣れていない貿易実務者の備忘メモ

輸入通関の流れは、輸入者(受荷主・うけにぬし)側からみると以下のようになります。
- 他の法令で許認可が必要な場合は前もって取得
- アライバルノーティスにより、貨物の到着予定を確認
- 船舶、コンテナ船や航空機などから貨物を荷卸し
- 保税地域へ貨物を搬入(CY、CFS、自社の保税地域など)
- 輸入申告・納税申告により税関による審査・検査を実施
- 関税、輸入消費税などの納付(振込)
- 輸入許可を受領
- 保税地域からの貨物引き取り(車両の手配など)
- 貨物の引き取り、受け入れ(自社の倉庫などに搬入)
まず、1番のアライバルノーティス( Arrival Notice )、ご存じですか。
メーカーや商社で輸出の仕事だけをしていると、目にしない書類なんですけどね。
アライバルノーティスとは、B/L に似た貨物の到着予定を通知するための1枚モノの書類です。
おそらく、「貨物が港(海上輸送)や空港(航空輸送)に到着すると、船会社・航空会社の代理店である乙仲業者、通関業者(フォワーダー)などから貨物の到着の案内(アライバルノーティス、Arrival Notice)が輸入者側に送られてきます」
と貿易関連のテキストや参考書には書いてあります。
しかし、実際の Arrival Notice は貨物到着の数日前に届く、はずです。
「はず」というのは、このアライバルノーティス、届かずに途中で迷子になることがあるから。
というのも、いまだにアライバルノーティスにはメールや FAX が広く使われていて、特に地方都市では FAX が幅を利かせているからです。
デマレージを避けるためにも、輸出者側から B/L(船荷証券, Bill of Lading)その他の書類を受けとったら、すぐに貨物の到着時期を前もって確認しましょう。
自戒を込めて・・・(笑)。
輸入通関の手続きは通関業者(フォワーダー)との共同作業
輸入する者(輸入者)は輸出者からの通知(電子メール、あるいは原紙が必要なら DHL、FEDEX など)又は信用状(L/Cなど)を使った銀行経由で船積み書類を手に入れます。
輸出者から手に入れた書類は、フォワーダー、通関業者に渡して、船会社、航空会社の代理店に取り次いで渡してもらいます。
その際、貨物の引き取りや通関手続きは、フォワーダーや通関業者が表に立って行なってくれます。
輸入者(荷主)側は出てくるアウトプットだけを見るので実感が薄いものの、実は船会社や船舶代理店とのコミュニケーションを経ていることには感謝しましょう。
続いて、海上貨物の FCL、LCL についてです。
海上貨物の多くはコンテナ船で届く|FCL と LCL の違い

今の時代、多くの海上貨物はコンテナ( Container )船によって運ばれています。
コンテナの貨物の引き取りは次の二つの方法があります。
FLC、LCL ともよく使う略語なので、貿易に仕事で関わるなら覚えておきましょう。
FCL = Full Container Load (フル・コンテナ・ロード)
一つのコンテナの貨物全部(中身すべて)が自社の輸入品の場合、 FCL(エフシーエル)貨物と呼ばれます。
結果、コンテナ船から港のコンテナターミナルに陸揚げされた FCL のコンテナは、直接、コンテナの置き場所、コンテナヤード CY(シーワイ、Container Yard) に運ばれて、そのままの状態で輸入通関~許可を受けることになるのです。
CY はコンテナが並べらたり、時に積み上げられたりする場所ですから、そんなところでフォークリフトを使って中身を出すことは(普通は)しません。
LCL = Less Than Container Load(レス・ザン・コンテナ・ロード)
一つのコンテナの一部が自社の輸入品の場合、LCL(エルシーエル)貨物と呼ばれます。
いわゆる「相積、合積(あいづみ)」ですね。貨物のシェアスペース、間借りです。
LCL = Less than Container Load ということでコンテナ船から港のコンテナターミナルに陸揚げされたあと、コンテナの中身をバラバラにする(お客さんごとに仕分けする)作業が必要ですよね。
したがい、LCL のコンテナは同じターミナル(港、埠頭)の中、あるいはターミナル近くにある CFS(コンテナフレートステーション、Container Freight Station)に運ばれます。
その後、一つ一つの貨物はコンテナから取り出され、受け荷主、輸入者ごとに仕分けされて輸入通関を切る(注:業界用語で通関は「切る」といいます)ことになります。
ちなみに、航空貨物の場合・・・。
航空貨物の輸入通関手続きは LCL に近い
航空貨物( Air Freight )の輸入通関手続きは LCL に近いものがあります。
よりスピーディーですけどね。
航空貨物がたとえば関西空港に到着したら、原則、航空会社上屋(うわや)に運ばれて、ULD(= Unit Load Device )という航空機用の箱から出されます。
その後、航空貨物混載業者により、通関手続きが行われるわけです。
もちろん、海上輸送とも似たところがあり、たとえば、関西空港から保税運送申告を行って、外国貨物のまま日本国内の別の場所に運ぶこともあります。
その際、トラックやトレーラーによる陸送が多いとは思いますが、必要であれば、飛行機を使った横持ち(地域間の輸送)なんてこともあり得ます。
最終的には、税関の承認を受けて別の空港や倉庫まで保税運送されてから通関手続きとなるわけです。
輸入通関の手続きは輸出の手順よりも複雑|提出書類のサンプル
一般的に、輸入通関の手続きは輸出の手順よりも複雑で大変なものです。
納税申告もありますしね。
具体的には、貨物を保税地域に搬入した後、依頼を受けた通関業者、フォワーダーが輸入申告の手続きを行います。
輸入申告の時に合わせて納税申告をするのが、輸出申告との大きな違いです。
必要な船積書類を例示しておきます。
- 輸入(納税)申告書 = Import Declaration、I/D
- 仕入書(インボイス、I/V、Invoice)
- 梱包明細(パッキングリスト、P/L、Packing List)
- 原産地証明書(Certificate of Origin)
- 運賃明細書
- 保険料明細書
注)輸入者が乙仲(通関業者)に提出したあと、通関業者はオンラインで税関に申告します。
輸入申告は CIF ベースの金額を使うことになっています。
輸出者、輸入者が作るインボイスの金額は FOB でも EXW でも構わないんですけれど、通関業者が税関に提出する申告書に書く金額が「 CIF ベース」という意味において。
つまり、関税額や輸入消費税を計算する基準として明細書が必要となるわけです。
具体的には、たとえば FOB あるいは CFR(C&F)など CIF 以外のインコタームズを使う場合には、その証拠書類として運賃や保険の明細を求めることがある、ということですね。
なお、2012年の改正(関税法)によって、仕入書(インボイス)の提出義務は緩和されて、税関長から求められた場合のみ提出すれば良いこととなっています。
ただ、実務的には、インボイスは出すべきでしょう。
出せるインボイスを出さない、なんて、変に勘ぐられるでしょう?(笑)
輸入通関の流れは輸出の流れよりも複雑|カタログや図面が求められることも
輸入通関の流れは輸出の流れよりも複雑で、他法令の許可のほか、カタログや図面が求められることもあります。
具体的には、必要に応じた輸入貿易管理令など他の法令による許可書、証明書、それから注文書、英文契約書、値段表(プライスリスト、タリフ)、貨物の使い方や用途を説明できる製品カタログなどですね。
周辺情報は、貨物が実際にどのような使われ方をするのか、あるいは輸入してはならない貨物に該当しないのか、といった税関のチェックにも使われます。
実務上は、税関からの質問に通関業者(乙仲)やフォワーダーが仲介しながら答えてくれる形になります。
図面やカタログはそれなりに専門的なので、用途やスペック(仕様)をうまく説明するのに苦労することもあります。
そんなときは、実際に撮影した写真などを使うこともあります。
納税と輸入許可~貨物の国内への引き取り

輸入貨物の場合、納税と輸入許可が揃って初めて貨物の引き取りができます。
税関に提出された輸入申告書と関係書類による一連の書類審査によって、関税額や輸入消費税額などが確定します。
もちろん、素性がわからない貨物、あるいはランダムのサンプリングで「当たった」貨物は、必要に応じた現品検査が行われることもあります。
輸出と違い、関税などの納付が完了すると輸入許可書( Import Permit )が出てくるわけで、そこで初めて輸入者は輸入貨物保税地域から引き取ることができるわけです。
実務的な話を一つ、しておきましょうか。
輸入者は貨物を引き取り次第、できるだけ早く貨物の数量や状態を点検し、異常が見つかった場合は通関業者やフォワーダー、保険会社、船会社、航空会社、そして誰よりもまず「輸出者」に連絡しましょう。
というのも、今後の対応を輸出者(あるいはメーカー、生産者など)と一緒に検討することになります。
一般的な売買契約書(英文)では、貨物の引取りから何日以内、何週間以内に輸出者に連絡をすることになっているでしょうからね。
なお、通関手続に関する書類に不備がある場合は書類が揃うまで倉庫や上屋などに保管されることになります。
しかし、保管料やデマレージは輸入者の負担となるので注意が必要です。(あとから輸出者に請求できるとしても、まずは輸入者が費用を納めないと話が前に進みません)
特に、特殊コンテナ(オープントップ、フラットラック、リーファーなど)の場合はデマレージ費用が一日数万円~なんて大変大きな金額になることもあります。
輸出者や乙仲、フォワーダーの協力なしではできませんから普段から十分なコミュニケーション取っておくことをお勧めします。
予備審査、という制度もあります|あまり忙しくない間に一度、試しておきたい
輸入通関の手続きでは「予備審査」という制度もあります。
いざという時に使える特急券みたいなものなので、できればあまり忙しくない(でも、それなりに急ぐ)ときに一度、試しておきたいですね。
ぶっつけ本番で使う前に、一度試しておけば安心ですから。
輸入通関から引き取りで予備審査制を使うと、貨物が日本に到着する「前に」予備申告などを税関に提出し、あらかじめ税関の審査検査などの通知を受けることができます。
結果、通関にかかる日にち(時間)を短縮することができます。
扱う商品、製品によりますが、たとえば生鮮食品や季節ものの流行商品、引き取ってからすぐに据え付けて使いたい機械類などは向いていますよね。
なお、予備審査を利用した航空貨物はさらにスピーディーに、検査が不要な貨物について保税地域に搬入することなく本申告の許可が出る制度もあるようです。(ゴメンナサイ、個人的には使ったことないです)
到着即時輸入許可は、通関業者・フォワーダーと税関をつなぐ NACCS (ナックス、税関専用のオンラインシステム)を使用して提出できるようになるなど、業務の簡素化や勤務時間外の実施など、改善が図られています。
輸入通関の流れを簡単に解説|輸入に慣れていない貿易実務者の備忘メモ|まとめ

ここまでの内容をまとめておきましょう。
輸出と輸入の仕事は、かなり感覚が違います。
ぼく自身、貿易の仕事をやってました、といえる程度には経験を積んできたつもりです。
とはいえ、ある種の機械類の輸出を経験しているだけ。
同じような貨物であっても輸入の仕事がメインの業務を任されたら、相当な気持ちの切り替えと業務改善をしないと仕事が回らないでしょう。
消費税の税率も上がっていますからね。
1000万円の輸入貨物で支払う消費税は100万円にもなります。
輸入時の税金は立替払い、口座振替など、いろいろ手段はありますが、どう払うのが現実的なのか。
ぼくのような都度対応ではなく、日常的に輸入の仕事に関わるなら、「JASTPRO(ジャストプロ)コード(有料)」、「税関発給コード(無料)」あたりの事情まで知らないと、実務上は大変かな。
お仕事、おつかれさまです。



